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ランナーの発汗と冷え(汗冷え)対策

寒いこの時期に汗!?と思うかもしれませんが、意外と冬も汗に悩むランナーは多くいます。
夏であれば汗による脱水や塩分喪失が問題になります。ですが冬の場合は、汗をかいた体が風で冷やされておこる「汗冷え」が問題となります。
ではどうやって対応したらよいのでしょうか。

1. 汗冷えするわけ

1-1.風が強くて天気の良い日に

基本的に一定の温度・湿度の条件下で同じ方向に定速で走っていれば、汗冷えすることはありません(終盤失速しなければですが)。暑くて汗をかき続けるか、寒くて汗なんてかかずに走り続けるか、快適に走り続けるか、そんなところだと思います。
ではなぜ汗冷えするのでしょうか。

それは「暑くて汗をかく区間」と、「寒くて汗で冷えてしまう区間」があるからです。そんな状況を生じるのは、晴れていて風の強い日です。

追い風のときは、風1mにつき体感温度が1度上がります。逆に向い風のときは、風1mにつき体感温度が1度下がります。また、正面から日差しを受けると体感温度が3-5度上がります。逆に日陰や背後からの日差しの場合はほとんど体感温度が上がりません。そんな環境の違いで大きな温度差ができて、(汗をかく)→(冷える)という汗冷えが生じるのです。

特に冬はだいたい北風です。たとえばレースにおいて風速3mの北風が吹いていた場合(この季節の普通の風です)を考えてみます。
南に向かって走っていくと、追い風3mと正面から受ける日差しの影響で体感温度は+7度程度になります。
そして折り返して北に向かって走っていくと、向い風3mと背後から受ける日差しの影響で-2度程度になります。
結果、9度の温度差ができて、汗をかいたあと急激に冷やされてしまうのです。

1-2.終盤失速して汗冷え

もちろん風だけではありません。冬の寒い中失速すると、運動による熱産生が低下、一気に体が冷えます。特に発汗していて向い風が吹いていれば、体は急速に冷えます。
向い風区間では限界まで走って失速するのではなく、限界が近づいてきたら余裕をもって減速しないといけません。

2.対策は・・・

2-1.ウェアや防寒対策

一番一般的なのは、速乾性のウェアです。かいた汗を速やかに吸収してくれて、ウェアから蒸発してくれる分には体は冷えません。それでも体にフィットしすぎると、体も冷えてしまうので、その人その人に合ったものを選びましょう。
実は「どんなウェアがおすすめか?」について自分は詳しくありません。ですので専門店で相談されるのがよいと思います。

また体の一部分であればワセリンが効果的です。お腹が冷えて痛くなるとか、耳が冷えて霜焼けになるなどであれば、保温目的でその部位にワセリンを塗ると冷えから守れます。

2-2.多汗に対する薬剤(内服)

ウェアやワセリンでは対応できないほど発汗するので、いい薬はないの?という質問も受けます。多汗症という病気であれば、プロ・バンサインという薬が保険適応されています。ですが病院の皮膚科にいかないといけませんし、しっかりと診断・処方してくれる医療機関は多くありません。

そこで同効薬を試したいというのであれば、ブスコパンA錠をおすすめします。街中の薬局やAmazonで購入できます。腸蠕動を抑える効果もあるので、レース中にお腹がゆるくなる方は向いているかもしれません。ただ、心拍数増加の副作用がありますので、心疾患をお持ちの方は控えて下さい。また、前立腺肥大症のある方や緑内障のある方は、病状が悪化する危険があります

また、漢方薬では発汗過多に対して、防已黄耆湯という薬剤を用いることが多いです。ですがこの漢方は主に、疲れやすい肥満タイプの方に用います。ランニングをするような瘦せ型で体力ある方は、白虎加人参湯があっていると思います。

2-3.多汗に対する薬剤(外用)

一般的な制汗剤にも、汗冷えを予防する効果が期待できます。その一般的な制汗剤の成分で文献的に有用とされているのが塩化アルミニウムです。汗腺に働きかけて発汗を抑える効果がありますが、長期連用により認知症や発がんのリスクが危惧されています。なので頻回の利用は避けましょう。

最近では、乳酸アルミニウムが塩化アルミニウムより効果が高いという研究があり、さらに効果の高いものの流通が期待されます。

3.自分の場合は・・・

実はそういう自分も汗かきです。ですから風が強い晴れた日のレースではしっかり対策はしています。
それは「コースを覚えて風向きを読んで、向い風になる直前にアームウォーマーと手袋をして汗を拭く」というものです。また「正面からの日差しの時は、帽子で顔への直射をさえぎる」も有効です。これでだいぶ違います。

風の強い日は寒いレースと捉えられがちですが、そうではありません。寒暖の差が激しくなるのです。
そんな日のレースは、
 ①温度調節がしやすい服装にする。
 ②向い風区間になる前に汗を拭きとる。
 ③日差しをさえぎるものを準備する。

を心掛けましょう。

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