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パンをかつぐ少女たち

小6娘と夕飯の買い出しをしにスーパーへ行ったら、娘の友だちのあっちゃんと、そのお母さんに会った。友だちと遭遇してお互いニヤニヤが止まらない。

「なにかうの~?」
「ごはんなに?」
「あ、みて。いちごのカルピスあるよ」
「買って~!!」
「うちもほしー」
「ね、おかし買っていい?」
「わたしこれ好きー」

とりとめの無い会話。平和だ。なにこの空間。ゆる~い。たのし~い。
娘とあっちゃんは、一緒にミニバスケットボールを頑張ってきた仲間だ。6年生最後の大会に向けてピリピリと緊張感が漂う日々だったから、全てが終わった今、めちゃくちゃ気が抜けている。

お互い買うものが違うので途中で別れたが、レジでまた一緒になった。

「あー、そのお菓子やすかったよね」
「うちも3個買った」
「やっぱあの値段お得だよね~」

会計を済ませてエコバッグに商品をつめていると、3斤サイズの長い食パンが入りきらなかったので、娘に持ってもらうことにした。

「わー!そのパンでっかい!」

あっちゃんが無邪気に言うと、なぜか2人で持ち始め、最終的に食パンは少女たちの手によってワッショイワッショイとお神輿のように担ぎ上げられた。

「なにあれ」
「かわいい」

あっちゃんのお母さんと言い合っていたら、私はつい思ったことをそのまま口に出してしまった。

「……あんな風にかつがれて、あのパンは幸せだねぇ」

あ、まずい。かなり突拍子も無い事を言ってしまった。ちょっと恥ずかしい。

私の心配をよそに、あっちゃんのお母さんは「……たしかに。」と頷いた。てっきり「何言ってんのー!」とツッコまれると思っていたので、意外だった。

「パンがあんなに、よいしょされる事ないもんね」
「明日の朝に食べられる運命だしね」
「ほんとそれ」
「あのパンはしあわせものだ」
「しあわせものだねぇ」

そのうち笑いが込み上げてきて、笑ってしまった。そしてパンをかつぐ少女たちの後ろ姿をしみじみ眺めた。
子どもと大人の中間にいる、小学6年生の女の子たち。お互いスポーツを通じて切磋琢磨した仲間で、複雑な感情がぶつかり合った友だち。そんな2人が目の前で楽しそうに笑っている。少し前まであんなにピリピリしていたのが嘘みたいだった。

ずっと笑っていて欲しいな。
そう思ったら、なぜか少しだけ泣きたくなった。

ずっと笑っているなんて、無理なのは分かっているけれど。中学生になっても、高校生になっても、大人になっても。あんな風に誰かとふざけて、笑いあえたらいい。

次にやってくる新しい世界が、どうか楽しいものでありますように。

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