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JIBUNSHI

ニューフェイスは関西からやって来た、同い年のイケメン君だった。
実は、マンションに住んでいた一人はすでに辞めていってしまったという。
もう一人トモキさんはマンションを近々引っ越すらしく、その後にこのニューフェイスが、家が決まるまで住むという。
このニューフェイス君も社長が誘致してきたらしいが、社長はいつか、「関西はイケメンが多い」と言っていたのを思い出す。
しょうちゃんと呼ばれていたこの男は、ちょっと癖のあるやつだった。
話していても我が強く、なんだかあまり好きになれなかった。
しかし、その頃イケメン好きだった私は、顔は好みであった。

イケメンで思い出すのは、この奇妙なサロンに入職する前、お客としてパーティーに行った時に、そこでバーテンをやっていたけん君のことだ。
けん君もまた社長の知り合いということだったが、少し甘めの顔をしたイケメンだった。
私はその後サロンに行った時に、ルミさんにあのパーティーでいい人いなかった?と聞かれたことがあって、けん君がかっこいい、という話をしたら、今ここで働いているとお店を教えてもらったのだ。
六本木ヒルズの最上階にあるラウンジBarだった。
ラウンジBarなんて行ったこともなく、どうしようと悩んだが、その頃から行動力だけはあった。
一人で行くことにしたのだ。
自分なりに気合を入れお洒落をして。お店の入り口でけん君に会いに来たことを告げた。
店内は暗く、ガラス張りの店内は外の東京の灯りを写し込んでいた。
こんなお洒落な場所に来て大丈夫だろうか?と少し心配になった。
間もなくすると、制服を着たけん君がやって来た。
制服姿のけん君はとても格好良く見えた。
けん君は私の座っている側に来て、「来てくれてありがとう」と言ってくれた。
話をしたのはあのパーティーの時に少しだけだったのに、よくそんな勇気があったと思う。
けん君は他のお客の合間に私のところに来てくれて、関西調でいろいろと話をしてくれた。
内容はもう覚えていないが、一度私の体型のことで、お腹が出ていると言われたことがあった。
自分は痩せ型なのでお腹が目立つ、とかそんなことはなかったのだが、その頃は今みたいに腹筋を鍛えたりと、体のバランスに対しては無頓着であった。
けん君はそんな詰めの甘い私にこれじゃああかんで、と言ってくれていたのだろう。このラウンジに来る人で、自分の体型を気にしていない女性はいないよ、と。
このことがきっかけで後々私は腹筋に非常にこだわるようになる。
話がそれたが、けん君にどハマリした私は、その後も連絡を取り、あの日を迎えることになる。

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