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2-21 教育実習だよね? その最終

 東京学芸大学に在学中に感じたことなどを綴っています。

前回は

 2コマ目となる授業では、もっと斬新な授業を考えました。指導案を教科担当の先生に持って行くと、暫く思案されましたが、まあ実験してみるのもいいだろうと、許可が出ました。

 授業当日、教室に向かう私の片手には、花瓶に入った花がありました。そして、教壇に花瓶を置いて授業を始めました。何が始まるか不安げな生徒もいたでしょう。導入は前回の復習を行い、続いて花瓶の花について触れます。この花について感じる事を生徒に発話させました。

 花瓶の花の演出は、仏教の三法印を花を通じて感じられる様な、対話式の授業を行おうと企図したものです。生徒の発話から仏教の理念を引き出そうとしたのです。

 色々な発話がありました。生徒によって感じ方が様々なのは、流石に附属高校だなと、私の方が感心する程でした。発話と三法印の考え方である諸行無常などを結び付けるのは、実際には難しい作業でしたが、生徒の内面に訴えかけることで、理解が深まったのではないかと思います。また、クラスによって発話の反応に変化があるのも発見でした。(所謂ノリの良いクラスと真面目なクラスの違いです。)

 今となっては当たり前の事をしているだけですが、当時双方向の試みを授業に取り入れたのは、実習生の身では、ある意味無謀?だったとも言えます。見学していた実習生もびっくりして、控え室に帰ると賛否両論で、部屋中大騒ぎになった記憶が有ります。あんな事が出来たのも、教科担当の先生の懐の深さだったのでしょう。

 そして、実習も最終日を迎え、最後の授業になるクラスについては、私の専門に関する話を自由にして良いとの事だったので、この頃から研究に本腰を入れ始めた高等教育に関連する、将来の進学先としての大学の話をしました。

 大学にはそれぞれ特徴があるとして、東京大学では3年生で所属する学部が決まるのに対して、京都大学は入学時に所属する学部が決まる事を説明しました。他にも堅実な一橋大学や技術力のある東京工業大学の良さ、自由な早稲田大学なども紹介しました。

 具体例として、高校の友人が東京大学を半年で辞めて早稲田大学へ入学し直した話などを挙げて、東京大学ばかりを目指すのではなく、本当に学びたいものが学べて、自分の性格にあった大学を選ぶ事が大事だと話しました。

 どこまで生徒の心に響いたか分かりませんが、私のこの話で進路を真剣に考え、今幸せになっている生徒が1人でもいれば幸せです。

 後日、教科担当の先生から、丁寧な手紙と共に、各クラスで最後に配った実習生への感想を書いた紙が贈られて来ました。まあ、辛口の感想もありましたが、自習の時間の厳ついイメージが授業を受け持って変わったとの感想が多く、その点は安心しました。

 全部を読み通す頃には、生徒に育てて貰ったという自分の成長を感じ、研究者に傾いていた気持ちが、教員という選択も悪くないかなとの思いに、再び振り戻されていました。

 教育実習という短い時間ではありますが、慌ただしく、他の実習生よりも密度の濃い実務的な時間を過ごせました。本当に教育実習だよね?と思うほどの、いまだに忘れられない貴重な経験を得られた事に感謝しています。

次回は


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