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【584/1096】桜

桜の季節
もりもりと花咲く姿もいいし
風に揺られ花びらが散るのもいい
花びらを失った額の
色の濃さを愛でるのもいい
初夏を思わせる葉桜も
風にそよぐ姿が美しい
春はいい季節
これからよいことがはじまるような
気持ちにさせてくれる

そんな季節にきみはいなくなった
芽吹き時 節目時 変わり時
身体も心もついてゆけず
すべてがピークに達したのだろうか

きみがいなくなって
世の中の爽やかさに救われたよ
これが冬へ向かう季節なら
もっと苦しんだかもしれない
そう思った
実際は冬の美しさに
救われたかもしれないけどね

なるべく深く悲しみに沈まぬよう
必死だった日々を思う
文字通り死んだように生きてきて
今がある
悲しみの直後の自分の
あのやるせなさを思う
どんなに辛く悲しく無力だとしても
生きていればなにかある
なにか変わることもあるし
追い打ちをかけられることもあるし
嬉しいこともあって
こころは揺らぐことが自然なんだと
今になってしみる

落ち込んだり暗い気持ちのときは
苦しいけれど
それは本当に自然なことで
揺らぐことは当然だから
波に揺られ抗わず
流されていったらいい
あらがえば力尽きてしまう
流されちゃえばいいのだ
ときがたってふり返って
いまはそう思える

ある程度の時間が過ぎてみないと
わからない
年単位でひと回りする時間
弔いの法要が定期的にあることは
理にかなっているのだろう
1日が長く感じ
時間がすぎることに
なんの感情も持てないとしても
それはそれでいい 

疲れたときは休んでください
専門家もよう言うように
休めばいい
きみのことも
休ませてあげたらよかった
今さら遅く 気づいて鉛をまた
飲み込むような気持ちになる

季節はめぐる
自分たちの心持ちとは別の
時間が流れていくことが
ありがたく感じる
心配しなくてもいつか自分も消える
きみのところへ行けるはず
その日まで
また春を迎えていこう
桜に何度も会おう

桜って毎年見ているはずなのに
咲くとなんであんなに
嬉しいのだろうね

いつもありがとう
残された者の日々