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言葉とイメージの狭間で

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ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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2019年10月の記事一覧

判断力の根っこ

仕事をする上で大事な能力のひとつは判断力だと思う。 異なる選択肢が2つ以上ある場合、何を選んで仕事をその先の段階に進めていくか。はたまた目の前にある作業の結果を良しとしてそのまま進めるか、良くないとして修正に戻すか。 何かをつくりだす仕事は当然として、その他たいていの仕事のなかには、こうした「判断」の場面が日常的に何度も発生する。 判断基準があらかじめ明確になっていて、それに照らし合わせて判断すればよいことももちろん数多くあるだろうが、それと同じくらい基準は明確になってい

英雄視しない

週末、岸田劉生を観たこともあって、明治期の知識人のことについて考えてみたくなった。 明治期の知識人たちの現代人とは比べものにならない知への欲望、自己研鑽の徹底について、もうすこしちゃんと知った上で、考えてみたくなったからだ。 それで、いまこそ、そのタイミングと思い、1年くらい前に買っておいた夏目漱石の『文学論』を読みはじめた。 青年の学生につぐすると、「序」にさっそくこんな一文を見つけた。 青年の学生につぐ。春秋に富めるうちは自己が専門の学業において何者をか貢献せんと

没後90年記念 岸田劉生展@東京ステーションギャラリー

学び、自己鍛錬に関しては、昔の人にはかなわない。 それにくらべれば、今の僕らの学びに対する姿勢など、ないにも等しいと自己嫌悪的に思えるくらい、たとえば、明治期を生きた人たちの当時の学びへの姿勢をみるとその覚悟と実際の学びの結果の強さを感じる。 これは本当にもうずっと前から事あるごとに感じていたことで、だからこそ、なんとかすこしでもそれに近づこうと学びは怠らないようには日々過ごしているつもりだ。 だが、それが「つもりでしかないかも」と思えたのは、昨日も東京ステーションギャ

怪物的なものを愛でて

Goodとは何か、Truthとは何か。 何が正しいとか、何が本当のことだとか、というのは、どうやって決められると思うのか。 そして、それを決める必要はどこにあると思っているのか。どういう想定で、そうした行動の指針になるような価値観が必要だと考えているのか。 とかく、そうした固定した価値観を置きたがる傾向が世の中全般にあると思う。 だが、それが本当にどういう想定で必要なのかを検討せずに、「それがないから行動ができない」とか、「それがないからこの悪い状況が生まれている」とか、と