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ご当地グルメ 001 『禁』

 その名の通り、ご当地グルメを紹介する。

 住みます芸人に限らず、ローカルメディアで活動する人間にとって意外と知られていないことの一つに、紹介するものや店に対して優劣をつけられないというものがある。例えば、「ここのラーメンが一番うまい!」と言えばその他の全ての店は少なくともそのお店よりも美味しくないということになる。つまり捉え方によっては「あの店のラーメンより美味い!」と言っていることと同義となるのだ。故に我々は優劣をつけたり、同ジャンル系との比較をしたりすることは基本NGとされている。もちろん歯に衣着せぬ毒舌キャラであれば別だが、地元密着のローカルでそのスタイルを貫く勇者はそうそういないだろう。全員に好かれたいのだ。愛されたいのだ。僕たちの笑顔を見ればわかるはずだ。

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 しかし、1位はいるのだ。「何じゃこりゃ」級の1位は。今回は『ご当地グルメ』の初回ということでそんな1位をご紹介したい。当然僕個人の感想なので悪しからず。それと、その1位のお店の写真なのだが残念ながら、ない。痛恨の撮り忘れである。いつかまた訪れて写真を載せたいと思っている。いや、それから書けよという話なのだが、やはり初回は1位を書きたいのである。もちろん、第2回以降は全て同率2位ということになる。寸分の狂いもなき同率2位。ただ、岩手の全てのグルメを食べ尽くしてきた訳ではないので1位が変わればその都度発表させていただく。

 僕が11年間、いろいろな番組で食してきた中で、一番「何じゃこりゃ」だったモンスターチャンピオンは、

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洋野町種市にある『はまなす亭』の『焼きウニ』である。

 僕の中で1位となった大きな要因として「意外性」がある。岩手県内に限らず、世の中には美味しいものは無限にある。ただ、いくら美味しかろうが、食す前に「きっとこんな味なんだろうな」という想像が働いてしまう。特に食リポなどを求められれば予めフレーズまでとは言わないまでも「こんなワードを使う感じかな」と考えてしまうことが多い。つまり「きっとこんな味なんだろうな」という想像が働くことによって、「意外性」という部分においては薄くなってしまう、と僕は思っている。

 そして、1位の『焼きウニ』なのだが、実ははまなす亭にお邪魔する前に洋野町にある通称「ウニ牧場」と言われるウニの養殖場を見学させてもらった。そこには愛情たっぷりに育てられたウニがゴロゴロと岩に張り付いていた。そして「ほら食え」と潮水でささっとすすいだだけの採れたてのウニをたくさんご馳走になっていた。

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殻から指でグリッと取り出した洋野町のウニは、先述したように愛情たっぷりに育てられ、餌にこだわり、身が大きく甘味が強い。「最高じゃん!」を経てからのはまなす亭であった。

 それ故に、焼きウニが目の前に置かれたところで、全く油断してしまっていた。しかも、ウニは生が一番美味いというのが定石である。つまり「いや、焼くんかい!」くらいに思ってしまっていた。勝手な思い込みではあるが、生で出せないレベルのものだから火を入れたり、加工されたりするものだと思っていた。
 スプーンで掬い、パクついた。予め準備しておいた「濃厚〜!」を出すタイミングだけを考えていた。思考が止まった。恐怖すら感じるほどの強烈な多幸感。顎先にピンポイントでパンチが入り、痛みはないが脳みそだけぐわんと揺らされ、意識がふわっと飛んでしまったような感覚。しっかりしろ。意識を保つために無意識に体が悶絶してしまう。
 ウニの旨味がぎゅっと凝縮されている。もはや「濃厚」などという言葉では安すぎるほどの凝縮具合。ブラックホール並みの超巨大質量感。
 お店の方に聞くところによると、この焼きウニが生まれた背景がまたすごい。「ウニは買うもんじゃねぇ。貰うもんだ」というほど、昔からウニの養殖が盛んな地。そんな中、海辺で焚き火をしていたその中に焼き芋感覚でポイと貰ったウニを投げ入れて食べたところこの衝撃的な美味にたどり着いたそうだ。我々のようなウニは高級であり、宝石であり、大事に大事に味わうことしか知らない人間には到底辿り着けない境地の美味なのである。

 というわけで、1位は洋野町種市はまなす亭の『焼きウニ』である。ただ、このお店、それ以外も全部美味い。特に『ほやラーメン』。ほや好きの僕からしたら、熱々のラーメンにほやを投入するなんて暴挙以外何ものでもない。しかし、はまなす亭の『ほやラーメン』は悔しいほどに美味いのだ。秘伝の工夫を凝らしているらしい。

 今回は禁断の1位発表となった。次回からは1位と肉薄のギリッギリ2位。しかも、奇跡的に全部同率。はまなす亭の焼きウニさえなければどれも同率1位だったご当地グルメを紹介していく。

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