2022年のロックンロール・スウィンドル

最近自伝を出したスティーヴ・ジョーンズ視点の、セックス・ピストルズの伝記映画。

ピストルズは、初めてその音を聴いて、
ライヴ映像を観た瞬間から、未だに街中で、
小さな音で、"submittion"かなんかが流れてるだけで、いきなり空が割れて、1977年の雰囲気が半強制的に時空が歪んだみたいに入り込んできて、2022年の初秋の空気を、ひとしきり引っ掻き回して、台風より速く立ち去るとこは、マジで時を越えてる。

何度となく、ジョンライドン自身のインタビューやら自伝やらも読んでみたりするんだけども、クリストーマスがミックスした確信犯的にクリアな音が爆発的に鳴った瞬間、何もかもどうでも良くなる。

選曲やら、ちょっとした記事や、サブリミナル的にインサートされるガチのライヴ映像やらの映像そのものまで、いち素材として、ストーリーの中にサンプリングして当時の雰囲気を表象しようと試みたダニーボイル監督ならではの、"粋"が、約5時間あまり、ストーリーや場面のあちこちで炸裂していた故、今回は六話のエピソードに分かれてたんだけど、あっという間に全話一気観。

マルコムとヴィヴィアンウェストウッドや、スティーヴと、クリッシーハインドの、オフステージの、なんちゃない会話とか、
ナンシーが別れる最後にクリッシーだけにボロっと言葉にする本音とか、キャストの演技は、素晴らしくリアルだった。

後付けで、ああでもない、こうでもない、なんて、作った本人が完成した瞬間からウケない言い訳を押し付けてくるみたいな作品に時間とられてるほど暇じゃなくなってきたこの3年ばかしだけど、パンデミックやらコロナ禍やら、人為的な"まやかし"に限りなく近い"swindle"に振り回されてる今なお、
グッサリ刺さってくる。この瞬間最大風速的なパワーが内包された音は、この先出てくるのだろうか。

世相が騒がしく、抑圧的になった前後は、
それをひっくり返して燃やし尽くしてしまうほど、革新的な音やスタイルが出てくるものだけど、今はまだ、それが目に見えて自分の生活圏の半径10m以内に実感できないだけだと想う。

冒頭にも書いたが、全く関係ない日常の中に、そのヒントめいたことが閃く瞬間がある。それを捕まえて形にする意思の力が
その時俺には残ってるだろうか。

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