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磨崖仏は昭和特撮の聖地だ!

先月記事を書いた「城ヶ島の人面岩」は、時の流れがたまたま岩肌に彫り上げたものでしたが、今回は、人間が意図的に岩肌に彫り上げた「磨崖仏」をご紹介します(「まがいぶつ」と入力してスペースキーを押すと「紛い物」と変換されてしまうのが トホホ…ですが)。
「磨崖仏」とは、自然の岩壁などに彫られた仏像のことで、インドや中国のものが有名ですが、日本でも奈良時代もしくは平安時代以降、各地で作られてきたそうです。

そこそこご近所にある横須賀市鷹取山の磨崖仏、高さ8メートルの弥勒菩薩像です。

1960年代生まれの「元少年」の方にはおわかりかと思いますが、ここは70年代の一時期、特撮番組のロケ地としておなじみの場所でした。

仮面ライダーV3 第41話「あッ! 人間が溶ける! ヨロイ元帥登場」より (C)石森プロ・東映

漏れがあるかも知れませんが、当方が確認した限りでは、

スーパーロボット レッドバロン
第18話「見よ!レッドバロンの最後」
1973年10月31日放送

仮面ライダーV3
第41話「あッ! 人間が溶ける! ヨロイ元帥登場」
1973年11月24日放送

電人ザボーガー
第5話「Ω地獄計画開始!」
1974年5月4日放送

仮面ライダーX
第15話「ゴッド秘密基地!Xライダー潜入す!!」
1974年5月25日放送
第16話「逆襲アポロガイスト!Xライダー危うし!!」
1974年6月1日放送

仮面ライダーアマゾン
第12話「見た!ゲドンの獣人改造室!!」
1975年1月4日放送

アクマイザー3
第36話「なぜだ?!のみこまれたガブラッチョ」
1976年6月15日放送

といった具合で、1973年秋から1976年初夏までの3年弱のあいだに、計6作品において、この弥勒菩薩像はその御姿を顕現してきたのです。中でも「仮面ライダー」シリーズでは3作続けての登場となり、そのガンダーラ風ともいうべき風貌は、当時の少年たちにかなり強烈なインパクトを与えたと思います。

ただ、仏教において弥勒菩薩というのは、遠い未来に衆生を救済する「ありがたい存在」なのですが、特撮番組では、その威容ばかりが強調され、ほとんど悪の組織のアジトとして使われていました(「電人ザボーガー」では、ミニチュアではありますが、磨崖仏が大爆発するという描写もあります)。

番組でのそうした扱いが「罰当たり」と批判を受けたためなのかどうかわかりませんが、その後はぱったりと、特撮作品で見かけることがなくなりました。

あれから約半世紀。もはやこの仏像も存在していないのではないか、と勝手に思っていたのですが、ネットで調べたところ、今でもご健在と判明。しかも、自分の住む神奈川県内ということで、コロナ禍の自粛期間に、密を避け、現地に出かけてみました。その様子をご紹介します(画像は2020年のものなので、直近の状況とは違っているところがあるかも知れません)。

ロッククライミングする人の姿も

鷹取山の磨崖仏
標高139mの鷹取山は、垂直に切り立った岩石が特徴で、「湘南妙義」の別名があります。
岩山には、巨大な弥勒菩薩尊像が彫られています。横須賀市在住の彫刻家、藤島茂氏が昭和35年から約1年かけて製作したもので、像高約8m、像幅約4.5mもあります。
別に、釈迦如来像の磨崖仏もありましたが、昭和40年に鷹取小学校建設のために破壊されています。(横須賀市観光情報より)

https://www.cocoyoko.net/spot/magaibutu.html

鷹取山公園
明治から昭和の初期にかけて石材を採取したため生じた垂直に切り立った岩石が特徴の鷹取山は、その姿を群馬県の妙義山にたとえ、「湘南妙義」の別名があります。この奇観の中で、巨大な弥勒菩薩尊像の姿も目を引きます。この弥勒菩薩尊像は、逗子市在住の川口満氏に依頼により、本市在住の彫刻家藤島茂氏が昭和40年頃に製作したものです。山頂からの眺めも抜群で、休日にはハイキングを楽しむ人でにぎわいます。(横須賀市公式サイトより)

https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/5560/sisetu/fc00000978.html

磨崖仏が製作されたのは、1960年(昭和35年)説と1965年(昭和40年)説とあるようですが、下記の藤島茂のwikiページにあるとおり、多分1960年が正解ではないかと(現地の案内板には、横須賀市公式サイトと同様「昭和40年頃」と書かれていますが、これは最初の引用文にある、釈迦如来像の磨崖仏が壊された年なのではないかと思われます)。それにしても、これだけの大きさの石仏を、1年ほどで彫ってしまうとはすごい。彫刻家というのは体力勝負だと聞きますが、それにしてもかなりのハイペースです。

藤島 茂(ふじしま しげる、1914年8月7日 - 1990年12月20日)は日本の彫刻家。二紀会に所属し、1977年から二紀会委員を務めた。
木彫の仏像やしゃも等の作品が多いが、石彫、塑像などの仏像も制作した。 代表作に神奈川県横須賀市にある鷹取山に高さ約8mの磨崖仏(弥勒菩薩像)があり鷹取山磨崖仏として親しまれている。
(中略)
1960年 神奈川県横須賀市の鷹取山(現湘南鷹取)に磨崖仏弥勒菩薩像を制作。(後略)

https://ja.wikipedia.org/wiki/藤島茂_(彫刻家)

行き方は、京急追浜駅からバス「湘南たかとり団地循環」に乗り約10分。「たかとり小学校」で下車して徒歩約10分です。

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