移動。
夏が終わり秋が来る。夜が終わり朝が来る。
それは当たり前のことのようでいて、『時間』の働きによって成り立っている。
もし『時間』が働くことに飽きてしまったら、この世の全てが破綻する。
じゃあもし『時間』は働いているけど、この世の全ての移動が止められてしまったなら、それはどんな世の中になるだろう。
きっと全てが腐ってしまうだろう。
もし2023年8月31日の夜でこんな世の中になってしまったなら、どうだろう。
この夜はブルームーンの満月が空にある夜。
綺麗な月に照らされながら、僕はただ腐っていく。
自分から嫌な臭いが漂ってきて、これが死の臭いなのかと覚悟するけど、臭いがしている時はまだ死ぬこともできない。
最後に彼女にお別れのメールを送りたいけど、手は動かせないから、届かぬ想いは届かぬまま。
朽ちていく自分とは正反対に、変わらずに輝く月を、いつの間にか憎んでしまうだろう。
バリバリと仕事をしていた時ならば、何も意識しなかっただろう、歩道の端の雑草が成長していっているのも憎たらしい。
そうやって哀しみや憎しみばかりが増殖されてしまうだろう。
だから移動ができるうちに、メールを送り、雑草を抜こうと思う。
移動できるうちに。
終
ここまで読んでいただきありがとうございます。