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FABE分析から始める無形商材の商品設計

自社の商品やサービスを考えるとき、ゼロから頭の中で生み出したものを言語化して落とし込む作業が発生する。
その作業にも枠組みがあったら便利。

そんなときに使えるのがFABE分析だ。
ファブ分析と読まれることが多いが、フェイブ分析のほうが合っていないか?と思ってしまうがまぁいいだろう。

FABE分析とは

今回は弊社がIT企業ということもあり、目に見えて手に取れる商品ではないため、無形商材である前提で書く。
まずはFABE分析をざっくり見てみよう。

FABE分析

上記の図で示している通り、営業するにしてもマーケティングするにしても、顧客に商品説明する際に必要な要素である。
この1 ~ 4の掘り下げは、場合によっては手戻りがある。優位性が足りなければ特徴を際立たせたり、根拠が足りなければ示せる利益を定量化できるデータを作ったり。

新規商品で示せるデータがない場合

新製品の場合、特に課題になりがちなのが4の根拠(Evidence)だ。
なにせこれからリリースするというだけあって、過去のデータや履歴なんて何もない。

だが、これは新製品の導入実績である必要はない。

「Aという手法を使ったところ◯%コスト削減につながったため、サービスとして作りました」
「Bをすることで、平均的なこの業界の人件費から算出して◯万円の改善が見られたため、パッケージ化しました」

といった具合で、要因があって新製品につながった、という言い方であればサービス化した根拠になり得る。
そもそも製品化、サービス化するということはそういった根拠が必要である。
頭の中で「これやったら儲かる!」という閃きも悪くないと思うが、それなら前提を作ることに注力するべきだろう。

弊社の新製品は、主に自分がスタートアップ企業のエンジニアに研修や講義を行っていたり、CTO育成・開発チーム育成に関わっていた経歴を根拠として示している。
教育は定量化が難しい分野ではあるが、細かな部品(教育においては仕組み作りやテクニック)によって改善できる対象は定量化しやすい。

本当にそれは顧客にとって価値があるか

さらに悩む要因が顧客にとって価値を提供できるかどうかという、根源的なところである。
商品設計をしながら深堀りしていくと「こういった顧客には価値がないだろうなぁ」や「そもそもこれって誰でもできるのでは?」などと商品のアイデンティティを揺るがすような不安がひっそりとやってくる。

この不安の影に怯える必要はない。
たいていの物事はやらなければわからないからだ。

もし、商品設計をして顧客に売り歩いた上で誰も興味を示さなければ設計が悪いか売り方が悪い。
どちらかだけの可能性もあれば、両方悪い可能性もある。

売り方に関しては営業やマーケティングの領域なのでここでは触れないが、設計が悪いのであれば改善すればいいだけの話だ。
もしくは商品そのものがどうしようもないのであれば(市場的にも品質的にも)思い切って売るのをやめてしまえばいい。

砂漠で高級腕時計を売ってもよほどのことがなければ売れないように、適材適所がある。無形商材であれば在庫として抱えることはないのでダメージも最小限で済む。

誰かに価値があるものを生み出すまで、頭と足を使って考え続ければいいだけだ。

差別化するときは一点突破方式

ニッチ産業を狙う場合以外は、この世界はすでにレッドオーシャンだらけで真っ赤に染まっている
どこを見ても資本を持った大企業が介入しているし、その分野におけるトップ層は背中が見えないくらい先を走っている。無形商材なんてその最たるジャンルだ。

では我々のような小さな事業者はどうすべきか。
ランチェスター戦略的に言えば一点突破だ。

ランチェスター戦略ではシェアNo.1以外は弱者と定義

風穴を一つでも開けることができれば、そこにマッチする顧客は存在する。たとえそれが一人、一社であっても、たしかなニーズを実感できる。
全国民、すべての企業に適する商品が作れると思ってはいけない。

現在ではabrAsusが代表商品である小さい財布は良い例だった。
長財布が主流だった中で、財布は小さくて良い、という新たな価値の提供は結果的に多くの人に刺さったが、財布という機能自体はそのままで薄さと小ささにこだわったからこそ広まった。

なんでもいいわけではないが、顧客のニーズの小さい「こうなればいいなぁ」を理解して商品に落とし込む。
これを続けることが弱者の生き残り方だ。

※なお、「ひたすら料金を下げる」はNG。

視覚で表す価値提案

商品設計がある程度済んだ段階でパンフレットやPDFの形で資料を作成するはずだ。
そのとき必要なのは、デザイン性に溢れた匠の逸品でも詳細なマニュアル形式のものでもない。

伝えるべきことを伝える上で守るべき鉄則は、1ページで表現したいことを1つに絞ることのみである。
おしゃれすぎるとスタイリッシュさが一緒に伝わってしまうし、マニュアル的なものはだいたい言いたいことが1つに絞れていない。

そういう意味では映画やアニメのUXはそれが守れている。UIがごちゃごちゃしていないので、シンプルに画面内で起きている出来事を観るしかないからだ。
子どもが学業に集中する際にスマートフォンがないほうがいいように、大人だって周りに余計なものがないほうが集中できる。

なので、1ページ1コンテンツルールを作り、多少枚数が増えようとも「このページではこの魅力を伝えます!」を全力で出していくスタイルが良い。
ただ、現実問題、パンフレットは印刷するのに枚数で金額が変わるため、どうしてもコンテンツを詰め込みたくなる。その場合は掲載する商品数を妥協するか、コストを妥協するかの二択でいこう。

小さな会社は社長が学ぶ

弊社は視覚伝達の有効性を高めるために映像とインフォグラフィックを資料に採用した。
どちらも技術や知識が必要だが、必要な投資として日夜クライアントワークの傍ら制作している。このnoteの執筆も、主に文章だけで誰かに価値のあるコンテンツにできるよう研鑽する一種の修行となっている。

これらの結果から得られた知見を、さらに学習コンテンツとして昇華していく作業をすることで全社利用できる素材となる。
規模が小さい会社だからこそできることに制限はあるが、役員(主に社長)は残業代が発生しなくて済むのでフル活用すべきだ。資本形態や組織形態にもよるが、社長はいざというときに会社のために身銭を切れるし、時間も会社のためにひたすらに使える。
なんて便利なのだろうと毎日感動しながら仕事できている。

令和に似合わず根性でビジネスするという古臭い生活ではあるけれど、今の生き方が楽しくて仕方ない。
我が事ながら良い人生を送っていると、最後に声を大にして宣伝しておきたい。

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