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人類にプログラムされた生存に必要な感情の存在

 知識が多様な社会に生きる個人は、どのような状態になるのでしょうか。(略)矛盾する情報のなかで、じぶんのスタンスを決めねばなりません。そして、いったん決めたスタンスもその後の情報にもとづいて変更するという、柔軟性の発揮ももとめられます。信じていることも、ときには疑ってチェックしなくてはならないのです。(略)こうした態度は、懐疑心とか、批判的思考(クリティカル・シンキング)とかと呼ばれます。これらは、進化の過程で人間に備わっていないので、教育で教え込まなくてはなりません。読み書きそろばんに加え、現代の情報社会でとくに重要な技能となっています。

石川幹人『人は感情によって進化した』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年)




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今回はこの本。前回読んだ『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、お金の生み出し方』で感情についての記述があり、それをフックに「感情」というテーマが気になったので読んでみた。(前回の記事はこちら

さらに、今回は読み方についても少し今までとは違う読書の仕方をしたというか、読書についての捉え方を少し変えて本と向き合ってみた。

これに関しては以下の記事を見ていただきたい。

上記の記事をChatGPTに要約してもらうと、こんな感じ。

ChatGPT

僕が説明したいことや意図とは違うので、補足を加えると、

・ビジネス本に関する読書は「たくさんのビジネス書を早く読んで身につけて、仕事に活かす」のが目的だから、それが果たせれば良い
・最初から最後まで1文ずつ読む必要はない
・読書は「調べるもの」という意識を持つ
・辞書を引くのと同じ感覚で読書を捉える
・本の中の8割のエッセンスがとれれば十分
・1冊から2〜3個程度の何かを得られればラッキー

で、これらをクリアするためにどのように本を読めばいいかも書かれていて、今回はその方法で読んでみるというのを裏テーマに設けて実践してみた。




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まず本を読み始める前に、目次と著者欄を熟読して、この本に関しての情報をネットで検索して、レビューを読み漁り、著者がどのようなことを言いたいのだろうかを想像し、自分なりに仮説を立てた。

【仮説1】現代において、アンガーマネジメントを筆頭に「怒る」などの感情が悪いことのように捉えられているが、進化心理学の観点から見ると、感情は生存に必要なものであったのではないか。

【仮説2】「理性 ↔︎ 感情」でも「理性 > 感情」でもないし、感情は必要なものなのではないか。

そして、この本から何を調べるのか、自分が知りたいことや気になることを2つ書き出す。

1、感情はいつどんなときに役に立つのか
2、現代における感情の必要性

ここでようやく本を手に取り、30分という時間を定めて、読書というか調べ物を開始。こうして「何を調べるのか」という意識を持っておくと、これに関しての答えを勝手に脳が探してくれるようになり、ピンポイントで答えに辿り着けているような感覚があった。

以下、1と2に対して見つかった答えをまとめる。(読み飛ばしていただいて構わない。)

1、感情は人類が生き延びるのに必要だった。

・感情は考える範囲を絞り、思考の方向性をつけるのに役立っている
・「うれしい」という感情は、ホルモンの分泌を伴い、脳の学習促進を促すことから、こうした感情をもつ生物が生き抜けるとされ、こうした感情をもつ子孫が増えた
・「怒り」という感情がなければ、協力集団を維持するのが難しい
・肯定的な感情は集団の協力を促進する
・「苦しい」「悲しい」などの感情は生息環境の悪化など、厳しい環境に陥ったときに現状の厳しさを認識し、致命的な状況から脱するために早めの行動を取らせるのに役立った


2、「まず疑ってかかれ、信じずに吟味せよ」

・将来の変化に備え、多様な考え方や矛盾する知識を集団で維持しておく必要がある
・矛盾する情報の中で、“一旦”自分のスタンスを決め、その後の情報に基づいて変更する柔軟性も必要
・幸福は相対的であり、幸福がずっと続くというのはそもそもない

他にも「好奇心」について面白い記述があったのでまとめてみた。

 生き抜いていくという意味で強い集団を築くには、集団の中に一定の割合で好奇心旺盛な人が必要である。なぜなら、環境の変化に対応していける集団になるからだ。今だに好奇心というものが人類に残っているということは、人類の生存に必要だったと考えられる。しかし、個人としての側面からすると、好奇心により挑戦したり未知の世界に足を踏み入れるというのは危険な行為であり、生存には不利である。個人としては好奇心を持たず、挑戦しない方が生存率を高めるので、タダ乗りをした方がいいというのが賢い戦略。これらのことを鑑みるとつまり、人類は好奇心を持った誰かが危険やリスクを冒して挑戦してきたからこそ生き残ることができたと言える。

