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2023年の幕開けに

老人ホームでの楽しいエピソードを綴っています。

2023年の幕開けはホームでの夜勤だった。
うちの施設は制服が無いので、大晦日から元旦に掛けての勤務ということでいつもよりちょっと明るめな服を着て仕事をすることにした。
殆どの入居者様は寝ているか、物が言えないか、目が見えないか、職員の服?そんなの関係ね〜の方々ばかりだが、中には居るんですよ、
「あら、今日はいい服着てるのね」
って、褒めてくださる方が。

0時を過ぎてのパット交換で目を覚まされた方には必ず
「明けましておめでとうございます〜」
と、小さな声で笑顔で挨拶をした。

ヨシ子さんは壁の方を向いて布団にくるまって寝ていた。
「ヨシ子さん、新年ですよ。正月ですよ。明けましておめでとうございます」
と小声で囁きながら、布団を退けて、身体を私の方へと向けた。
すると私を見るなり
「お姉さん、その赤い服、いいわね〜」
と言って、ヨシ子さんは手を伸ばし、私は腕を掴まれた。
「ヨシ子さんありがとうございます。ヨシ子さんだけですよ。そう言ってくれるのは。今日はお正月ですから、頑張っておしゃれな服にしたんですよ」
私は本当に嬉しかった。
分かってくれる人が一人でもいたらそれで良しだ。

しかし、喜んだのも束の間だった。
常夜灯に照らされて、指先の色がおかしいのがはっきり見えた。
えっ、えっ、嘘でしょ!
その手は、その手に付いているものは何かな?
よくよく見ると失禁されていて、そこら中が便まみれだった。
いつもなら居室に入った途端に匂いで察知出来たはずなのに、今日はうかつにも正月にほだされて油断してしまった。
しかも、しかもですよ、その手で正月用の服を掴まれたのだ。

ヨシ子さんの全更衣、シーツの張替え、ベットの消毒を終わらせて、最後に自分の服を着替えた。
こんな事は介護あるあるで、全く特别なことではない。

#清潔のマイルール

介護職なので、当たり前に清潔にはとても敏感な方だと思う。
現実は清潔じゃないから、清潔に気を使っている。
でも私の思う清潔って「清い」ってこと。

生きているから排泄だってするし、気持ち悪いから触りたくもなる。
でもね私の服褒めてくれたのヨシ子さんだけだったのよ。
ヨシ子さんのお陰で新年を明るく迎えることが出来たのよ。

「ああ、だから私この仕事続けてるんだな」
て、改めて思ったのよ。(パナソニックさんありがとうございます)

てな訳で3Kといわれている介護ですが、どこに焦点を置くかで働き方も変わってくるし、「清い心」で働いた方が全てが上手く行くような気がしている今日このごろです。



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