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複業を極めるというのは矛盾か

副業から、複業の時代へ。

そんなことを言われ始めたのは私が就活生の時。三年前くらいだろうか。あくまでサブとして、隙間時間を利用してお小遣い稼ぎ目的などで行う「副業」とは異なり、文字通り本業を複数持つ、という働き方が「複業」だ。

当時の私は、その働き方について、本業をいくつもなんて、忙しそうだなあというくらいの浅い感想を抱いただけで、自分は迷いもなく王手の総合商社に入社した。それが気づけば一年半で退社し、現在、複業への道をナチュラルに歩んでいるのだから、可笑しな話だ。

①転職するまでのあれそれはシンプルに

入社時の興味と、そこで提示されたキャリアに疑問を抱き、このままじゃ後悔すると思って退社した。当時仲良かった同期たちも、この春でついに全員辞めて、転職したり職業訓練学校に通ったり、フリーランスになったりと、さまざまな方向へ進んだ。まさに大企業の闇ここに極まれり…いや、類は友を呼ぶ現象なのだろうか。とにかく私たちは、入社して1ヶ月後には「辞めてどこいく?何する?」なんて話を始めて意気投合。一年以上クレーム対応に従事しながら、酒を片手に語り尽くしてきた。互いの最終出勤日には、心からの祝杯をあげた。

「私たちの理想の働き方は、ここじゃできなかったね。完全に就活ミスったけど、あんたに会えたからまあチャラよ」

飲み慣れた安いハイボールを飲みながら、いつも業務での出来事に饒舌にキレていた同期が、いつになく穏やかな様子でそう言った。それぞれ五年後、何してるだろうね。どこにいるだろうね。元気でいてね。そういう言葉を飲み込んで、「そうだね」とだけ答えた。いつかまた彼女と飲む時には、愚痴でなく幸せな話を肴に、この不味いハイボールでなく、ちょっと良いワインで。そう決めた。昨年末の話だ。

②今何してるの?と聞かれるのは好きじゃない…

というのも、シンプルに答えられないし、シンプルに答えると「色々」になるからだ。

・科学医療研究機関の広報担当

私は、昔から書くことが好きだった。広報やメディア、ブランディングにも興味があった。新卒で選んだ総合職でも、広報部を志望して採用されたはずだった(が実際にできるのは10年後くらいだと入社後に判明して、萎えた)。

転職するからには、次は妥協せずに探そうと意気込んでいたら、運良く、そういう仕事に誘ってもらえた。この4月から、平日はフルタイムで広報担当として働いている。具体的には、科学医療系のアカデミックライティング、研究グループの公式サイトの運営、ラジオパーソナリティ、学会などの広報グラフィックデザインなど、PR系の仕事全般を学びながらやらせてもらっている。コロナをはじめとするウイルスの感染症など、タイムリーなジャンルなので大変だが、その分やりがいは大きい。

前職では販売の部署にいて、クレーム処理や在庫管理がメインだったので、下積みゼロからのスタートだ。

そして、終身雇用とはかけ離れた職場。会社ではなく、個人として雇われている。私はここで確実にスキルアップをし、次のキャリアを自分で選択していかなくてはいけない。その現実が、いつも私を少し焦らせているけれど、モチベーションにも繋がっている。上司もいないから、自分で考えて同僚と企画を練っていく。同僚内では最年少だから、失敗しても、至らなくても助けてもらえるけれど、いつまでもその立ち位置ではいられない。好きを仕事にすることの苦労も同時に痛感する毎日だ。

それにしても、自分がサイエンスに携わる日が来るとは。生来、私は根っからの文系脳だ。でも、この畑違いを面白がってくれる、愛ある人々に囲まれている。おかげで、転職して3ヶ月、なんとか楽しめている。

・ブックキュレーター、Webライター

本・サブカルチャー好きが功を奏して、Webメディアでのブックキュレーター、サブカル分野のライティングを担当し、もうすぐ一年。

時間泥棒なタスク型ライティングには見切りをつけ、完全に自分のオタク気質を活かせる案件にだけアプローチした。編集者さんと趣味が合うので、ストレスなく原稿をやりとりできる。そもそも、読書やサブカルチャーは私の趣味だから、この仕事は、意識的には趣味の延長なのだけれど、本業と並ぶくらいの収入までいくようになった。好きこそものの…は、真です。

