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情報デザインコース卒業研究制作 ✧ インタビュー第13弾 | 小林 幹太さん

みなさん、こんにちは!
多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「  」広報部門です。

今回のnoteは、卒業研究制作展参加者へのインタビュー記事の第13弾です。
これから約2週間にわたって全15名のインタビューをお届けしていきます!
彼らがどのような想いを持って今までの制作をしてきたのか、記事を通じて皆様にお届けできたらと思います。

第13弾は、「メディアとデザインゼミ」に所属する小林 幹太さんのインタビューをご紹介します。

✧ インタビュイー紹介

小林 幹太 / KANTA KOBAYASHI
多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース4年
メディアとデザインゼミ(主査:永原 康史教授)所属

── 普段は主にどんなもの、ことを制作していますか。

小林:自分は、考えとか表現したいことが先にあって、それに合わせて手法や形態を決めていくんですけど、そんな中でも卒業制作のような映像を一つの素材としたインスタレーションを制作することが多いです。今回の卒業制作展も展示空間設計の幹部をやっているんですけど、空間を作ることが結構好きですね。元々はテクノロジーを用いた映像演出に興味があって、美大に進学したので、そこはずっと一貫している気がします。

✧ 卒業研究制作作品について

── 卒業研究制作で作成した作品の紹介をお願いします。

「Reticulum」

小林:3年生ぐらいのときから、自分の中でテーマにしているポストインターネット時代における、対立する概念を考え直すということをすごく考えていました。テクノロジーや技術が発達してインターネットやバーチャルの世界と僕たちが住む現実世界の境界線がなくなってきて、そこに区別をつけることにもう意味ないよね、というシームレスになってるような時代性になってきていますよね。

 ポストインターネットという言葉が使われてから、結構もう時間は経つのですが、リアルとバーチャルの対立してた概念が、解け合ってるというところを起点に、様々な対立概念っていうのが結構フラットになってきてるという風に思っているので、そこを捉えたいというのが自分の中であり、今回の作品を制作しました。

 自分と他者という2つの対立を考え直すというのは、たとえばSNSとかで自分というアカウントを作ったときに、SNS上の自分は向こうの世界で存在しており、多分誰かしらがそれを見たりしているのですが、自分の制御の外側で自分のアカウントが存在しているような自分自身でもあるけれど、ある種他者でもあると思っているんです。Twitterであれば、リツイートやいいねでどんどん遠くにネット空間を漂っていくように、です。

 自分の制御外でどこまでもネットの世界を行けてしまうというのが、ある種自分というよりも他者のような感覚だけれども、同時に自分自身でもあるんだというような、他者と自分というものが混ざり合ってるような感覚というのを作品にしたいというのがあって、それを別のモチーフに当てはめようと制作しました。

 そして、その別のモチーフとして血液をモチーフに落とし込んでいます。
血液は自分の体の内側を動いていて、自分を生かしてくれてるものだけれど、血液のおかげで生きているという実感を普段ずっと考えながら生きてるってことはあまりないと思っています。

 血液というのもある種実体はあるけれど、結構仮想的な存在であると考えているんです。
 たとえば、怪我をして傷が起きたときに血が目に見える。内側に実体を持って存在していた血液という、ある種他者と感じるような自分の中にあるけど、他者のような感覚で、それの実体を感じるのは、出血などで痛みのようなものを伴うときだなと思っていて。

 そこにリアルバーチャルの自分と他者の関係性とすごい繋がりを感じて、血液というテーマで、その関係性を起こそうと制作したのが今回の作品です。

✴︎ きっかけ・制作を決めた経緯

── この作品を作ろうと思ったきっかけや経緯について教えてください。

小林:さっきお話しした「ポストインターネット時代における対立概念の再考」というのを以前から自分の制作テーマにしていて、卒業制作もそれを基盤に作りました。

✴︎ 制作過程

── 制作過程を教えていただけますか?

