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アトピーの問題は医師と患者のコミュニケーションの問題だと思う - アトピー性皮膚炎治療体験談

実は、アトピーの主な問題は「コミュニケーションの問題」なんです。患者間、患者と医者のコミュニケーションが改善することで、取り巻く環境は変わってくると思います。 ―― これは、物心ついたときからアトピーと付き合い続け、一度は「いくらステロイドを使ったところで良くはならない」と諦めて脱ステロイドを試したこともあったぼくがいま、最終的に感じていることです。

ぼくは、人前に出るのが嫌になるほどのアトピーにずっと悩まされてきましたが、ステロイドを効果的に使ったプロアクティブ療法と漢方を組み合わせた治療を試してみて、いまではほとんどステロイドを使わないで済む状態までになっています。

でもそれまでには、皮膚科を転々としたり、インターネットに載っている脱ステロイド療法をいくつも試したりと、いろんな経緯がありました。

アトピーとの付き合いは幼少期から。思春期は写真を撮られるのもいやなほどに

ぼくとアトピーとの付き合いは、物心ついたときからです。でも、小さい頃はそんなに状態は悪くなく、症状が目立ちにくい肘や膝の裏側などに少し炎症が起こっていたり、口や耳が赤切れたりする程度でした。月に一度病院に通い、もらってきたステロイドで凌いでいたと記憶しています。

最初に明確な変化があったのは、高校2年生の頃でした。

身体の一部にしか出ていなかった炎症が全身へと拡がっていき、顔全体にまでひどく炎症するようになりました。目立つ場所に炎症が拡がったのはそのときが初めてで、写真に写るのがいやで撮影係に回るようになったのをよく覚えています。

思えば、その頃には「病院で処方されるステロイドなんて、どうせ全然効かない」と思うようになっていました。

一人暮らしをはじめて一度は改善。しかし転職・引っ越しを機に再び悪化

高校時代に悪化したアトピーでしたが、卒業・就職を機に一度は改善していきます。実家を出て一人暮らしをはじめたところ、一年ほどで症状は収まり、パッと綺麗になったのです。おそらくですが、自宅で犬を飼っていたり、押し入れで寝たりしていた実家の環境が良くなかったのだろうと思います。

でも、転職を機に再びアトピーに悩むことになります。

1社目の仕事を辞めて、転職・引っ越しをしたのがきっかけでした。最初は比較的軽症でしたが、肘や膝の裏、顔まわりなど、炎症はどんどん拡がっていきます。最終的には、頭皮や耳の中、隠部や太もも、足の先までひどく炎症するようになりました。これが、22, 23歳くらいの頃です。

皮膚科に行っても何も話は聞いてもらえず、ただステロイドを出されるだけ。「どうせ効かないんだけどな」と思いながらも、何も相談できず流れ作業でただ診察されるばかり。その皮膚科には最初の一度だけかかったきりで、もう通わなくなってしまいました。

ステロイドによる治療に疑問を持ち、脱ステロイド療法へ

「医者の出す薬を使っても良くならないということは、もしかして治療法が悪いのでは?」 ―― 効果を感じられない治療への疑問が大きくなったぼくは、アトピーについてインターネットで調べるようになりました。そこで出会ったキーワードが「脱ステロイド」です。

“アトピーが治らないのはステロイド自体が悪く、ステロイドを使わずに体の中の毒素を排出すれば良くなる” ―― それは、ステロイドへの疑問を持っていたぼくが飛びつくには、十分すぎる言葉でした。

独自の栄養を摂取するやり方、毒素を排出させるやり方など、調べればいくつも出てきます。ネットの情報をもとに、さまざまな改善方法を試してみました。「水が悪いのでは?」と思って、お風呂にビタミンCや竹炭を入れてみたこともあります。

独学での脱ステロイド療法を試すもなかなか効果を得られない状況でしたが、そこで一つの転機が訪れます。それは、とある漢方医との出会いでした

漢方エキス剤が劇的に効果を発揮!一度はかなり改善するも、効果は長続きせず......

