呑みながら、告られました。
親子丼の甘旨い香りが部屋を包み込んでいる。
ん〜美味しそうだ。
っていかんいかん。なんなんだこの状況は。
昼休み、通路ですれ違い様に、佐藤先輩はいきなりこう言ってきたんだ。
「今日宅飲みしよう。君は絶対参加ね。家の住所はLINEで送っておくから、それ見ながら来るのよ。お酒も買ってくること」
戸惑いながらも、ないがしろにする訳にもいかないから来てみたら、2人きりじゃないか。
家で2人で宅飲みってどういうこと?
都会の人は皆そうやって親睦を深めるの?
それとも、もしかしてわたしに気があるの?
戸惑いながらも購入してきたほろ酔いを開ける。
佐藤先輩はお酒買ってくるように、って言ったのに自前の日本酒を一杯目から呑んでる。
他愛もない会話をしていたら、
こりゃまた急に佐藤先輩がロケットが発射するかの如く突然立ち上がり
「親子丼作るわ!ちょっと待ってて」
そう言ってキッチンに旅立ってから、ほんの数十分であの甘旨いにおいが漂ってきた。
呑んでる時に親子丼だなんて、佐藤先輩はお酒を呑むとご飯を沢山食べたくなるタイプの人なんだな。なんか可愛いな。
もし佐藤先輩と結婚したら、こういう風景が日常になるのかな。。。
そうやって焦点がほろ酔いながらも、料理を作る先輩の背中を眺めていたら。
「はい、出来上がり。佐藤特性、ありきたり親子丼よ」
「特性なのに、ありきたりだなんて、スペシャルなのかノーマルなのかどっちなんですか、先輩」
「あらやだ、変に英語なんか使って気取らないの。冷めないうちに早く食べるわよ。」
そういって2人で勢いよく親子丼をがっつく。
どんぶりから視線をあげて佐藤先輩の方を見ると、フードファイターのように一心不乱にどんぶりに食らい付いていた。
本当に親子丼が好きなんだな。愛しい。
そう思いながら、何度かどんぶりと佐藤先輩に向けて視線を往復させた。
三回目くらいで、佐藤先輩と視線があった。
佐藤先輩は今朝通路ですれ違った時と同じように唐突にこう言った。
「ねぇ、わたしたちこの親子丼みたいに親子になってみる?」
「、、、親子?」
ふふふふふ
佐藤先輩は明確な答えを教えてくれぬまま、気持ちよく机を枕にして眠ってしまった。
親子?いや、恋人になろうってことだよね?
ねえ?ねえ?
終わり
※佐藤先輩はあなたにとっては男かもしれない。女かもしれない。君は女かもしれないし男かもしれない。呑んでしまえばそんなことはどうだってよい。
こちらの企画に参加しております。
2度目の参加です。呑みながら書いていても、いや呑みながら書いているからこそ、それぞれの人の個性が出ていて、本当に面白いです。いつもこの企画の時だけ、ふら〜とやってくる僕ですが、マリナさん素敵な企画をありがとうございます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。