見出し画像

ゲームドメインにおけるデータ分析の特徴

現在とあるゲーム会社にて新規事業とデータ分析を担当しており、今までは新規事業側で後々使えそうな考察っぽいことを書いていた。
ので、今回はゲーム分析側の話を書こうと思う。

ゲーム業界における私のキャリアはスマホゲーム運営のプロデュース、ディレクションがほとんどで、データ分析についてはちょっとしたきっかけで1年前に事業を立ち上げたって程度で、とりわけ技術に関しては専門家ではない。
しかも、ゲームというある意味特殊なドメイン?のデータ分析しか経験していなく、他業界の話は知らないなので内容の精度についてはご容赦ねがいたい。
(今回も安定の雑記オブ雑記ということ)


【データ分析とは】
まずデータ分析とは、プロジェクトにおいて優先されるミッションの達成を目的とし、データによる現状把握に加え、KGI(目的変数)向上とKPI(説明変数)の関連性などをデータで説明、さらには改善策等の提案により、より良質な意思決定を促進すること、と個人的に解釈している。

ポイントとしては、「プロジェクトにおいて優先されるミッションの達成を目的」とすること。
データ分析以前にミッションやの設定、つまりそのテーマについてデータ分析することの意味を問うことがまず必要。

そして、「より良質な意思決定を促進」すること。
データ分析の結果により、その後のアクションに関する意思決定がされるものであるべきだし、少なくても論点として議論の対象とならなければならない。
つまり、「なるほどですね、状況はわかりました」というリアクションで終わるような分析では価値としてイマイチ。
ちなみに、データ分析によりとある対象の発生パターンに再現性が見られ、その再現性の精度をチューニングしていくのがAI的アプローチと認識している。

【ゲームドメインのデータ分析の特徴】
ゲームデータの特徴は、ユーザーデータが「多様」かつ「多量」で、「揃っている」こと、だと思ってる。

▼ユーザーデータが多様
Amazonであれば購入、Netflixであれば視聴という大枠の体験は統一されているが、ゲームは1タイトル内でも多様なコンテンツによる多様な体験が混在している。
もちろんタイトル依存ではあるが、RPGを例にすると、PvEやPvPコンテンツだけでもバリエーションが豊富だし、さらに箱庭要素やキャラクターとの交流、ギルドシステムのようなユーザー同士の交流などが存在する。
そして、ここが肝なのだが、これらコンテンツのやり込み程度(+課金)により、ユーザーランクをはじめとした様々なユーザー資産(所持キャラクター、様々なステータス、デッキ編成…など)が千差万別に散在する。

▼ユーザーデータが多量
タイトルによるがMAUは数十万〜数百万という規模であり、それだけだといわゆるGAFAのサービスと比較すれば米粒みたいなものだが、上記のとおりユーザーデータが多様なことはおのずとそれなりの多量を担保する。

▼ユーザーデータが揃っている
最近のサービスとかはデータ分析のためのデータ取得を前提とした設計で開発されているのであろうと想像するが(他業界のことは知らない)、未だにデータがないのでまずは取得から始めなければならないという話はよく耳にする。
その点でいうとゲームは、プレイする度にユーザー資産が変化していくものなので、都度更新、保存しなければ成立しないため、データが揃っているが基本前提となる。

ということで、ここまではメリットぽい内容であったが(人によってデメリットと解釈する可能性もある)、当然デメリットっぽい点もある。

▼データの前処理工数が運ゲー
ゲーム開発者はデータ分析を意識したデータ設計にはしない。
開発者が管理しやすいデータの持ち方で設計するため、データ構造はその開発者の属人的依存となる。
そのため、同じようなゲーム設計のタイトルでも全く違う構造となっており、例えば、様々なゲーム内行動に対するユーザーIDの紐付けなどの前処理にかかる工数がまちまちとなる(中にはJSONでバッキバキに固められたテーブルもあったりする)。

▼データ分析によるプロジェクトへの貢献難易度が高い
ゲームはゲーム開発者の意図により設計されたサービスである。
つまり、ログイン継続率、課金率、課金単価などの基本的なKPIが意図通りではなかった場合(上振れでも下振れでも)、ゲーム設計のどの部分が機能していないのかという仮説が立てやすく、実際にほぼ正しい。
そのため、プロジェクトメンバーに新たな論点を提供するようなデータ分析をするには、それなりのドメイン知識によるタイトルやプロジェクトへの深い洞察が必要になる。


【今後データ分析のポジションはかなり重要になっていく】
ただ、上記で述べた貢献難易度の点はこれまでの話であり、今後はかなり重要なポジショニングとなることは間違いない、と思う。

ゲームは「脱予定調和」的な発展をし続けている。
オンライン、オープンワールド、そして現在流行のバトルロワイヤルの流れは、ゲーム開発・運営者からのゲームルールによるユーザー行動の制限を縮小し、その多様性を拡大させ、さらには動画によるゲーム実況やその閲覧者であるノンゲームプレイヤーまでをKPIとしている。

このような発展において、開発・運営者側のユーザー行動に対する仮説や想定の精度は下降傾向となっていくだろうし、それにより探索的なデータ分析による価値が増大していくはず。
なお、この「脱予定調和」的な流れが先行している海外では、当たり前すぎる事実となっているのは容易に想像できる。

そう、つまり今ゲームのデータ分析者にはチャンスしかないと思うのであるw

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?