そして最後に、この本から僕は何を得たのか。何を思い、何を考えたのか。(これがいちばん大事)




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本書において「感情」というキーワードは、言葉として明確な定義はなく、一般的に多くの人が想像し共通認識として持っているものを示し、広い意味を持たせたまま使われていた。

僕は本書を手に取る前は、「感情」という言葉を聞くと、どちらかというと少しネガティブな印象を持っていた。なぜなら、感情が先走って起こった行動に対して、少し幼稚だなと感じるからだ。不倫やら犯罪やらは、様々な環境要因があれど、感情をコントロールできないから起きてしまうのだし。

加えて、「感情」には「うれしい」も「悲しい」も「寂しい」も様々なものがあるのだが、「感情」と聞いて僕の頭の中にい真っ先に浮かぶのは「怒り」というか「人が怒っている姿」だった。というのもあり、やはり「感情」に関してポジティブなイメージはそこまで持てていなかった。

しかし、感情というのは生存に必要不可欠なもので、「怒り」という感情ですら社会の秩序を守り、集団の協力を促進する働きがあると知り、僕が思っているほど悪いものではないというか、むしろポジティブなものなのだなと思えるようになった。

僕の頭の中にはいつのまにか感情は理性の対極にある存在として出来上がり、アンガーマネジメントを筆頭にあたかも「感情 < 理性」の構図が完成していたのかもしれない。だから、特に「怒り」という感情について僕の学びは多かったのだろう。

ドイツで生活するようになってサッカーをするようになって、ドイツ人の影響を多分に受けながら過ごしていて、感情の重要性を至るところで感じることが多い。それと重なったこともあり、本書の内容は響くものであった。

「感情」は良いも悪いもあるが、様々な観点から必要なものであることは間違いなくて、それとどのように付き合って上手に自分の人生に活用していけばいいのかをこれから考えながら過ごしていこうと思う。




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裏テーマであった読書の仕方について。

ピンポイントで調べ物のように答えに辿り着ける感覚はあり、少し手応えはあった。普段なら最初から最後まで全部読んでいただろうから、5倍以上の時間が必要だっただろう。あくまで目的は「たくさんのビジネス書を早く読んで身につけて、仕事に活かす」で、生産性や効率を考えても素晴らしく、参考になった。仕事に限らず、同じような目的で本を読む場合は今回の読書方法で調べ物として本を機能させていきたい。

一方で、僕にはゆっくり本をじっくり読みたい(楽しみたい)という気持ちもある。その読み方に一定の価値があるとも思っている。なぜなら、答えに辿り着きたいのであれば、本ではなくGoogle検索やChatGPTのような答えを教えてくれるAIに聞けばいいからだ。その方がよっぽど早く適切な答えを教えてくれる。

僕が本に求めているのはきっとそうでないことの方が多い。答えよりもむしろ思考のプロセスだったり、そこに至るまでの過程だったり、本に向き合う時間そのものだったり、文章を読解する力を鍛えることだったりにある。そうでなければ、浅はかなテクニックのような知識ばかりが身について、チープな人間になってしまいそうな気がするから。そう思うと、最初から最後まで本を読むこともきっと今の僕には必要なのだろう。

目的が変われば手段が変わって当然で、読書に求めるものが変われば本の読み方も変わる。大事なのは今回、こういう読み方があると知れたことと、こうして新しい読み方をチャレンジしてみたこと。

これからもたくさんの本に出会うと思うが、その都度、目的を考えたり、純粋に読書を楽しんだりしながら、本と自分と向き合っていこうと思う。

ではまた。



かくいたくや
1999年生まれ。東京都出身。大学を中退後、20歳で渡独するもコロナで帰国。鎌倉インターナショナルFCでプレー後、23歳で再び渡独。渡独直後のクラウドファンディングで106人から70万円近くの支援を集め、現在はサッカー選手としてプロを目指しドイツ5部でプレー。好きなテレビ番組は『家、ついて行ってイイですか?』『探偵!ナイトスクープ』

文章の向上を目指し、書籍の購入や体験への投資に充てたいです。宜しくお願いします。