新喜劇のセットはどこに置く?

今日は長崎ブリックホールで仕事でした。

劇場に入ってまず進めて行くのが新喜劇のセットの搬入・組み立てです。

今日は08時30分に劇場に入り、11時の開場がリミット。イベンターさんは極力開場を早めたいとのこと。実際に開場をOK出せたのは10時45分頃でしたので、まぁ合格かなぁと思います。

うちの会社で持っている新喜劇のセットは地方巡業に特化しております(笑)めちゃくちゃ合理的に作られている!

このブリックホールや、全国各地にある会館はだいたい間口が10間(約18m)もあり、NGKの1.5倍くらいあったりします。(NGKは約13m)

そういう自由度の高い中でセットをどこに配置するのが新喜劇にとってベストか?というのを考えないといけないわけで。

基本的には一番前にある袖幕の位置が全ての配置の基準になります。そこを起点にセットを配置します。

そしてそこから公演内容のバランスを調整します。例えば、うどん屋の外での会話が多いなら、入り口の角度をキツく舞台センター寄りにしたり

うどん屋のお向かいさんの店(クリーニング屋や花屋が多い)からの出はけが多いならお向かいさんが目立ちやすいように舞台の内側寄せたり。

逆もまたしかり。


外でのやり取りがほとんどない場合は、人の流動がうどん屋内ばかりで、センターより上手(かみて)寄りになり、そのままずっと偏るのはちょっと勿体ないので、今度はうどん屋全体を少し下手(しもて)寄りに配置したりします。

正直、そこで全体を移動するといっても大体20センチ~45センチ程度なので、お客さんの目からハッキリ解るような移動ではないと思いますが、それでも舞台の美観としては絶対に必要な要素だと思っています。

NGKや祇園など吉本の劇場の場合舞台が狭いので、そういう工夫をする幅が無いのが残念な点です。

後は小道具の配置も細かいですが、重要だと思います。うどん屋のテーブルなどはそれの最たるもので、この場所がアクティングエリアを決めてしまいます。

やくざが人質をとって対決するシーンが長いお芝居や、人がドタバタ動き回ったり、ダンスしたり舞台上に登場人物が多い場合はテーブルを少し後ろに配置して、前のスペースを確保しておきます。

同じく逆もあり、序盤や中盤にテーブルに座るシーンが多い場合や、センターの通路からの出はけが多かったり、そこの出はけが公演の内容で重要な場合は、そういうシーンを主張する為にテーブルを少し前に出して奥のスペースを確保したり、通りやすくテーブルを離して通路を作ったりします。

こういう小道具の位置は、演出家が決めたり、今日のような演出家不在の公演では小道具さんや舞監が決めます。

イレギュラーパターンですが、先日高砂南高校の生徒による新喜劇のスタッフ監修をさせて頂きました。

教える時間も少なかったので、デザインやコツ、ヒントだけを与え、生徒に一つ一つの意味を考えさせるようにしました。

僕のアドバイス通りにやろうとして上手く行かなかった、という先生からの相談メールが来たこともありました。

当然そうです、学校にあるもので製作するので、イレギュラーだらけ(笑)僕も想定してないことが起こったりしていました。

次の授業ではそこの改善策や改善案を提示してあげましたが、その授業の一番最後に伝えたのは、

これからの製作工程でも必ずトラブルは起こる。その時僕の方法に拘らず、方法の意図を汲んで別の方法でも目的を達成する術を考えて欲しい。

でした。

僕たちだって地方に行って何かが壊れた、荷物を忘れた、トラブルで機材が届かない、そんな時にはその場で考え、やりくりするしかないのです。

そんな中で素晴らしいセットを作ってくれました!

全部手作りです!

配置も自分たちにさせて美的感覚を考えてもらいました。

立派なデキでしょ!?現役の高校生が作ったんですよ😆しかも学校の廃材や余り物を使用させたので購入物も少なく、セットの製作費は3,000円を切ってるんじゃないかな!?

彼らの感覚を信じてパネルを配置してもらい、監修としてテーブルの位置を50センチほど前に出すことだけ助言しました。

美的感覚だけで言えば彼らの配置で問題はありませんでした。でも、この舞台は生徒の初舞台です。そういう時はどうしても緊張して声が小さくなったり、知らず知らずのウチに舞台の奥に下がってしまうことがあります。

なので、テーブルを敢えて前に出すことで、彼らが無意識に後ろに下がってしまうのを防ぎました。尚且つ、フットマイクに近付けることで、声を拾いやすくなります。

普通に爆笑が起こってましたよ✨

終わった後に高砂南高校の校長先生が


「いやぁ…面白いのに泣けてくる」

とボソッと仰っていて、素敵な教育者だなぁと思いました。

担当の先生いわく、春にエンタメの授業(漫才をしたり、台本書いたり)を始めた頃に比べると、生徒の自発性や溌剌性が格段と向上したそうです。

テーブルを前に出したり、10m以上あるセットを30センチ程度動かすことが、どれ程の効果があるのかはデータも取れないし、難しいとこなのですが、そういう部分にはずっと拘っていきたいと思っています。

高砂南高校の新喜劇特番は、BAN-BANネットという加古川のローカル局でお正月にオンエアするそうなので、地元の方がおられたら是非みてあげて下さい👋😆🎶✨

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