見出し画像

夜の羊と夢がかなう気配と

今は夜、まっくらだ。それなのに、まわりがぼんわりと明るい気がするのは、あたりが真っ白だから。ほかほかの雪にくるまれて、ぼんやりと。眠りの続きが来るのを待っている。

雪の中でこのまま眠ってしまうと、朝起きた時は違う世界への扉が開いているかもな。花畑とか見えるらしいし。一度見てみるのも面白そうだ。と、ちょっと困ったこと考えてしまうのは、疲れすぎてるからだろうか。

雪も慣れてくると冷たいとは思わないらしい。冷たいと感じるからだセンサーがマヒするからかな。もこもこと、ほかほかの肌触りの中で私は思う。

ほかほかが気持ちよくて、ぐるりんと体の向きを変えてみる。ぺたっとざらりと、顔にふしぎな肌触りのものが触れる。ざりんざりんと、何度も触れる。

せっかく、ぼやっと、ほかほかを楽しんでいたのに。しぶしぶ目を開ける。

一対の黒い目が、目の前にこんにちは。真っ白な毛皮のおおきな羊。そのなかにもぐって、わたしは寝転がっていたみたい。いつか、羊にもぐって眠りたかった。その思いが通じた年末になった。この、ほかほか、ぬくぬく。いいね、素敵ね。

夜の羊は、空を駆ける。そして、人間の見る夢をもわんと見張っている。それは、昼間の羊が地上をあるいて、牧羊犬に見張られているのに似る。夜は羊が牧羊犬で、人間の見る夢が昼の羊だ。

夜の羊は、人の見る夢を集めて、育てて。天の上へと連れていく。そこで育った夢たちは、いずれほかほか、ぬくぬくの夢になる。他の人の夢と重なり合って、現実の中にもその形を見せ始まる。そうすると、寝ている間に夢のほかほか、ぬくぬくが人の世界まで届くようになる。

いま、夜のなかで、ほかほか、ぬくぬくを知る人は、願っていた夢が現実のすぐそこにまで来ているんだ。

今、私がもぐりこんでいるのは夜の羊。願っていた夢が現実の近くまで来ているよ、だから、もうちょっと頑張ってみる?って応援しに来てくれたのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?