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白取春彦編訳「超訳 ニーチェの言葉」読書感想文

ニーチェの本となると、読む前から挫折しそうな気が。
でも避けて通れない。

その名前と、昔の哲学者とは知っている
官本室にあってマークしていた本となる。

春の日だった。
手にとってパラパラとめくってみた。
文字量は少なくて、余白が多い。

1ページには抜粋がひとつ。
そこに、数行の意訳があるだけの232ページ。
これだったら読めそうだ。

実際に1時間ほどでペラペラと読める本だった。
読んだはいいけど、どうも抜粋だと頭に入ってこない。
超訳すぎるかも、という感想だ。

1時間で読める割には、本の外見は重厚。
黒い表紙に、紙質が厚めで3センチほどある。

インテリアの1部として部屋に置いておけば、知性を感じさせることは間違いないという本。

ニーチェについて、ごく浅く知ることができて「まずは、こんなところだろう」と満足はあった1冊だった。


感想

正直いって、この本で読み応えがあったのは最初の5ページ。
時間にして3分ほど。

やっぱ超訳すぎるのかも。
いいことはいい。

が、232編の半分以上は、自己啓発の本に多く書かれているようで、とくに新鮮さは感じられなかった。
もっとも、ニーチェのほうが先だけど。

何がどうと聞かれるとパッとは出てこないが、ニーチェがどういう人物だったのか、少しだけわかったのがよかった。

難解な思想や哲学を説く人だと思っていたら、編訳者の白取春彦によれば、そうでもないということだ。

同じく有名な哲学者のカントヘーゲルのように、壮大な体系を目指してまとめあげられたものではない。

文章で綴られた断片や断章が多い。
鋭い洞察力で、独特な発想を短文で発せられているから、多くの人の耳と心に残る、とも。

単行本|2010年発刊|272ページ|ディスカヴァー・トゥエンティワン

覚えるために筆記してみた

ニーチェは、以外に最近の人。
最近といっても1844年の生まれ。

1800年代が最近に思えるのは、読書のおかげだ。
100年前がついこの間。

200年前が最近という感覚になっている。
これが “ 俯瞰 ” というのか。


フリードリヒ・ニーチェ
1844年~1900年
ドイツ(プロイセン王国)生まれ


日本でいえば “ 黒船来航 ” のちょっと前の生まれだ。
誰か同期はいないのかと読書録をめくってみる。

すると、福沢諭吉の生年が1835年とあった。
吉田松陰が1930年だから、けっこう新しい人だ。

その後も、日本の時間軸に合わせると、ちょうど明治になったくらいから、執筆をはじめている。

1868年 24歳
スイス バーゼル大学で古典文献学の教授となる。

1872年 28歳
処女作『悲劇の誕生』発表。

1885年 41歳
代表作『ツァラトゥストラはかく語りき』発表。

1879年 35歳
大学を辞する。
以後、病気療養のためにヨーロッパ各地を旅しながら執筆活動を続ける。

1889年 45歳
精神が崩壊。

1900年 56歳
ワイマールで死去。

・・・ 本当に “ 精神が崩壊 ” と書いてある。
いったいなにがどうしちゃったのだろう。

刺さったニーチェの言葉


「1日の終わりに反省しない」

仕事を終えて、1日が終わり、自身を振り返り反省する。
たいていは不快で暗い結果にたどりつく。

単に疲れているからだ。

活発に活動しているとき、何かに夢中になって打ち込んでいるとき、楽しんでいるときは反省したりしない。

~ 曙光 ~

・・・ ニーチェがいうのだ。
もう今日から、反省をやめてもいいのかもしれない。
ちょっと明るい気持ちになれる言葉だ。


「疲れたらたっぷり眠れ」

自己嫌悪に陥ったとき、なにもかも、面倒でいやになったとき、なにをしてもくたびれて仕方がないとき、元気を取り戻すためには何をすべきだろう。

流行のリラックス療法?
ビタミン剤?
旅行?
飲酒?

そんなことよりも、食事をして、たっぷりと眠るのが1番だ。
しかも、いつもよりもずっと多くだ。

~ 漂泊者とその影 ~

・・・ これはうれしい言葉だ。
まったく同じことを、普段から考えて実践していた。
なかなかやるではないか自分、という感想だ。


「疲れたと感じたら、考えない、思わない」

いつものように毅然としていられなかったら、それは疲れている証拠だ。

そのうちに憂鬱なことや、暗いことが、頭の中を勝手に動き回るようになる。

疲れたと感じたら、考えることをやめ、寝るに限る。

~ 悦ばしき知識 ~

・・・ いったい、ニーチェは。
何にそんなにも疲れていたのか?

とにかく寝ればいいんだな、と本に向かって念を押している自分がいる。

とにかくもだ。
ニーチェは、さすが古典文献学の教授だけある。

読書についての言も5つほどあった。
ひとつを挙げると以下になる。


「読むべき書物」 

読む前と読んだあとでは、世界がまったくちがって見えるような本。
わたしたちを、この世の彼方は連れ去ってくれる本。

読んだことで、わたしたちの心が洗われたことに気づかせるような本。

新しい知恵と勇気を与えてくれる本。
愛や美について新しい認識、新しい眼を与えてくれる本。

~ 悦ばしき知識 ~

・・・ これはいい。
たぶん、これがいちばん心に響いたかも。

ニーチェは哲学者だったとはいうものの、難解で抽象的な理論を説いた人ではなかった、と白取春彦は解説している。

だからなのか。
けっこう当たり前の言葉も多い。


「危険なとき」

車に轢かれる危険が最も大きいのは、1台目の車をうまくよけた直後だ。

同じように日常生活においても、気をゆるめたときにこそ、次の危険が迫っている可能性が高い。

~ 人間的な、あまりにも人間的な ~

・・・ ですよねぇという感想だ。
それ以外にいいようがない。


「始めるから始まる」

すべて、初めは危険だ。
しかし、とにかく始めなければ始まらない。

~ 人間的な、あまりにも人間的な ~

・・・ わかりました、という感想だ。
そうとしかいいようがない。


白取春彦いわく。
ニーチェの哲学は決して難しくない。
少し読んでみれば興奮を覚えるだろう、とのこと。

ニーチェ読めるかも、というところまで辿りついた。
小さな1歩の読書だった。

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