・アイシングクッキー講師

この4月から始めた、週末限定のクッキー教室。講師資格を取ったのは、なんと今年の3月…まだ取りたてほやほやだ。転職先への着任までのニート期間があまりに暇すぎて、思いつきでとった資格。これが楽しくてハマってしまった。即教え始めるというせっかちさ。笑

(詳しいことは以下の記事に書いています。)

https://note.com/tamayura___/n/na82eda995d54


コロナ禍だから、少人数制、徹底した対策をして、教室を開いている。最初は、知り合いや、学生時代の友人だけだったけれど、ぽつぽつと、親子連れの方や友達同士の主婦さんなどが来てくれるようになった。今月も合計で10名くらいの生徒さんの予約が入っている。

元々は暇潰しで始めたけれど、今では本業として名乗れるレベルになることが目標だ。神業のように上手なアイシングクッキー作家さんのInstagramなどを見ると、私も頑張りたい、頑張らなきゃと思う。教えるからには、もっとプロになりたいし、同じように講師を排出できるような実力をつけたい。

それは私自身の技術的課題だけれど、でも今、初めましての方と和気藹々とクッキーを作る時間がただ楽しい。小さい子が、目を輝かせてクッキーにお絵かきをするのを見ていると、こういう時間の価値を提供し続けたいという気持ちが強くなる。

③今後したいことを思いつきで書くと…

・Webデザインは今まだ勉強中だけれど、それで仕事が取れるレベルまで磨きたい。デザイン、ライティング、管理を含めて、包括的なメディア運用ができるようになりたい。

・オーダークッキー缶の販売をしたい。身体に優しいクッキーのレシピをもっと研究していきたい。

・小説を書き始めたので、書き終えて応募したい。(これは完全に趣味ですね。)正直、完結しそうにないけれど、焦りません。愛読書のパンセは、未完なのが魅力です…

・ラテアートに興味が出てきました。まずは体験しよう。と思っています。(これはまだ趣味候補の段階です)


④複業に(無自覚のうちに)足を踏み入れて3ヶ月の感想をメモすると…

・好きなことを仕事にすることを諦めない、を貫くことは、しんどいこともあるけれど、概観すると楽しい。

何より、自分が納得できる。環境が悪い、会社が悪い、上司が悪い…そんなふうに、周りのせいにして愚痴を吐くことは無くなった。それがしんどさでもあるのだろうが、私は今の自分の方がずっと好きだということは確かだ。

・色々なことをするということは、色々なことを学ぶということ。

二兎追うものは一兎も得ず…は、一言で言えば、古い。なぜなら、色々なことを学んでいると、色々なものが繋がってくる。例えば、広報の仕事は、クッキー教室の集客や周知方法の工夫に活きている。わかりやすく伝えるというライティングの技術は、もしかしたら、クッキーの教え方なんかにも活きている(かもしれない)。

だから、もし「自分はこれ一筋」という生き方や、「自分は生涯ここに勤める」という職場を持つことに違和感があっても、そのことを直ちに「半端な人間」であると卑下する必要はない。ハンパにしか見えない世界や切り口があると思う。むしろ、ハンパ上等です。笑

好きなものは何?から考えてみる。K POPが好きなら歌えちゃうくらいに聴きまくろう。メイクが好きならたくさんコスメを試そう。ゲームが好きならそういう仲間を見つけて続けよう。ラーメンが好きなら、ラーメン屋の開拓をしよう。女の子が好きならたくさんTinderをして、語り合ってみよう。仕事の選択もそんなふうにもっとフリーに、もっとラフに突き詰めていこう。

ただ有利な資格を…!とりあえず免許を…!なんとなく王手を…。

という思考の縛りを、解いてみよう。

働き方とは用意されたものではなく、会社から提示されるものでもなく、キャリアプランとして約束されるものでもなく、自分の行動選択のその先に、ただある状態のこと。



気負わず、自分の気が向く方へ進もう。



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