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打球をより遠くに飛ばすためには?

こんにちは! 初投稿です

上原(takulions2)です!

大学でバイオメカニクス等を学んでいます。

初投稿ということでダメなところもあると思いますがよろしくおねがいします(笑)

ゆる~くやりたいなと思います!

今回は野球におけるバッティングについてです。

1.データによるバッティング

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                       (baseballsavantより)

すでにご存じの方が多いと思われますが近年、野球界においてデータの重要性が高まっています。現在トラックマン(弾道測定器)がMLB、NPBのほとんどの球場で導入されておりチーム強化等の為に使用されています。

それらのデータを使用したセイバーメトリクスが話題となっています。
これらによって能力が可視化され選手個々の能力が評価、比較しやすくなりました。

その中でバッティングにおいて話題になったのが

フライボール革命です。


2.フライボール革命とは?

話題になったバッティング理論の1つ

「打者がより得点に貢献するためにフライを打ち始めたこと」
                                                            (新時代の野球データ論,2019)

MLBの怪物達は「ゴロを打つよりフライを打った方がホームランにもなるしそっちのが良くね?」って気づいたという感じです。
実際にデータとしてあります。

画像2

                        (baseballgeeksより)

これを見てもらえばフライは有効であるということがわかると思います。(しかし三振の数が増えたのも事実です。)

そこからバレルという新指標ができました。

バレル = スイングスピード × 打球角度

バレルゾーンに関してはbaseballgeeksさんのサイトが1番分かりやすいと思いますのでそちらを参照してください。



3.実際に打球の飛距離を伸ばすには?

そしたら実際に打球を遠くに飛ばすためにはどうしたらよいのか、、、
今回はバッティングフォームの細かいメカニクスではなく「打球」にフォーカスしていきたいと思います!

打球の飛距離を決定する力学的要因は

①打球の初速度(打球速度)
②打球発射角(打球角度)
③打球の角速度(打球の回転速度)

の3つです。

また、打球の飛距離に最も密接な関係がある打球特性は打球の運動エネルギーとされており(城所ら)、

その中でも打球の運動エネルギーに作用するのは

打球初速度(打球速度)と打球角速度(回転速度) (城所ら)

です。

これら3つの特性としては

①打球初速度は打者の身体特性(除脂肪体重)に依存しやすい。

②③はインパクト時のボールとバットの位置関係が大きく関わるため打者の技術となる。(インパクトパラメータとスイング特性)

となっています。

①の打球初速度については 除脂肪体重とスイング速度は相関関係にある という研究があります。

そのため身体特性が関連していると考えられます。(メカニクスについては今後機会があればやりたいなと思います)


②③は打者の技術が大きく関わってきます。今回はこちらを見ていきたいと思います。


まず運動エネルギーの大きな打球を放つためには正確なインパクト位置へスイングすることが最も重要であることされています。(城所ら)
ここで言う「正確なインパクト位置」とは?

→皆さんも知っているようにバットの長軸上に定義される「」あるいは「スイートスポット」と呼ばれる点です。
ではなぜこのポイントかというとこの位置でのボールインパクト時のエネルギー伝達ロスを最小限にできるからです。

バッティングをする際に「芯でとらえろ」などと言われますがこのような理由なんです。感覚では芯に当たった方が飛ぶというのは分かる人は思いますがこういった理由でした。


次に打球速度と打球角速度の関係についてです。

前述したように打球の運動エネルギーに作用するのはこの打球速度と打球角速度の2つです。


そしたらこの2つを高めればいいんじゃないの?と思うと思いますが、そうはいかないんです。

本来、打球のバックスピン方向への一定範囲の打球角速度はマグヌス効果により揚力が発生し、飛距離に対し貢献するとされていますが、
打球速度と打球角速度は負の相関関係があり、打球の飛距離が伸びない場合がある。(城所ら)とされています。


ようするに打球にバックスピンかかっていて打球角速度が大きくなりすぎるといわゆるポップフライになることがある。とされています。

打球角速度が大きくなるほど球に対する揚力が大きくなるからです。
マグヌス効果

ですが、裏を返せば打球速度を高めながらも、インパクト局面での個人の技術を向上させることにより、最適な打球角速度を作ればポップフライを減らすことができるとも解釈できるのではないかと考えます。


では打球自体の飛距離伸ばすのと運動エネルギーを大きくするにはどうすればよいのかというと

・打球速度が速く、打球角速度が小さいと打球飛距離が長い。
・ボールに対してバットを直衝突に近いインパクトをして大きな打球速度と小さな角速度を獲得した打球が低い角度で放たれた場合,打球が大きな運動エネルギーを有する。

とされています。(城所ら)

しかし打球が低い角度の場合、これらによっておこる事象は外野の間を抜けるライナー性の強い打球が最大であり(ホームランになる時もありますが)、ほとんどはライナー性であったり、ゴロであるといえます。


そしたらどのように飛距離を最大化させればいいか?
ここで打球角度・バット角度がでてきます!

打球角度を大きくする(打球を高く放つ)にはインパクト局面のバットとボールの位置関係が重要になってきます。
その中でも打球角度を決定する要因はインパクト時におけるスイングの方向スイング角度)とボールとバットの位置関係(衝撃線角度)です。
(城所ら)

インパクト局面のボールとバットの位置関係

この図を見てもらって

スイング角度がθswing。
衝撃線角度がθimpact。
打球角度がθbatte。

となっています。

より打球角度をつけるためにはスイング角度を大きくすることが重要です。

ボールに対してスイング角度を大きくしたスイングで斜衝突をさせることで打球の角速度が大きくなり、大きなスイング角度に応じた大きな打球角度を発生させることができます。

実際にスイング角度を大きくしたスイングとはアッパースイングのことを示します。


4.まとめ

打球の飛距離を長くするためには

・スイング速度を高め大きなスイング角度でインパクトをすること。
より大きな運動エネルギーを持った打球を放つには正確なインパクト位置へスイングすること

が重要です。

またスイング速度とインパクトの正確性はトレードオフの関係ではないため、大きなスイング速度で正確なインパクトをすることで打球の運動エネルギーを最大化できる。


5.最後に

これまで長々と理論上の話をしてきましたが、実際にこれを指導現場や選手に活用できるかといったら必ずしもそうではないと思います。こういった仕組み、原理ということを認知する、意識することはとても重要であり、選手自身の「気づき」や「きっかけ」につながることはあると思います。

しかし現場においてどうしてもいまだに曖昧というか抽象的なものであることは確かだと思います。

より具体性・言語化されたアプローチ、コーチングが重要になってくると思います。

そのため、今回のテーマに限らず皆さんと考えていければよいなと考えています!!
ここまでお付き合いして頂きありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!


参考文献

「新時代の野球データ論」
「MLB.com」
「baseball savant」
「baseball geeks」
「野球のバッティングにおける打球の運動エネルギーを決定するインパクトとスイング」(城所ら、2012)
「野球のバッティングにおける打球飛距離と打球の運動エネルギーに影響を及ぼすスイング特性」(城所ら、2011)




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