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こないだ93年の人生の幕を閉じた親戚のはなし

「おばちゃんが亡くなりました。」

母からのライン。メッセージはこれだけ。

その日は友人の結婚式。3次会解散後、幸せの余韻に浸りながら帰りの電車に乗っている時だった。

おばちゃんは93歳、母方の祖母の姉。
5年くらい前から施設に入っていた。認知症もだいぶ進んでいたらしい。3年前に母が面会に行った時は20代の母の結婚を祝福し、昨年会いに行くと赤の他人になっていたそうだ。

もうしばらく会ってなかったし、祖母の姉弟はおばちゃん以外皆亡くなっていたので、特に大きく落ち込むこともなくあっさり「死」を受け入れることができた。

淡々と時間が過ぎ、気が付けば祖母の葬式以来のお経を聞いていた。

おばちゃんは祖母と仲が良く頻繁にうちに泊まりにきていた。私の記憶では、いつも柄物の洋服を着て、アクセサリーを付けて、口紅をつけていたおばちゃん。おおざっぱな祖母とは違いコットンで化粧水をつけていたおばちゃん。

小学生の私が強制開催する「おりがみ教室」に参加してくれたなぁ。

甘えて一緒の布団で寝させてもらったこともあったなぁ。

お経とは不思議なもので、今まであまり思い出せなかったことがぽろぽろ出でくる。

おばちゃんは未亡人だった。若いころに未婚のまま旦那さんを亡くし、生涯ひとりを貫いてきた。自分で商売をしてお金を稼ぎ、立派な一軒家に住んでいた。

自分が老いたときのために、まわりに迷惑を掛けないようにと施設やお葬式のための貯金もしていたらしい。事実、最後の5年間はすごく立派な施設で悠々自適に生活していたそうだ。

おばちゃん、めっちゃかっこいいな。

改めておばちゃんの人生について考えてみて、そう思った。今では結婚しない人生は十分選択肢に入るし、女性の社会進出のハードルは下がっているけれど、おばちゃんの時代はどうだったんだろうか…。私には到底真似できそうにない。

優しい笑顔で遊んでくれたおばちゃん。わたしにはその一面しか見せていなかったけど、ひとりの女性としてどんな性格・どんな価値観だったのか今さら気になってしょうがない。また会いたいな。

棺の中のおばちゃんは93歳とは思えないくらい肌がきれいだった。親戚みんな「きれいだね」って言ってた。花がよく似合って素敵だった。

姉弟全員揃ったことだし、いまごろ天国で姉弟会でもやっているんだろうな。穏やかな気持ちになった。

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