見出し画像

「楽しむ」ということ - 岡倉天心著「茶の本」を読んで

はじめに

このnoteは岡倉天心が書いた『茶の本』という本を読んで感じたことが書いてあります。

この本は、1906年に岡倉天心によって書かれた本です。
ジャポニズムの盛り上がりや、当時列強と言われていたロシア帝国を日露戦争で撃破したことなどがあり欧米は、「日本人」という新しく台頭してきた存在に興味を持ったようです。そこで、語学が堪能で美術に対して造詣が深い著者(岡倉天心)はこの本で茶道の価値観に基づいた美意識や文化を欧米に対して紹介しました。
日本語ではなく英語で書かれ、出版も日本ではなくアメリカで行われた本です。


不完全であることを楽しむ

茶道の価値観に「不完全なものを楽しむ」というものがあるらしいです。
それは人の一生の予測できなさから来ており、「そういうものなんだから歪だったりするのも当たり前だよね」というとても前向きな考え方だと思いました。

自分の人生を理路整然と語れるようにしてみようとしたり、自分の将来が順風満帆だと思うための準備に今を使いすぎたりしてはいないか?
という事を日本人はすごく昔から考えていたみたいです。

よくよく考えてみると、世の中には完全なものが少ないように感じます。
高層ビル自体は何十年もそこに在りますが、その中のテナントだったり設備だったり人間だったりは常に入れ替わっていきます。
人間も、たとえば半年前と今を比べると身長が伸びたり太ったり考えが変わっていたりします。
そんな、ある意味自分の外にも中にも完全なものが少ない世界だからこそ、「不完全であること」を受け入れて楽しむことが人生の豊かさに繋がるのかもしれません。

主体的に楽しむ

茶会というものは即興劇の側面があったそうです。
ざっくり説明するならば、
主人(主催者)が
茶室(劇場)を構え
客人(配役)を決め
美術品(大道具・小道具)を決める
からです。

この仕組みは主人(主催者)が一番楽しいような気がしています。
なぜなら、この茶会(劇)のほとんど全てのタイミングを主人が決めれるからです。
もちろん、茶会自体が楽しかったり、意味がある茶会にするために主人がやるべきことは多いのですが、それは「主人」という言葉が背負う責任だったり役割なのだと思います。
(もちろん楽しさや意味を求めないこともまた楽しさであり意味なんだと思います!)

人生はいつどうなるか本当にわからない。
だからこそ今を主体的に楽しむことがウェルビーイング、より人間らしい生き方に繋がるのかもしれません。

変化していくことを楽しむ

茶席の時の創意工夫のひとつに「夏の暑い日は花入に付いた水滴は拭かないよう」というものがあります。
花入に付いた水滴が滴る様子を見ることで涼を感じることができるからだそうです。

人間の人生は何が起こるかわからない割にとても長かったりもします。
その長い人生を、早い段階から完全なものに近づけしまった場合、残された時間をいったい何に使えばいいのかわからなくなってしまいそうです。

もちろん、『やることなんてたくさんある!』という意見ももっともなのですが、「やること」にも「自分を主体的に変化させること」と「世界の変化を受動的に受け取ること」があると思います。
なんとなくそのバランスが大事なように感じています。

「自分を主体的に変化させること」ばかりだと自分が不調や老いによって意図した変化を感じれないと落ち込んでしまうし、かといって「世界の変化を受動的に受けとること」ばかりだとふと自分が歩んできた人生を振り返った時に『この選択は果たして自分のものだったのだろうか?』となってしまうような気がします。
だからこそ、この二つのバランスを取り、自分が変化をしたり世界の変化を受け入れたりして楽しんでいくことが大事なように思います。

まとめのようなもの

以上が僕が岡倉天心著の『茶の本』を読んで感じたことになります。
この本は、欧米の人に「茶道とはなんぞや」みたいなことを説明しつつ「だから日本人はこんな感じなんやで」みたいなことを説明するような内容になっているように感じました。

最近、改めて「自分が何を美しく思うか?」みたいなことを考えていたので、それに対しての大きな道しるべになったように思います。
ハイコンテクストと言えばハイコンテクストなのですが、このハイコンテクストさが逆に受け止め甲斐みたいなものに繋がると言うか、それが基礎にある文化で育ってきたことを今更受け入れないなんてできないのかもしれないなと思いました。

小堀遠州より、利休より、古田織部のようにひょうひょうと生きていけたらなと思います。

おわりに

この本と出会うきっかけをくれた写真家のmanimanium、ありがとう!
すごくステキな写真を撮る人なのでよかったら彼女のことを知ってください。
彼女はまさしく4章に書いてあることを本質的に実践している人だなと思います。

この記事が参加している募集

読書感想文

大阪で音楽関係の仕事をしています。 アニメや漫画、TVゲームからボードゲームまで広く遊びが好きです。