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あわてないで土鍋料理 「それでも焦げたら」

個展前のストイカルな日々を過ごしているが、そんななかで「陶芸家のなんちゃったレシピ」(コッチョリーノ ブログに時々登場)つくってみたよ!という報告は、こりほぐしのような効果あり。恐縮しながら喜び、そしてまた調子にのって、土鍋やうつわをつくる。



心緒をうつす

かなしい日、つかれた日はなにもしたくない。土鍋に水と昆布と豆腐を入れ、立つ湯気を、ゆれる豆腐をぼうっと眺めるだけでごちそうだ。「おいしい」レシピや様々な工夫はこの世の中にあふれているけれど、土鍋料理はそこに直進するのでなく、「おどろく」や「おかしい」もたのしみたい。ちょっと失敗した料理も、汚れた土鍋も、愛おしくなるはず。

あわてないで、育てて欲しい。


これもうれしかったな。


音、匂、温をたのしむ

よい匂いがして、そしてこんがり色が出てくるのが180℃くらい。200℃を越えて食材の水分が飛んでしまうと、糖分、油、タンパク質が炭化して焦げとなる。急にくるから「おどろき」だ。


酵素のはたらきによって、野菜やお米のでんぷんが糖分に分解される。酵素がはたらきやすい温度帯40〜50℃を、土鍋はゆっくり温度上昇しながら通過する。例えば、前回の「まるごとキャベツ」。チラッと土鍋のふたを開けて、汗をかいたキャベツを眺めながら「おいしさの40℃」あたり走ってる?なんて、野菜がアスリートに見えてくるから、愛おしい。


やがて、ぐつぐつ音が聞こえる。100℃あたりに到達しただろうか。中火から弱火に落としてじっくり煮る。ここからは土鍋のチカラでアスリートを支えたい。土鍋の保温力で高温を保ちながら調理を進める。おいしい匂いが充満するころは、すでに180℃前後だと思われ、アスリートの正念場だ。200℃を超えると、先述のとおり「焦げる」わけだから要注意。極弱火でもう少し煮つめるか、火を止め、土鍋の余熱で調理を進める。


それでも、アスリートはときにつまづき、焦げつく。後半は、土鍋の焦げつき除去について。


それでも焦げたら


1. あわてて、こそがないで

例えば、土鍋ごはんの焦げ。
あわててこそがず、焦げを残して、ほかほか部分だけかきたてましょう。少し冷めたら、おこげがペロリとはがれる。


2. あわてて、水をはらないで

土鍋は急な温度変化が一番苦手。
冷めたら水を張って様子をみて、それでも取れないようであれば「重曹」または「お酢」を使ってみましょう。どちらを使うか、目安は以下の食材別とおり。ミックスなんかもやったことあり。今回の「まるごとキャベツ」の焦げは、重曹1回洗いできれいに落ちた。

(土鍋の表面が濡れた状態で火にかけると割れるのでよく拭いて乾かして)


重曹
肉、魚、卵、砂糖、米など(酸性)

こげが見えなくなるくらいふり、水を静かに加えて5分ほど沸騰させたら火をとめる。数時間そのままにして、冷めたらスポンジと洗剤でこすり洗い。とってもしつこい焦げの場合は、それをもう一度くりかえし、一晩つけっぱなしにしてから洗浄してみて。重曹から二酸化炭素が発生して、その泡で焦げが浮いてくる様子は動画に。アルカリ性炭酸ソーダ化した重曹が、酸性である油やタンパク質の汚れを落とすわけだ。
お酢
野菜、果物、豆、海藻、キノコ、など(アルカリ性)→お酢

鍋に水をはり、1/4カップくらいのお酢を入れて沸騰させて、冷めるまで放置。あとは重曹と同じ。酸性の酢が、アルカリ性の食材の焦げを落とす。


宝物になる

何度か試せば、しつこい焦げでも取れるけれど、そこになんとなくねずみ色の痕跡が残る。さて、この焦げあとまで愛おしいと思えるようになったら、その土鍋はもうあなたの宝物。



あとがきコッチョリーノ 

▶︎たまちゃん、スカーレットみてる?と友人からメールが来ることがより増えてきました。「じゃあみてみる」と言ったものの、ご存知、窯は壊れるは、新生窯の調子はつかめないは、24時間を逸脱した生活のなかで、ドラマのことを忘れていました。しかし、ここでまた「たまちゃん、スカーレットも窯こわれたよ」とか「新しい土に挑戦だってよ」と聞く。なに、それわたしか? いよいよ見たいのに、泣いても笑っても制作ラストスパート。▶︎食べるの、料理するの大好きだから「旅する土鍋」なんて、遠くまで土鍋を抱えて料理しに行くわけですが、今月は「家事ができません」と家族に宣言しています。普段の生活料理を、作品のために再現することは仕事の一環ですが、それ以外は家族がそれぞれ自活する我が家です。スカーレットは個展や納品前どんなふうに暮らしているのだろう。見てみたいな。▶︎個展「はるのいのち」の宣伝もさせてくださいね。→詳細こちら
この記事はブログ「コッチョリーノ(地球のかけら)」の書き下ろしです


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