帰省
「もう行くの?」
父母のどちらが言ったのかすら思い出せないほど、そっけなく空港の保安検査場へと向かい、別れた。少し後悔。(弟と妹はコンビニで買い物してやがった、薄情だな…)
でも、勢いで行かないといけなかった、のだと思う。
迷っている時や不安な時は、勢いに任せないと一歩を踏み出せない。
考えてしまうとだめなのだ。
帰省から帰るために空港へと向かう車の中では、いつも感情を押し殺している気がする。
でもそうしないと実家に戻りたい気持ちでどうにかなってしまいそうなのだ。
泣きながら「もう少し実家に居たい」など、そんなことは言えない。
理由は分からないが、言えないのだ。
帰る途中、コンビニで弁当を買う。
そして寂しさが急加速する。
家族で食卓を囲み、温かいご飯を食べていた日々。
それなのに、今日は一人さみしくコンビニ飯。
家に着き、いつもの定位置に座る。
空しい。
スマホで「帰省から帰る 寂しい」と調べる。
同じような境遇の人がたくさんいる。
「大学生です。泣いてしまいます」「いい歳ですが、泣いてしまいます」
泣いてもおかしくないと知り、抑えていた感情が溢れだす。
泣いた後は心がまたからっぽになる。
一連の経験を何度も繰り返していることを思い出したり、社会人としての初任給は家族で焼肉なんかを食べに行こうと考えたり。
ぐるんぐるんの感情がだんだんなくなっていくように感じる。
一人になると、また心が冷たくなっていく。
その前に、自分の気持ちを書き残せてよかったと思う。
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