あした使いたくなるプロの台車運転テクニック3選!

お掃除系の会社で働いている。職場でのキャラは"喋らない奴"だ。それでも周りからは年下ということもあって良くしてもらっている。

だがその実態はスパイなのである。縦割り組織の改革のために動いている工作員としての一面もあるわけだ。まずは僕がすべてのエリアの仕事をマスターする。そこで得た情報を元に改革の手順を決める手はずだ。

縦割り組織のエリアは4つ。すでに2つのエリアはマスター済み。次はエリートしか踏み込めないGエリアだ。そこへの潜入が始まって1ヶ月が経った。仕事もだいぶ慣れたと思う。

とはいえ他のエリアとはわけが違う。さすがエリートしか踏み込めないエリアだ。ここを任されるにはおばちゃん達には荷が重いだろう。スピードも要求されるからだ。匠の技が必要になってくる。

台車の運転テクニックひとつとっても簡単に真似できるものではない。具体的にはどのようなものか。すこし紹介してみたいと思う。

台車は危険な道具だ。簡単にスピードを出せてしまう。そのため安全策を講じなければならない。やってはいけないことは"だろう運転"だ。

あの扉を開ける人はいないだろう。そう思っていると扉は開くものだ。運の問題ではない。マーフィーの法則というものだ。開くかもしれない。そう思って回避行動をしていれば開くこともない。

すべては事前予測と下準備。台車が通る動線上のリスクは完璧に把握しておく。そうすることによって台車の最高速度は上げられる。地味なやり方だが効果的だ。

台車の最高速度を上げられたら、次は台車の加速度を上げていきたい。

そこには古武術の動きを利用するのが効果的だ。使うのは"縮地"。あれはなにも漫画やアニメの中だけの技ではない。ちゃんと実在している。本来は自分の動きを相手に予測させないためのものである。

通常、歩き始めるときは地面を蹴るための"溜め"が必要になる。走り出すときも然りだ。その"溜め"を無くした動きが縮地である。

ポイントは自重の利用と足の運び方だ。決して地面を蹴ってはいけない。まずは体を傾ける。倒れそうになったら足を出し体を支える。踏ん張ってはダメだ。その連続で前へと進む。つまりは倒れ続けるのだ。

そうすることによって縮地は完成する。自重を利用するので体への負担も少ない。その分だけ加速度も上がるというわけだ。応用すればブレーキ能力も上がるだろう。

速い最高速度と加減速を手に入れれば、あとは速いコーナリングスピードがほしくなる。できれば動線上のカーブは無いことが好ましい。だが排除できないのであれば、やはりコーナリングスピードを上げるしかないのである。

これは荷物の乗せ方の工夫が効果的だ。一般的に荷物は後輪に寄せたほうが良いだろう。曲がる際に左右へと動く前方が軽くなり、曲がりやすくなるからだ。

だがしかし乗せる荷物の形状は多種多様だ。セオリー通りに置けないこともあるだろう。場合によっては最前列に重たい荷物を置いた方が良いときもある。

前輪の軸よりも前に重心が来るように荷物を置くのだ。さすれば驚くほどのコーナリングスピードを体験することになるだろう。FFスポーツカーの速さの秘密にも触れられるかもしれない。

以上が台車の運転テクニックだ。だが実践はあまりおすすめできない。それほどの時短にはならないからだ。使えば僕のように事故って後始末の時間がよけいに掛かってしまうだろう。本末転倒だ。

やはり仕事の時短を狙うのであれば、無駄を省く方が効果的だと思う。具体的には、作業と作業の間にある必要のない”間”を無くしていく。無数にある必要のない小さな間を、ひとつひとつ丁寧に消していくのだ。

「大きなことはできませんが、小さなことからこつこつと」。この精神の実行も立派な匠の技なのでありますよ。


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