人獣共通感染症:SARS-CoV-2がミンクに感染し易い理由:ヒトと哺乳類の間のSARS-CoV-2の受容体としてのACE2の高度に保存された結合領域の解析結果

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オランダでは2020年4月以降、毛皮用のミンクを飼育する17の農場で、ミンクが新型コロナウイルスに感染した例が確認され、50万匹以上が殺処分されている。新型コロナウイルスにミンクが感染したとの報告が初めてあったのは20年4月で、オランダの2つのミンク農場だった。その後、オランダ政府が検査を実施し、15の農場で感染が確認された。さらに、政府主導の調査で、動物から人への感染が初めて起きたことを示唆する結果が出た。

2020年03月27日、ベルギーにて、飼い主から猫に新型コロナウイルスSARS-CoV-2が感染する事例が起きていたことが報告された。これまで、SARS-CoV-2が飼い犬へ感染することは報告されていた。世界で初めて、飼い主から飼い猫へのSARS-CoV-2の感染が確認された。アメリカ・ニューヨークの動物園で飼育されているトラがSRAS-CoV-2に感染したことが報告された。世話をしていたSRAS-CoV-2に感染した飼育員からトラへ、SRAS-CoV-2が感染したとみられている。そこで、私達は、SRAS-CoV-2のビリオン表面のスパイク糖タンパク質に対する受容体であるACE2分子の人と犬、猫とトラと他の哺乳動物間での相同性を検討した。その結果、ACE2分子内の結合領域 with SARS-CoV spike glycoproteinは、人と犬と猫とトラと他の哺乳動物間での高い相同性が示された。ヒトコロナウイルスのペットへの感染はまれである。しかし、オランダ、スペイン、米国において、養殖ミンクから人へのSARS-CoV-2の感染に関する危険性が報告されている。世界保健機構(WHO)では、今回の人獣クロス感染は特殊なケースとして考えている。しかし、これらの国々の衛生局は、SARS-CoV-2感染家畜と接触を避けるよう呼びかけている。

SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされたCOVID-19の発生は今やパンデミックになっているが、人畜共通感染とウイルスの抗原性についての理解は現在ほとんどない。私達の研究グループは、SRAS-CoV-2のビリオン表面上のスパイク糖タンパク質の細胞受容体として報告されているACE2分子全体のヒト、イヌ、ネコ、ミンク、および他の哺乳動物間の相同性を検討した。その結果、ACE2分子は、ヒト、イヌの間で最大79から92%の相同性を示した。ACE2分子は、ヒト、猫の間で最大91から92%の相同性を示した。ACE2分子は、ヒト、トラ、ミンクの間で92%の相同性を示した。ACE2分子は、ヒト、コウモリの間で最大80から89%の相同性を示した。ACE2分子は、ヒト、センザンコウの間で91%の相同性を示した。ACE2分子は、ヒト、ヘビの間で最大74から75%の相同性を示した。

さらに、ACE2分子の結合領域としての5つのアミノ酸KGDFRは、SARS-CoV-2の宿主細胞への接着に重要である。これは、SRAS-CoV-2のビリオン表面上のスパイク糖タンパク質を直接認識して結合する。これは、ヒト、イヌ、ネコ、および他の哺乳類の間で行われます。その結果、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質に対するACE2分子の結合領域である5アミノ酸KGDFRは、ヒト、イヌ、ネコ、コウモリの間で最大100%の相同性を示した。SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質とに対するACE2分子の結合領域としての5アミノ酸KGDFRは、ヒトとセンザンコウ又はヒトとミンクの間で最大80%の相同性を示した。さらに、in silico解析より、ヒトACE2と比較して、ミンクACE2とSARS-CoV-2との親和性は、より強い可能性が示唆された。SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質に対するACE2分子の結合領域としての5アミノ酸KGDFRは、ヒトとヘビの間で60%の相同性を示した。ACE2の結合領域内のこれらの5つのアミノ酸の高い相同性の結果より、SARS-CoV-2が、ヒト、犬や猫やトラ、ミンクへ感染する可能性が示唆された。

中国の研究者らは、感染した成人患者199人を対象としたCovid-19の治療を目的としたロピナビルリトナビルの非盲検無作為化臨床試験の結果を報告している。主要エンドポイント、臨床改善までの時間に違いはなかった。SARS-CoV-2に対するワクチンを迅速に開発する必要性は、ゲノミクスや構造生物学などの分野を含む基本的な科学的理解が急増し、新規なワクチン開発の新時代を支えているときに生まれる。これまでのところ、コロナウイルス感染症のための特定の治療薬は確立されていない。哺乳動物から人間や他のペットに、SARS-CoV-2が感染する例は限定的とされている。人間同士の接触によるSARS-CoV-2の感染のケースと比べるとそのリスクは非常に低いらしい。しかし、SARS-CoV-2の哺乳動物への感染を防ぐため、特に、飼い主や飼育委員自身がSARS-CoV-2に感染している可能性がある場合は、飼い主はペットや哺乳動物との濃厚接触を避けるべきである。

がん治療専門ドクター/癌ゲノム医療/新興感染症                             Veterinary Quarterly Published on September by 京都@Takuma H



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