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【税金Q&A】海外に居住する親族も、扶養控除の対象

<質問>アメリカ留学中の長男も扶養控除の対象ですか?

<答え>

 国外に居住する親族(国外居住親族)も生活費等の仕送りをしていれば、扶養控除の対象となります。
 ただし、2023年分以後の所得税の計算において、国外居住親族が年齢30歳以上70歳未満である場合は、
 1.留学生(留学により非居住者となった者)
 2.障害者
 3.年38万円以上の仕送りを受けている人
についてのみ、扶養控除が適用されることに改正されています。

 これに伴い、1.留学生または、3.生活費の仕送り要件で扶養控除等を受ける場合、その確認ができる書類の提出または提示が必要となります。

 具体的には、1.留学生については、「外国政府または外国の地方公共団体が発行した留学ビザ等に相当する書類」を、3.仕送り要件については、「送金額等が年38万円以上であることを明らかにする送金関係書類」を年末調整または確定申告において提出または提示します。


◆ 所得税の計算のあらまし 

 所得税額は、収入金額から「必要経費」を差し引いて「所得」を計算し、その「所得」から「所得控除」を差し引くことで課税対象となる所得金額を計算します。
 このうち必要経費はビジネスにおいて収入を得るために必要となる経費、所得控除は「生活面での必要経費」といえるものです。
 所得控除には、「保険料等の控除」と「人的控除」の2つがあります。
 所得控除の適用を受けることで、「控除額×自分の適用税率」に相当する金額の税額軽減効果があります。
 人的控除は自分自身、配偶者、扶養親族に対する控除の3つです。


◆ 扶養控除の対象となる人

 控除対象となる扶養親族は、「年末において納税者本人と生計を一にする
年齢16歳以上の親族で、合計所得金額48万円以下の人」です。

 「同一生計」は必ずしも同居していることが要件ではありません。
 生活の原資となる「お財布」が一緒であれば、同一生計とされます。
 たとえば単身赴任や通学、入院などの都合で別居していても、休暇になれば帰省して一緒に住む場合、生活費、病院代等の送金が行われている場合は「同一生計」として取り扱われます。

 そのため、国内で離れて暮らす親族、国外に居住する親族についても、生活費等の仕送りをしているならば扶養控除の対象となります。


◆ 「国外居住親族」の扶養控除を受ける要件

 「国外居住親族」とは、「非居住者」である親族をいいます。
 たとえば、1年以上国外に居住する親族、1年以上日本で勤務する外国人労働者の本国で暮らす親族などが該当します。

 国外居住親族について、扶養控除、配偶者控除、障害者控除の適用を受けるためには、会社の給与計算および年末調整時または確定申告時において、「親族関係書類」と「送金関係書類」を提出または提示します。これらの書類が外国語で作成されている場合は翻訳文の提出または提示も必要です。

 非居住者である親族についても、所得要件および同一生計要件は居住者である親族と同様です。そして合計所得金額は、国内源泉所得(日本国内で得た所得)でのみ判定し、原則として、海外でのアルバイト収入などの国外源泉所得は考慮に入れません。しかし多額の国外源泉所得を得ている場合は、そもそも国外居住親族を扶養していないことになりうるので注意です。

(注1)居住者 とは、国内に住所または現在まで引き続き1年以上の居所を有する個人をいいます
(注2)非居住者は、居住者以外の個人をいいます(国内に住所を有さず、かつ、現在まで引き続いて1年以上の居所も有しない人)


◆ 親族関係書類

 国外居住親族が納税者の親族であることが証明できる次の1または2のいずれかの書類をいいます。旅券を除き、原本の提出または提示が必要です。

1.戸籍の附票の写しその他の国または地方公共団体が発行した書類および国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
2.外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類で、国外居住親族の氏名、生年月日および住所または居所の記載があるもの。たとえば、戸籍謄本その他これに類する書類、出生証明書、婚姻証明書などが該当します。

 会社勤め(サラリーマン)の方は、月々の給与計算および年末調整にて、控除が適用されます。給与等の源泉徴収において、国外居住親族にかかる扶養控除、源泉控除対象配偶者の控除、障害者控除の適用を受けるためには、「扶養控除等申告書」の「非居住者である親族」欄に○印を付けたうえで、「親族関係書類」を添付して提出または提示します。


◆ 送金関係書類

 国外居住親族の生活費または教育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにする次の書類をいいます。

1.国外居住親族への送金がわかる書類(外国送金依頼書の控)
2.納税者が契約したクレジットカードの家族カードで国外居住親族が商品購入等をした利用明細書

  会社勤め(サラリーマン)の方が年末調整において、国外居住親族にかかる扶養控除、配偶者(特別)控除、障害者控除の適用を受けるためには、「扶養控除等申告書」または「配偶者控除等申告書」の「生計を一にする事実」の欄に国外居住親族に対して送金等をした金額を記載し、その申告書に「送金関係書類」を添付して提出または提示します。

 なお、国外居住親族が複数いる場合には、送金関係書類は扶養控除等を適用する国外居住親族の各人ごとに必要です。
 たとえば、海外留学中の子ども2人について扶養控除等の適用を受ける場合は、各人の別々の口座等に、必要のつど送金する必要があります。

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