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働くこと

私は短大卒業後、証券会社に就職しましたが1年目の大発会で株価暴落。バブル崩壊後の数年を証券会社で働いて得たものは、当時しんどかった時の同僚や先輩などの人脈と、その時真剣に将来を考える時間だったと思います。

その時の妄想が現在のお仕事につながっています。
いいかどうかも確証がないものを売らなくてはならないペーペーの平社員だった私は、金融のことをもっと学んでいこう、とはならず、
「自分が本当に良いと思うものを売りたい、なんなら作りたい」

「作りたい」と思ったのは私の実家が酒屋という規制緩和の中で淘汰されていった小売業を生業にしていたからだと思います。
voicyで木下さんがよくお話しされてますが、何も努力しなくても商売が右肩上がりに上手くいってましたので、親の商売をそのまま引き継ぎ、きっと戦略もないままの経営だったと思います。スーパーやドラッグストアの出店が田舎でも相次ぎ価格競争では太刀打ちできず、現在は廃業してます。その景気の良いところから沈んでいく様を近くで見るのは辛いものでしたが、今洋菓子店を営む身としてはそれも自分の大事なエッセンスだったと思います。
「同じ価格なら、安い方を選ぶ」だったら、「自分が本当に良いと思うものを作って売ろう!」単純過ぎ(笑)なのですが精一杯の結論でした。

そんなわけで、作る仕事を探していてちょうど求人募集をしていたケーキ屋さんに就職。お給料面では半分とまでは言いませんがボーナスもなく、社会保険も未加入。経済面ではかなりしんどい修行時代。でも当時個人のケーキ屋さんでは一般的で理解はしてました。足を踏み入れる前は少し躊躇したけれど、これが私の生きる道!と決めました。何かを捨てないと、入ってこないのが世の常ですね、やっぱり。

余談ですが、全くの未経験者の私をよく雇ってくれたと感謝してます。専門学校は学費が高いので、お金を頂きながら学ぶ道を選びました。今、洋菓子店を営み雇う側に立ち思うのは、やる気と考える頭があれば、未経験者でもやれることです。いつか料理人熊谷喜八さんがおっしゃてました。「親が、こいつバカだからって息子を連れてくるんだけど、バカには出来ないよ」みたいなこと。ほんとそれはその通りで、学校の勉強は出来なくてもいいんですけど、自分で考える力は必要かと思います。

先程書いた通り、何がなんでもケーキ屋さんをやりたいわけではなかったので、知識も技術も皆無、まずその出来なさ加減半端なく、自分に悔し涙を流す日々でした。
結構マイペースでゆるゆる生きてきた私が少し変わった?いや気付いた?のはこの時期だったと思います。こんなに負けず嫌いだったとは…

仕事は7時から10時過ぎ、週休1日、Xmasは徹夜の世界です。そういった足りない部分を自分の余った時間に補う余裕も全くなく帰宅後は泣くか、そのまま爆睡の毎日でした。
ただ、美味しいものを食べることにお金と時間を使うことは出来る範囲でやっていた気がします。

そんな3年の修行時代、他のケーキ屋さんで働く現在の夫と出会い、「洋菓子店を開く」ことが二人の目標となりました。

女性だから、というわけではなく、「作る」ことにおいて夫の方が明らかに才があるので、私は販売その他雑務に徹することに決めました。特にお菓子以外の部分で「店を作る」ことに注力するようになったわけですが、これがすごく自分に合っていたのです。

結婚、出産とステージが変わるごとに働き方を変えなくてはならないことも多かったのですが、私の捉え方はそのステージごとに学びたいことを決めて職業選択出来たので、これはこれで良かったと思ってます。そしてその学びが開業後にも役に立っていると実感しています。
例えば、和菓子屋さんで包装や慶事(特に熨斗についての学びは大きかった)にまつわることを学んだり、お茶屋さんでは抹茶の立て方、紅茶全般、和紅茶について学んだり、といった具合です。静岡県民ですがそれまでは緑茶についてもそんなに興味がありませんでした。このお仕事を機に地元で作られる深蒸し茶のことや全国の茶産地についても知り、深めていくことになりました。全てご縁、考えていたり、口にしていると巡ってくるものです。

そして2001年11月、洋菓子店をオープン。
修行時代のお金なさすぎ問題(苦笑)からなんとか抜け出し形になり始めても、物件探し、土地探し、近くに地元の和洋菓子チェーン店があるからと融資を渋られたり、いろんな山あり谷あり谷あり、今もそれが続いてますが、毎日は充実してます。
木下さんのおっしゃる「稼げる」にはまだまだ課題山積です。どうも夫婦揃って数字にうとく、直感で動いてきました。だから商売は面白いのだと思い部分もありますが、ここからはそれだけではいけないとも思っているところです。

私にとって働くこと

商売が本当に好きだなぁ、としみじみ思う。私は「作って、売る、商売がしたかった」のだと店を始めてから気がついた。だから夫が作り、私がその他全般を回すことがすごくしっくりきています。私の希望を聞いて一生懸命形にしてくれる夫に感謝です。
店作りが私の仕事だと自覚してから働くこと、遊び、学びの境界線があまりありません。最初から計画的にというよりなんとなく全てが商売に繋がっている。
色んな大変なことはどんなお仕事にもつきものです。それよりやっぱり洋菓子のことを考えて、ラッピングのことを考えて、季節のしつらいを考えて…そんな日々がとっても幸せなことを、書いてみて改めてて思う「働くこと」でした。


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