あるとき出会ったお医者さんは、保健適用内の漢方薬を組み合わせて処方してくれる漢方医さんでした。そしてその漢方エキス剤が、劇的に効果を発揮しました。使い始めると、みるみる身体の状態が良くなり、炎症がほとんどなくなるまでの状態に。

しかもそれはぼくだけではなく、周りのアトピー患者さんの中にもその漢方医さんにかかって状態が良くなる人がいたので、本当に効果がある治療だったのかも知れません。

「このまま漢方薬での脱ステロイド成功なるか!」と思いました。

しかし残念ながら、その状態は長くは続きませんでした。半年ぐらい経つと、再び症状がぶり返してしまいました。その後は他の漢方薬を試してみても、他の漢方医さんを訪れてみても、もうほとんど変化は現れませんでした。

脱ステロイドを諦め、ステロイドを使った「プロアクティブ療法」という治療法に出会う

もう脱ステロイドは無理だ。―― そう思いはじめたことをきっかけに、2つめの転機が訪れます。「ステロイドで治った人の話はないのだろうか?」と思い、情報を調べ始めることにしたのです。

脱ステロイドについて調べている中で、「インターネットを調べても脱ステロイドを勧めるブログは大量に出てくるのに、ステロイドで直した人のブログが出てこないのは不自然だ」と感じていたのです。いざ調べてみると、ステロイド治療での推移を記事にしてくれているブログを見つけることができました。その人も元々は、脱ステロイドの治療を試していたようです。しかし限界を感じて、ステロイドの治療に戻ったと言います。

そのブログには、「アトピーにおける炎症のメカニズム」や「炎症が拡がる理由」などが解説されていました。また、このブログでぼくは、「プロアクティブ療法」という治療法があること、そして「プロアクティブ療法による入院治療でアトピーが治っている人がたくさんいる」という事実を知り、衝撃を受けたのです。

「こんなにキツい思いをするぐらいなら、いくら身体に悪かろうが、たとえ寿命が縮まろうが、ステロイドで抑え込んでやろう!」

そしてぼくは、自己流でプロアクティブ療法を始めることにしたのです。

独学でプロアクティブ療法をはじめ、ステロイドを使わないでも済むほどまでに改善!

再びステロイドを使い始めると、みるみる炎症が引いて行きました。でももちろん、ステロイドを使えば最初はすぐに効くのはこれまでの経験で知っていたので、効果自体にそれほど驚きはなかったです。

ですが、プロアクティブ療法のやり方にしたがって最初と変わらない量を3ヶ月ほどずっと使い続けてみたところ、これまでのように炎症がぶり返してこないのです。3ヶ月目から徐々に量を減らしていきましたが、それでも炎症がぶり返してくることはありませんでした。

そうやって治療をしているうちに、いつの間にかステロイドを使うことも徐々に忘れるようになりました。最終的に、治療8ヶ月目には身体へステロイドを使うことはほぼなくなりました。それ以来、ステロイドは多くて月に一度使うか使わないかというところまで改善しています。

(左:治療前の状態)(右:治療後、現在)

「ステロイドをほぼ使わないで済む状態まで持っていけるのか!」

この実体験は、長年ステロイドを使った治療法に疑念を抱いてきたぼくにとって、驚きの事実でした。インターネットでは「ステロイド漬けになったら、ステロイドを使わなくなるとリバウンドするぞ!」と脅すような情報が溢れていたので、「本当にそうなったらどうしよう」と怖かったのです。

プロアクティブ療法を試しても良くならない方へ

プロアクティブ療法によってぼくのアトピーはほぼ直りましたが、唯一残った頭の炎症だけはなかなか改善しませんでした。最強クラスのステロイドを使っても少しづつしか良くならないのです。

また、アトピーに悩む方たちと会って話をしてみると、ぼくと同じように大量の外用ステロイドを使ってるのに治らない方という方と出会うこともあれば、内服ステロイドまで使ってるのに治らないという話を聞くこともありました。その人たちが嘘をついているとは思えません。

