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コーネルテックMBAについて

コーネル大学が「デジタル時代のリーダー育成」を目的に、イスラエル工科大学と共にニューヨークに設立したCornell Techについて紹介します。

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17年5月より、コーネル大学がニューヨークに設立したCornell TechのMBAで、初の日本人留学生として、自身のスタートアップを立ち上げつつ産業のデジタル化について学んできました。
この1年間で、先進的な取組みや人材育成に課題意識のある官公庁・大手コンサル・大企業の人事など色々な方が視察に来られました。日本でも産学連携・スタートアップ育成の取組みが一層加速していくことを願いつつ、Cornell Techの宣伝と備忘を兼ねて、学びをまとめていこうと思います。
本投稿ではCornell Techとは何か、を紹介します。

設立の経緯

Cornell Techはコーネル大学がニューヨーク市に “Creating pioneering leaders and technologies for the digital age” を目指して立ち上げた新しいプログラムです。
設立のきっかけは、リーマンショックを契機として、ブルームバーグ前ニューヨーク市長が金融に頼った産業構造は危険だと考え、Stanford / MITのような新しいイノベーションを起こすエコシステムをニューヨークにも設立しようと考えたことが始まりです。

複数のトップスクールからオファーがある中、最終的にコーネル大学とイスラエル工科大学のチームが選ばれました。2014年よりマンハッタンのgoogleのオフィスの一角を借りてプログラムが開始、2017年8月にルーズベルト島の新キャンパスが完成し、移行しました。

狙いと取組み

Cornell Techは、デジタル時代でリーダとなる人材の育成と新たなテクノロジーの創出を目指しています。イノベーションを生み出すため、7つの学科に多様なバックグラウンド・国籍を持つ学生が集められています。学生たちは、自然と交流を促進するようオープンに設計されたキャンパス、キャンパス内にある寮、学科を跨いだチームで数ヶ月間をかけてプロダクトを0から作る “Studio” カリキュラムを通じて密接につながれています。

The campus was purpose-built for the digital age to encourage innovation and promote creative collisions.

このStudioは秋学期のProduct Studioと春学期のStartup Studioの2回に分かれています。Product Studioでは様々な企業から100を超える課題をもらい、MBA・エンジニア・データサイエンティスト・デザイナーがチームを組んで、それを解決するためのプロダクトを開発します。例えば、

- How might we utilize commuters to enhance Amazon Deliveries?
- How might we create a program to ease people into trusting self-driving cars?
- How might we use data science to improve the operations at New York airports?

など、その領域は多岐に渡ります。一方、春学期のStartup Studioでは、学生達が起業のアイディアを出すStartup Idea(1人ノルマ100アイディア)の授業を通じて同じ領域に興味を持つ生徒が集まり、自分達で課題を設定するところから始めて、プロダクトの構築とSpin-offを目指します。(結果はこちら

MBA以外の学科はテクノロジーに関わる領域がメインです。

- Johnson Cornell Tech MBA
- Master in Computer Science
- Master in Operations Research and Information Engineering
- Master in Electrical and Computer Engineering
- Master of Laws
- Technion-Cornell Dual Master’s Degrees in Connective Media
- Technion-Cornell Dual Master’s Degrees in Health Tech

さらに、デザインの重要性を踏まえ、Studioにはパーソンズ美術大学(Parsons School of Design) からデザイナーが参加。ちなみに私の入学面接でも「デザイン・アート・テクノロジー」をお題にプレゼンさせられました。

また、よく「テックというと理系ですか?」と聞かれるのですが、私は経済学部卒のど文系です。MBAには非エンジニアの生徒も多く、「先進的なテクノロジーの作り方」ではなく、「いかにテクノロジーを使ってビジネスにイノベーションを作るか」を学ぶという位置付けです。
(コーディングの基礎は必修授業で学ぶのですが、エンジニアがいかに大変かを垣間見ることができます。)

プログラムの特徴:新しいMBA

数年前まではMBAというと、教授が話す「講義中心」か生徒を含めたディスカッションによる「ケース中心」の2分類だったと思うのですが、近年ではEdTechの普及やビジネスの変化スピードの加速を背景に、MBAは実践の場にならなければいけないと言われてきています。その中で、コーネルテックは取組みの好例として頻繁に参照されています。

I think Cornell tech campus which is on an island right off of Manhattan, not only is it a beautiful campus, but as you said they’re bringing students and faculty from different schools together. They’re also bringing companies so that students and faculty can embed themselves in the work of those companies so, you’re learning as you’re doing. I think that is a remarkable experiment that they’re running, that I think is going to pay dividends for generations to come.
- Scott DeRue (Dean of University of Michigan’s Ross School of Business)

MIT、HBSなどのMBAに行った同期と話すと、大半の生徒の卒業後の進路希望は投資銀行かコンサルだといいます。一方、コーネルテックの学生は大半が起業志望、残りもAmazon, Apple, GoogleなどTech系の大企業かスタートアップへの就職を志望しています。もちろん通常のMBAの授業 (Strategy, Marketing, Finance, etc..) も色々と受けるのですが、自然と入ってくる情報もマインドセットも変わってきます。

仮にあなたがMBAの受験を考えていて、IBやコンサルには興味がなく、スタートアップを立ち上げたい、あるいは大企業にいても、様々な業界をTech企業が根本から変えていく中で、会社の今のビジネスをテクノロジーで変革していきたいと考えているようであれば、ぜひ検討して頂きたいと思います。

良い点

良い点をつらつらと列挙しておきます。

1) 1年制MBAなので、生活費の負担が低い・業務経験に影響しない
2) 通常のMBAと同じ授業を受けつつも、エンジニアやデータサイエンティストと協業し、プロダクトを0から立上げる経験を繰り返し習熟できる
3) ニューヨークという最高の立地。起業家やVCが頻繁に訪れて講義やアイディアへのフィードバックをくれて、刺激が多い(遊び場も多い)
4) 夏学期(5月〜8月)はIthacaというど田舎にあるコーネル大学の本校で2年制MBAにおける1年生の授業を集中的に受けて、秋・春学期(9月〜5月)はニューヨークのテックキャンパスに移るため、アメリカの色々な側面を体験できる
5) 今のところ、比較的小規模のプログラムなので生徒間の距離が近い上に、他のMBAと違って全然日本人がいないので色々と勉強になる

26階建の寮の屋上。BBQやビリヤード台があり、人が集まる

まとめ

広くて綺麗なキャンパスなので、ニューヨークにお越しの際はぜひ見学を。良いコンセプトなので、卒業したら日本にもこういうエコシステムを作っていきたいです。

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