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祭りを終えると、もう秋

昼過ぎたころ、ベランダの下を神輿がとおった。今日は、来週に使う資料を自宅で仕上げる日。祭りは気になるけれど、おあずけ。

資料に向き合う私の目。手はせっせと資料を作り続ける、チェックを入れる。けれど、耳には外の音が届く。なかなか、忍耐のいる作業。

神輿を追いかける子どもたちの声、交通整理をしているのであろうホイッスルの音。陽気に笑う大人たちのざわめき。ざわざわと聞こえてくる。

部屋のなかも少しずつ暗くなってきて、ついに。耳にこれまでと違う音が届く。

テンテケテンテケ、チン。
テケテンテンテンテン、チン。

祭りばやしだ。今日一日、地域を回ってきた神輿が神社に戻ってきたのだろう。宮入の時間だ。

私も、もう、降参。あと少しで資料は完成するけれど、今日の祭りは宮入で終わってしまう。開いた資料などはそのままに、小銭入れと手ぬぐいをもち、近くの神社へと急ぐ。

この土地で迎える祭りは、これが初めて。昨年の冬の終わりに、今の家に引越してきた。地域の神社へご挨拶はしてきたけれど、祭りにはまだ行ったことがなかった。

屋台の並ぶ参道を抜け、本殿へと詣でる。舞台では祭りばやしが地域の方々によって鳴らされている。にぎやかな祭りの音、風景。その中で、私も手をたたいて、そっと祈る。

この土地に住めることを嬉しく思ってます、ご縁をいただきありがとうございました。今年も恵みをいただき、ありがとうございました。美味しいものをお陰様でたくさんいただいています。来年の収穫時まで、わたしもせっせと励みます。

さてと。本殿にごあいさつもしたし。祭りの様子をながめたから、ゆっくりと参道にある屋台をのぞきながら、家に帰ろう。そして、資料作りの最後の仕上げだ。

ソースが焼けるにおい、からからと瓶の鳴る音。発電機のモーターがまわる響き。ざわざわと聞こえてくる楽しそうな人々の声。祭りの風景に見送られながら家に戻っていった。

この祭りが終わると、ゆっくりと気温も下がってくる。もう秋だ。

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