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『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』創造性の源泉とは?

『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』(太刀川英輔著)を読んだ。たまたま友達に紹介してもらった本。僕もいつの頃からか、創造性(想像性)に興味を持って本を読んだことがある。その時はなんとなくそういうもんなんだな、と思ったけど、それをうまく活かすことはできていただろうか? と考えると、どこまで読んだことを活かすことができたかはわからない。

ある時から僕は本を書くようになった。昔一度旅の体験をベースにして、自伝的エッセイを出したことがあるけど、それから10年近い月日が経って、小説を書いてみたり、エッセイをまとめて本にしてみたり、そういった創作活動を行うようになった。そうするとまた、どうすればうまく書けるか? 面白いものが創ることができるのか? などの疑問が出てくる。そこでまた創造性というキーワードが目に止まる。たしか、高城剛のメルマガに「創造性の源泉」というような言葉が出てきて、自分の中で気になる言葉のひとつとなった。そして、池田晶子や小林秀雄を読んでいると、創造とは何か? ということをより考えるようになる。それは時に個性とか、才能とか、天命とか、色々な観点から語られる。そして、その時、その時には、これが創造性だ! とわかるのであるが、それを人に伝えようとするのはなかなか難しい。そして、じゃあ、それを再現するにはどうすればいいか? と聞かれたら、言葉を返すことは難しい。僕の場合は、考えることだ、としか言えない。抽象的だけど、それが最適ではないかとも思えるからだ。一人一人の内に創造性があることはたしかだ。そして、人はそれを使って善いものを創造したいと思っている。でも、また創造性とは何か? 創造とは何かに戻ってきてしまい、ぐるぐると回りながら少しずつ何かをつかみ、何かを創造する。そんな道程を思い浮かべるだけであった。

でも、この本の著者は、それを体系化し、さらに、社会実装に関するさまざまな実績がある。再現性があり、多くの人たちがこの方法を利用して、創造性を高めることができる。この本が先進国の中でも一番のどん詰まりになっている日本から現れたのも偶然はないのかもしれない。この本もまた創造の必然性から生まれたのかもしれない。そんなことを思う。

でも、この本は分厚い!(笑) この本をしっかりと読む人は、一般の人にはどれだけいるだろうか。ワークショップなどもあるみたいなので、本が苦手な人には、そういう方法もあるのだろうか。僕もこの本を見た瞬間にこれは読み切れるのだろうか? と一瞬構えてしまった。そして、読めたとしても、ちゃんと理解するには時間がかかるだろう、と。でも、この本を読み切れたのには理由がある。この一節が僕の琴線にふれたからだ。

地球上で人間以外に言語を操る生物が確認できていないことを見れば、創造性という人類だけに起こった奇跡に合点がいく。実は、種にではなく言語にこそ、創造性の源泉が宿っていると私は考える。
(『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』太刀川英輔)

まさに今言葉のちから、言葉の創造性を持って何か創造ができないかを考えている自分には、他人事ではない感じがしたのだ。哲学エッセイというジャンルを創造した池田晶子は、「言葉は魔法の杖」だと言った。彼女の言うこの言葉の意味は深い。ある意味で言葉そのものなのであるが、誰も言葉は魔法の杖だとは思わない。そんなちからはないと思っている。思っているそのことによって、言葉はちからを失ってしまっているのだ。彼の言う「言語」というのと少しニュアンスは違うかもしれないが、でも、言語、言葉というものに何か可能性があるならば、それを探究し続けることはきっと意味があることなのだ、と思える。それは、人類だけではなく、植物や動物、この地球にとっても。

そして、創造ということにいつもまとわりつく疑問。すべては創造され尽くしているのではないか? という質問に対して、太刀川氏はこう看破する。

「それは違う。なぜなら、すべての創造は未完成で、進化のように変化しつづけるからだ」

すべてのものがすでに創造されているならば、もう何かを創造する必要なんてない。いま、自分のやっていることは無駄になる。それこそ、ただの環境破壊となってしまう。でも、氏は「それは違う」とはっきりと否定する。そして、「進化のように変化しつづける」ものなのだと言う。

この言葉には救われる。過去の偉人たち、天才たちの創造性を超えることができるのか。自分みたいな凡人に何かを創造するなんてことができるのか、時に自分の才能の無さを感じて、そう考えてしまうことがある。意味なんてあるのか? 過去や現在の天才たちに任せておけばいいのではないのか。

でも、すべての創造が未完成ならば、僕たちにはまだやることがある。進化というものが変化しつづけることなのであれば、僕たちもまた変化しつづけることで、進化しつづけるのだ。過去と未来、自分と他人をわける必要はないのだ。創造性は続いていくものだから。僕たちもまた創造性の一部なのである。今回の人生でどれだけ進化できるかわからないし、どれだけ人や地球のためになることができるかわからないけど、きっと何かできるはず。そんなことを感じさせてくれる本。

創造性にとっての希望の書となるこの本が多くの人たちに読まれ、人それぞれの創造性が開花し、よりよい地球が創造されることを願って。

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