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新規事業と人材育成

大企業の新規事業開発をご一緒する中で「新規事業を経験してから、日常業務への向き合い方が変わった」とお伺いすることが多くあります。

ご本人からお伺いすることもありますし、その上長からお伺いすることもあります。

また、新規事業に関する研修/ワークショップでも、視野・視座・視点の変化を実感されたことがあるのではないでしょうか?

実感は多くの方がお持ちだと思いますが、そのメカニズム(というほどではないにしても、つながり)をまとめてみたのが今回の記事です。

同じことを経験するにしても、メカニズムを意識しているかどうかで得られることは変わります。

新規事業開発に携わる方、興味をお持ちの方はもちろん、企業で人事/育成に携わる方にもご覧いただければと思います。

新規事業で得られることを既存事業で活用する

新規事業で得られる主だった「知識」「スキル」「マインド」を洗い出し、既存事業での活動例をまとめてみました。

事業はどのような要素から構成されているのか(初期段階は「顧客」「課題」「解決策」、ゆくゆくリーンキャンバスの9要素など)、どのように仮説を立ててどのように検証していくのか、そういった比較的習得しやすい知識・スキルもあれば、事業全体を見るとはどういうことか?といったマインド面まで、一人のメンバーとして既存事業の業務を進める中では経験・習得しにくいことが満載です。

これらは何も新規事業でしか活用できないことではありません。既存事業の顧客が抱えている課題に改めて目を向けて、適切な解決策を幅広く考えたり、既存の解決策を提供するにしても、顧客の課題やその要因に目を向けて、適切な訴求を行ったり。

既存事業の事業計画を書くのは、管理職もしくは管理職の手前になってから、という会社も多いのではないかと思いますが、新規事業ではそれも早々に経験できます。その知識・スキルを活用して、既存事業の改善のツボを把握する。そういった活用もできます。

新規事業と日常業務の違い

新規事業と(既存事業の)日常業務を比較してみました。「日常業務」と言っても、当然個々の業務によって違いはありますのであくまで一般論ですが、新規事業は、

  • 既存事業と比べると仕事の規模は小さい

  • 既存事業と比べると守備範囲は広い

  • 既存事業と比べると仕事の自由度は高い

ということが言えます。

規模が小さいことは言わずもがなですね。
その他、企画/マーケ/セールス/開発などを少人数で推進する必要がある新規事業は守備(というのか攻撃なのか)の範囲は広く、考えるべき事柄 = 変数も多いという意味で自由度は高いと言えるでしょう。

守備範囲が広いということは学びの機会も多いということですし、自由度が高いということは充実感・やりがいが大きいということにつながります。

新規事業は企業経営の相似形

また別の対比をしてみます。今度は新規事業と企業経営の対比です。

このように整理してみると、仕事の規模は大きく違えど、「守備範囲」「自由度」に関しては同じ性格を持っているのが新規事業と企業経営です。

これらの観点だけで言えば、両者は相似形とも言えます。

先ほど「既存事業の事業計画を書くのは、管理職もしくは管理職の手前になってから、という会社も多いのではないか」と書きました。もちろん、社会人1, 2年目で既存事業の事業計画を書いてみれば、すぐにでも一定の学びは得られると思いますが、事業計画だけでなく、事業全体を考え、検証活動を行って数字に落とし込む、この「全体感」こそ意味があります

明確なソースはないのですが「優れた経営者は傍流出身者が多い」といった話があります。企業の中の傍流(非花形)部門は新規事業と同じく低予算・少人数だとすると、同じメカニズムが働いているのではないかと思います。

また、比較的短期的に経営人材を育成するため、カンパニー制もしくはホールディングス化を通じて代表経験を積ませるアプローチがありますが、それは得てして縦割り化を進めてしまい、中長期的な経営人材育成の阻害要素になるのではないかと考えています。そういった場合に新規事業経験を狙って積ませることは、この阻害要素の解消にもつながると考えています。

新規事業経験者比率に狙いを定める

新規事業開発を進めるにあたって、事業成果を見据えながら人材育成に力を入れている企業が多いと思います。その際、単純な人数ではなく、全社における比率を意識していただければと思います。

先述の通り、新規事業は日常業務とは異なる学びが多くあり、それは日常業務にも活用できますが、そういった経験をしている人が少ないうちは、既存事業の論理に押されてしまいがちです。

やや定性的ですが、全社員の2.5%が新規事業を経験すると、日常業務でもちらほら変化が見え始めます。イノベーター理論を参考にすると、次の閾値は合計16%(2.0+13.5%)と高い山になりますが、必ずしも純粋な「新規事業経験者」でなくとも構わない、というのが持論です。研修/ワークショップへの参加なども含めた「関係人口」が増えていけば、社内の取り組みが変わります。社内変革を考える上では把握しておきたい数字です。

新規事業で得られたことを既存事業にも活かし、人材育成として機能させることで、既存事業にも好影響があるのはもちろん、新規事業の活動も継続性が上がり、事業成果を生み出す確率も高まります。

まとめ

今回、新規事業と日常業務の関係や、企業経営との類似点などを確認しました。この関係性や、好循環が生まれるメカニズムを意識することで、みなさんの新規事業開発が加速することを願っています。

Relicでは、新規事業に取り組む上での全社的な戦略/方針策定、それに連なる制度設計はもちろん、事業開発人材育成のスキーム構築、研修/ワークショップの実行など、人材育成にも力を入れています

ご興味のある方はお気軽にご連絡くださいませ。


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