『未来』2023年8月号 掲載7首

闇ぬちに光閉ざせば永遠に感情のないまま漂える

曖昧で生きることさえままならず苧環抱いて泣きながら寝る

鈍色の蝶が『審判』に止まった魂の鱗粉が舞い散る

哀しみは未だ癒えずにただ一人己の天使を胸に抱いて

きみが閉じた心の裏側に光が満ちるようにと祈っている

美しき春の死骸が横たわり世界の終わりが笑っている

魔法解け見上げる空は浅黒く夢や希望は必要がない