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街 9

バイトとスロットを交互にこなす毎日。学校は退学にならない程度に行っていたが学校そのものに目的がなくなった今どうでもよくなっていた。

誰と会っても、何をしてても感情が動かない。

世界のほとんどがどうでもよくて一日でも早く現状から抜け出したいとしか思わない日々。

友達って呼べる奴は数人しかいなかったけど、そいつらといる時もなんだか気分が晴れなかった。

ただただ悲劇のヒロイン状態な自分への自己嫌悪しかない。

増えるのはタバコの量とバイトの労働時間だけ。

まあ無理も無いよな。

バイトで稼いだ10数万円はスロットの軍資金となり、負けた分は自分でかぶり勝ったらその勝ち分の半分を実家にいれる生活だ。

2,3回連続で負けたら資金繰りができずジリ貧状態。

生きてる気が全くしなかった。勝っても負けても嬉しくないギャンブルなんて本当に価値が無い。

学校にいる時も機嫌が悪いなんてレベルじゃなかった。

同時に会社を潰した債務処理もあったから債権者からの取りたてで家にも帰れなくなり、家族は親戚の家を転々としていた。

俺は家に帰ってたけど鉢合わせることはなかった。

でもいろんな意味で会わなくてよかったと思う。

そんな腐った高校生活にいい加減に嫌気がさして、もう退学になってもいいななんて思っていたころだ。

普段呼ばれる事の無い進路指導室に呼ばれた。

呼び出したのは進路指導室長 伊藤健三。

部屋に入ると同時に伊藤室長は目をギョロギョロさせてこちらを見ると政治家が演説をするように、ハッキリとそして言葉一つ一つを噛み締めるように話し始めた・・・

「君の入学当初の成績は実に素晴らしかった。だが君は自分を甘やかし、堕落させ底辺まで落ちている。進学科という学校を看板に傷を付け、泥を塗り平気な顔で今日も登校しているな。それでも私は買っている部分もあった小論文は毎回クラスの中では断トツで着眼点もおもしろい、たしかに成績は落ちているが基礎は理解しているから今でも十分間に合うはずだった・・・・やはり蛙の子は蛙のようだね。親が自己破産して奨学金すら申請できないとの報告を君の担任から受けたが事実かね?」嘲笑うように問う。

「ああ、だから俺は進学はしない。」部屋を出ようとすると。

「うぬぼれるなクズが!!進学しない?お前はしないんじゃない。できないんだよ、本当に不幸な奴だ。毎日何しに学校にきているんだクズが。周りの邪魔をして楽しいか?せっかく奨学金の申請をしてやろうと思ったが、お前の親は親戚に頭を下げて保証人になってもらうこともできないと言ったぞ。ホント親子揃って私に恥をかかせおって。クズだよ。邪魔だなんだよ。」

「お前の家がどうなろうと知った事じゃないが、お前みたいなクズが一人いるだけで進学率が落ちるんだ。どんだけ私が恥をかいたことかわかるか?自己破産するような奴はそもそも入学してくるんじゃない!」そう言い切ると満足そうな笑みを浮かべた。

振り向くと同時に近くにいた二人の教師が俺を押さえ込んできた。

たぶん殴りかかると思ったのだろう。

残念ながらそんな気力は残っていなかった。

毎日ギリギリだったんだ、ただ生きるだけで精一杯だった。

「離せよ、別に殴りかかったりはしねぇから・・・」開放されると気力がないことを察した伊藤は拍車をかける。

「私に謝罪しろ。こんなに恥をかかせて、通るはずのない申請を出させてたんだ。早く謝罪しろ!」そう言って俺の必要の無くなった申請書を投げつけてきた。

渾身の殺気を込めて睨み付け「わるかったな」と言うとさすがに察したようで「わかればいいんだ」と言ってそそくさと部屋を出て行った。

担任が飛んで入ってくる。

「ごめんなさい。1%でも可能性があるならって・・・審査だけでもって思って相談したの・・・何か方法を知っているかと思って・・・」泣きながら謝られた。

「ありがとな・・・でも無理なもんは無理なんだ。

就職はすっからあとはほっといてくれよ。」そう言って部屋を出た。

そっから数日学校にもいかずフラフラしながらスロットを打ったり、バイトしたりしながら数日を過ごした。

誰もがもう無理だって思っただろう。

バイトも変えて気分転換しようと思った、人と接したくなくて飲食店の厨房を選んだ。

そこで再会した俺が高1の時の3年のアイドル、バレー部の11番・・・





この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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