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ブランドバンドになると

「錯覚資産」というしくみがあるが、エンタメの世界はものすごくコレが多い。

「実力があること」よりも「実力があると周囲が錯覚していること」のほうが影響力がデカいという話だ。

「成功したいなら、人々が自分に対して持っている都合のいい錯覚である【錯覚資産】を増やすことに力を注ぐべし!」という考え方であり、少し前に流行った本に書かれていたことで世間に浸透していった。

本当にそうなのかどうなのかは分からない。
「話題の〇〇!」と言って食べたものがそんなに美味くなかったこともあるし、ドラフト1位のスーパールーキーが結果を出さないこともある。

「ブランドがついてりゃみんな絶賛する」という理屈は分からんでもないが、体感的には万能ではない。

自分の実体験で面白かったものがある。

2012年にあちこちの会社にデモテープを送ったことがある。「最高のナンバーが誕生した!この曲ならいけるぜ!」と思ったからだ。

レーベル、マネージメント会社、プロダクションなどに送りまくった。とにかくデビューしたかったので200社以上に郵送した記憶がある。

中には直接ライブハウスに見にきてくれた新人担当の方もいたし、電話やメールをくれたひともいた。

しかし実際に「うちでやらんかね」というマジもんのスカウティングはなかった。あのときの敗北の味は忘れられない。

一年後にその『最高のナンバー』はロッキング・オンのコンテストで優勝ソングになった。

すると面白いことに8社ほどマジの誘いが来た。一年前、断った会社だらけだった。当時は「え…大人って自分の耳で判断してへんの?」と思った。

同じ曲、同じ内容、変わらないクオリティなのに権威が付帯されると手のひらが返ることにちょっと引いていた。これがいわゆる『錯覚資産』なのだろう。

今は分かる。
世間というものは「自分」なんて小さなものを一生懸命見ない。というか分からない。価値があるか無いかなんて、たしかに分からなさすぎる。

それならば何かしらブランドが付いているものを基準に考えるようになるのは普通だ。

だから賢いひとは「ひとまず優勝しよ」とか「ひとまずフォロワー増やそ」とか考えたほうがいいのかもしれない。本質的なことなんてその後でいいのだろう。

少し寂しい気もするが寂しがってもいられない。

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