2016/08/17

13歳の頃。町の外れに小高い山があり、その頂上に廃寺があった。
毎日そこへ通っていた。友人にも知られてない町を一望できる秘密の場所だった。
一度だけ特別だぞと念を押し友人を連れて行ったが全く響かなかった。
2年後初めての彼女を連れて行った。
良いとこねと言ってくれた。何故か涙が出た。


中学三年生の終わり頃、人生初めての恋人ができた。

近所に住む素直な性格のかわいらしい娘だった。

何でも言い合える相手がいてくれるのは、救いのようだった。

歌を作る以外に自分をさらけ出せる唯一の相手であり、かけがえの無い存在だった。

日々は鮮やかになり、つまらない放課後は一転して楽しくなった。

彼女とは、いろんなことを話した。


考えていること、聴いている音楽のこと、作った音楽のこと、味わってきたこと。

今までの人生の鬱積をぶつけるように、すべてと言ってもいいぐらいのことを毎日話した。

彼女も楽しそうに聴いてくれていた。 嬉しかった。

それでもあの場所のことは黙っていた。

魅力を分かってもらえるか不安だったし、あそこは僕にとって、どこか恥ずかしいものになっていた。

それにあの時間、僕が感じていたことはきっと幻想ではないけれど、 それを人にうまく説明できる自信はなかった。

いや、それは言い訳かもしれない。


本当は違う。もう悪意の有無に関わらず、大切なものが汚される、 あの胸がキリでえぐられるような痛みを感じたくなかったのだ。

二年前、友人が僕の心に突き刺した「そんなにいいか?」はまだ刺さったままだったから。

思い出すだけで、心がズキッとした。血が流れていないだけで、痛覚はたしかに鳴いていた。


しかし付き合って初めての夏、僕は彼女をあの神社に連れて行くことになる。

キッカケはなんでもない日だった。

二人で散歩をしているときに、「ねぇ、秘密にしてることを一つだけ教え合おう?」 と彼女が言った。

疑問文じゃないのに、語尾の持ち上がる不思議な口調だった。

その話し方、ひいては聴き方のせいだろうか。僕はあの頃の話を少しずつ始めた。

独りだったこと、禁止されていることに逃げたこと、 部活からも逃げ出してやぐらで過ごした毎日のこと、そこで感じたこと、 そこはまぎれもなく素晴らしい場所だったこと。


そして、それを友人に理解されなかったことも。

うまく説明できない僕のヘタな話を彼女はただただ聴いてくれていた。

そして僕が話し終わるのを確かめると、少し笑って、「連れて行って」と言った。

それから数日して、二人で神社へ行った。

山のふもとまではそこまでつらくない。
僕たちの町から距離はあるが、平坦な道も多い。

問題は山道だった。
ごく普通のお嬢さんである彼女が登れるのか不安だった。

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