「プロアクティブ療法だけじゃ治らない人もいるのでは?」――そんな疑問が頭をよぎったとき、ひとつ思い当たることがありました。ぼくの場合、プロアクティブ療法と同時に漢方薬の服用も続けていたのです

「もしかして、劇的に治ったのはプロアクティブ療法と漢方薬の組み合わせで治療していたからじゃないか?」

ぼくは今はそう考えています。再度漢方薬を試してみて、劇的にとはいきませんが少しずつ調子が良くなっているのを感じています。この経験から、ぼくはいま漢方薬を学びながら、自分の体を使ってアトピーに効くかどうか実験しているところです。

もし「ステロイドをいくら使っても良くならない」と感じてる方がいたとしたら、漢方薬も試してみて欲しいと思います。

「ステロイドは “うまく使えば” 決して怖い薬ではない!!」― 経験から感じていること

幼い頃からずっと悩まされていたアトピーが劇的に改善したのを体験して、いま感じていることが2つあります。

まず1つ目は「ステロイドはうまく使えばけして怖い薬ではない」ということ。

最初は「大量のステロイドを使うなんて!」と思ってました。でも、表面の炎症が消えたとしてもステロイドの使用量を減らさず、使い続けることで奥底に眠っている炎症を抑えることが大切なのです。奥に眠っている炎症を抑えないと、そこからまた炎症が拡がってきてしまうからです。

最初に多くの量を使うことで、火事で例えるなら「火消しを徹底的にすること」につながります。そうやって徹底的に消火してあげることで、また炎症がぶり返してくるのを防げるわけです。

できれば漢方薬で体質改善をしつつ、このプロアクティブ療法を試してみてください。全員が治るわけではないかも知れませんが、ぼくのように治る可能性は確かにあります。まだ試したことがない人は、少しでもこの方法に賭けてみてほしいです。

そして、実感していることがもう1つ。それは、「日本の医療業界は問題が山積みだな」ということです。

ぼくは、自分で調べてプロアクティブ療法を試して良くなりました。でも本来、「これは医療側から提案されるべき治療法なのでは?」と思っています。いままでかなりの数の皮膚科に通ってきましたが、子供の頃を含めてステロイドの使用量や使い方を教えてもらった記憶はほとんどありません。他のアトピー患者さんと話していても、やはり同じ話を聞きます。

最初からFTUの量(※)を塗ることや、漢方治療を教えてもらっていれば、脱ステロイドにハマって長い期間アトピーで苦しむことはなかったかもしれません。皮膚科学会は脱ステロイドを批判していますが、脱ステロイドを患者が選択するのは医療側にも大きな責任があると感じます。最初から病院で適切な治療とコミュニケーションが行われていれば、ほとんどの人は脱ステロイドを試そうとする必要もないはずなのです。

(※ FTU : フィンガーチップユニット。一回に塗る量の目安のこと。手のひら2枚分の面積につき、人差し指の第1関節分の長さ)

アトピーで苦しむ人をひとりでも少なくしたい。医療業界の問題を解決したい ― これからしていきたいこと

ぼくは自身の経験を踏まえ、これからしていきたいと考えていることが2つあります。

まず1つ目は、「全身に炎症があった自分でも、まったくステロイドを使わない今の状態まで辿り着くことができた」ということをアトピー患者さんたちに伝えていくこと、それを通してアトピーに苦しむ人をひとりでも少なくすることです。

もう1つは、「医療業界の抱えている問題を解決していく」ことです。患者側が変わることによって医療業界を良い方向へ変えていけたらと思いますが、同時に医療側からも変えていく方法は何かないのかと模索しているところです。アトピーに関する主な問題は「医者と患者とのコミュニケーションの問題」だと感じているので、そのようなアプローチから業界に何か変化を加えられたらなと思っています。

現在ぼくは、2つのアトピーコミュニティに関わっていて、患者同士での対話を行っています。自分自身も色々な脱ステロイド療法を試した経験があるので、脱ステロイドを信じている方の気持ちはよくわかります。相手を否定せずにゆっくりと話を聞きながら自分の体験を伝えていくことで、何かを持ち帰ってくれる方がひとりでも増えたら良いなと思っています。

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