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詩集「赤い月」

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詩集マガジンをつくりました。 “恋愛”と”女性”に関する詩を中心に集めた【赤い月】。 イラストは、猫野サラさんからお借りしました。 『夕凪を写しに』シリーズの主人公で詩人の星野… もっと読む
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記事一覧

風が吹いてくれればいい

【詩】   風が吹いてくれればいい もっと風が吹いてくれればいい 僕の欺瞞や怠惰や嫉妬や…

つまさきの冷たさ

【詩】 彼女は日々の営みから外れ 長いモラトリアム期間を過ごしている 実家の両親にも同じ…

巻き尺

【詩】   きみの欠けた心を補うことが ぼくの欠けた心も補うことに ほんとうは気づいてい…

きみを探してる

【詩】   この海を泳いできみを探してる 月に満ち月に欠けてきみの消息探してる ふたりし…

あなたが生まれた日のことを

【詩】   あなたが生まれた日のことをぼくは知らない あなたが生まれてあなたの両親がどれ…

言えない言葉

【詩】   空が青すぎて言葉につまる 風が涼やかで波が立たない 霧のような雨に慣れきって…

質量のある夜

【詩】    好きがあふれて愛という言葉つかう 街角抱きあう彼らのわき通り抜けて ぼくら無言でつないだ手を強く握る どこへもたどり着けないことふたり 知っているから行き先は尋ねずただ 雨あがりのみち水たまり避けながら 最終電車までにあと幾つ角をまがり どれだけこの街に足跡を残すだろう また会えるという不確実な未来より いまをめいっぱい引き伸ばしたくて どこへもたどり着けずに手をのばす せめても雲がきれて月よ笑ってくれ 質量に囚われてるふたり笑ってく

雨の夜

【詩】   雨の夜に入る誰かからのメールは 要件もあいまいで疑問符で終わる 意図を読み取…

ガラガラとガラガラと

【詩】   過去のあらゆる風景の断片が 割れた地面のすき間に落ちて 身体から何かあふれ出…

彼女の悲しみ

【詩】   彼女はいつも自分を完璧にコントロールして 間違った判断をしないよう細心の注意…

涙を流すひと

【詩】   最終間際の列車の中で 酒に飲まれた人びとの中で ひとりさめざめと涙を流すひと…

質量保存の法則

【詩】   火曜日の憂鬱が上空で変移して 水曜日の雨が降りそそぐ あらゆる感情はかたちを…

鼓動

【詩】   くるくると回りながらきみ 薺を一輪手折って笑う その花の痛みを知らずに笑う る…

石を拾う

【詩】   ある日道ばたであなたに似た石を見つける 何気なく目の端で捉えてすぐに気づいた あなたに似た石 どことなく それとなく 丸いわけではなく角張ってもいない 白くも赤くも黒くもなくて どこにでも転がっている普通の石 掌にのせてますます思う あなたに似た石 どことなく それとなく いつからここに在ったのだろう 毎日この道通るのに僕は あなたに気づきませんでしたよと 石に語りかけ 少し考えて もと在った場所に置く 道の端におさまってあなたに似た