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Typicaを経て、次にやりたいこと

私はTypicaを始める前、コーヒー屋で働いていました。コーヒーにのめり込んだのは大学生の頃、onibusやfuglenのコーヒーに出会ったことがきっかけでした。苦いだけと思っていたコーヒーにフルーティで鮮やかなフレーバーがあることに気づいて、夢中で友達にコーヒーを普及していくうち、アルバイト先の仲間だった川野優馬に誘われ、ライトアップコーヒーを一緒に立ち上げました。

それからの1年は前途多難でした。ビジネスのビの字も知らない学生上がりが、毎月の支払いに追われる日々。正直余裕は一切ありませんでしたが、やりたいことをやれている充実感だけで十分でした。段々と軌道に乗り、仲間が増え、青春とも呼べる日々を過ごした5年。6年目には、コロナが来て、オンラインを上手く駆使したライトアップコーヒーが、スペシャルティコーヒー業界の一旦を担う存在になったと感じました。

新しいチャレンジをしてみたいという理由でライトアップを辞め、夫婦でTypicaを作りました。当初思い描いていた「コーヒーが美味しいビストロ」から「コーヒーとワインが美味しいパフェ屋さん」に変わっていきましたが、皆様に愛される店を作れたことを誇りに思います。

しかし店の基盤にある、嗜好品への偏愛は他のお店にはない特徴だと思います。

最近、ライトアップコーヒーで共に働いていた仲間が岡山に移住して作ったブランドsomething like that を新しくコーヒーリストに加えました。私の好みとドンピシャの「デイリーで水のように飲めるコーヒー」を掲げてるブランドで、彼らのコーヒーを飲んで改めてコーヒーについて考える自分がいました。

「コーヒーは、アイテムではなく、ストーリーである」ということ。その液体の裏にある人々の努力、人生をかけて築いた子供のような存在。その片鱗を伝えるのが私たちカフェの役割であるということ。

以前はエゴを伝えるのは美しくないと思っていました。目の前のコーヒーだけで伝えるべきだと。しかしコーヒーが増え、供給過多になりつつある現状に改めて自分の存在意義を考えると、そこ(エゴ)に行き着くのです。

しかしやはりそれは、お客様の視点に立てばどうでもいいことなんだとも思います。ビジネスとして成り立たせる場合、提供側のエゴは邪魔でしかありません。そこで考えたのが「ペアリング」という概念。恐らくワインをここまで文化として根付かせたのは、この概念があったからだと思います。ペアリングは、消費者としても悪い気はしません。情報を一方的に押し付けられるのではなく、体験として昇華させようとする提供側の工夫を感じるからです。

1杯のコーヒーと、一つのお菓子ではなく、デザートコースを作り、ペアリングとして数種類のコーヒーを伝える。どのようなストーリーがあり、何故このコーヒーを選んだのか、自然に提案することができる。

デザートコースを主軸にすることで、ペアリングとして嗜好品をプレゼンテーションできる場所、それが私が次に作りたい店です。ライトアップでの経験と、Typicaでの経験を経た今でしか作れない店になると思います。湧いてきた「目標」をやり切ることでしか次のステージは降りてこないと思うので、今は目の前にあるこのビジョンは形にしたいと思います。

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