小林:ポストインターネット対立する概念を考え直すというのは3年生ぐらいの時から面白いなと思っていたことだったのでそれを軸にしたものを作りたいなというのは最初からありました 。3年の後期の作品で今回のようにディスプレイを空間的に配置してという作品を作ったのですが、それに可能性を感じたので、このテーマで何か別の作品を制作したいなという風に考えていました。

 夏前まではユートピアをテーマに、インターネットの世界のユートピア性と、それと同時に存在するディストピア性みたいなある意味理想を投影できるといった、インターネット上の偽ろうと思えば偽れるし、それでありつつ誹謗中傷とかがあるようなディストピア性も持っているという部分をテーマとしていたのですが、あまり府に落ちず悩んでいました。

 その最中にディスプレイを空間に配置する作品を考えました。人型のモチーフにディスプレイを配置といったアイデアを考えていたことがあり、過去のアイデアメモを見返して、今の作品の草案を見つけたので、今やってみたらなんかうまくできそうだなと思いました。

 まだテーマは確定していなかったので一度形にしようと思い、夏前はこんな形を作っていました。

夏前に作った作品

小林:夏以降は言語化をしていきました。自分の制作スタイルとして一度作ってみて後から結構言語化するんです。ポストインターネットっていうものを軸として考えたいっていうのはずっとあったので、これを制作の動機としていきました。

 ポストインターネットを考えたときに技術は進化しているけど、自分たちのリテラシーは進化してるのかなと思ったんです。未だにある種の危うさ、カオスを感じてリアルよりも理性が働いてないような感じがするみたいなことを考えていました。その考え方が初めて血液と結びついた感じがしたので、血液というモチーフと今のテーマについて考えていく中で作品に昇華していきました。

 血液の自分の操作できないもの、生体情報やバイタルサインなどの無意識の反射の反応といった、生体情報として自分の反応だけれど、自分では操作できない感じというのが非理性的な理性と対する非理性みたいものだな、みたいな形で夏以降は考えていました。
言語化した段階で仮想空間上での理性の在り方を問うような、理性と狂気っていう2項対立で進めていたのですが、人の生体情報そのものが欲しいなと思い、作品にインタラクションを付加しようと考えました。

 センサーがあって何人かの人がそのセンサーで映像のイメージを動かすような形にするために、センサーで映像が反応するというシステムを10月に発表して、最終審査会までの1ヶ月ぐらいで人型の什器の完成を詰めていきました。

 最終審査会を終えてから理性と狂気というテーマに対して疑問を感じて、むしろ自分と他者みたいな考えかなと思ったので、最終的に自分と他者というテーマに帰着しました。

✴︎ 制作を通して気づいたこと

── 卒業研究制作を最後まで終えて、気づいたことや感じたことはありましたか?

小林:自分の制作スタイルに気づくことができたのがよかったです。卒業制作の様な長い期間で制作する中で、作って言語化するサイクルが自分にあっているのだと気づきました。

✴︎ 今後の活動・進路について

── 今後の活動や進路などについて、何かありましたら教えてください。

小林:東京藝術大学大学院の映像研究科メディア映像専攻に進学します。

✧ あなたにとって 「爆発」とは?

── さいごに、あなたにとって爆発ビックバンと呼べるものを教えてください。

「些細なきっかけの連鎖」

小林:積み重ねてきたものにわりと些細なきっかけで起こることだと思います。
今回の作品はインターネットに元々興味を持った高校時代に初めてスマートフォンを持ったときから始まっていて、それから大学に入ってから制作したコラージュであったり空間的な配置や、それ以外のグラフィック的な部分の大学4年間が何かしらに関わってるような気がしていて。今回の卒業制作を1つの爆発と呼ぶんだとしたら、無意識に積んできたものを今回卒業制作という些細なきっかけで1つの形にできたのだと感じています。

(インタビュー・編集:馬塲 士、画像提供:小林 幹太)


インタビュー第13弾、いかがでしたでしょうか。
本卒業研究作品は多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展に展示されております。
記事だけには載せきれない、実際に見るからこそ伝わる魅力がある作品がたくさんありますので、みなさまもぜひ会場にお越しください!

第14弾は、「デザインニング・エモーションゼミ」に所属する佐々木 桃佳さんのインタビューをお届けします。次回もお楽しみに!

多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「  」

会期
3月3日(金)- 3月5日(日)10:00 - 19:00
場所
〒141-0022 東京都品川区東五反田5丁目25−19
東京デザインセンターガレリアホールB1&B2
アクセス
JR山手線五反田駅東口より徒歩2分
都営浅草線五反田駅A7出口正面
東急池上線五反田駅より徒歩3分

詳細多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「  」公式サイト

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