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あの店はなぜ、ずっと人気店なのか?

 僕は東京に暮らしていますが、このところ、名古屋の名店コメダコーヒーをこちらでもたくさん目にするようになりました。そういえば、ラーメンの一蘭、一風堂、花まるうどんや丸亀製麺などなど、地方発祥で全国店になったお店、たくさんありますね。もちろん発祥がどこか関係なく、もはや我々のソウルフードに発展した全国1000店を超える外食チェーンも、街を歩けばたくさん目にします(僕的には、「マクド」も「ケンタ」も僕の青春のソウルフードです)。

 たくさんのチェーン店、つまり店があるのに、きちんと同じ「おいしさ」を毎日提供してくれること。これ、当たり前のようで非常に難しいことです。そして、同じ「おいしさ」を提供し続けつつ、飽きられることなく続いていることも、まさに奇跡なのです。今日はそのことを考えてみたいと思います。


成功する店は2階建構造

 建物の話ではありません。しくみの話。チェーン店に限らず、外食店の成功は2階建構造と言われています。たとえばそれがラーメン屋さんだったとして。1階部分は、おいしいラーメンをつくること。2階部分は人を呼ぶしくみ、です。どちらもすごくごもっともですが、このふたつが揃っていないと、成功はありえないというわけです。

 仮に「世界一おいしいラーメンができた!」としましょう。つまり1階部分では誰にも負けない!食べた人は満足するでしょう。だけど2階部分の「人を呼ぶしくみ」がなかったら?もしかしたら、人知れず先細りなのかもしれませんし、そもそもそのおいしさをたくさんの人が体験することなく終わってしまう可能性もあります。

人気店は2階建構造だ

 人を呼ぶしくみというのは、店舗設計やサービス、店舗運営、果てはお得なクーポンやポイント制度、広告キャンペーンなどのいわゆる販促に至るまでいろいろあります。そんなのお金のあるとこしかやれないじゃないか? そんなことはありません。名物がんこ亭主のちいさな昔ながらの中華そばの店、看板娘のおばあさんが営む創業50年の学生食堂という店がよくありますね。これ、よく見るとちゃんと2階建の理論が成立してるのです。まず1階部分のおいしさは担保されているとして。2階部分は「がんこ亭主」「看板おばあちゃん」のキャラクターが人を呼ぶ仕組みに一役買っていたり、学生街のいい立地にお店があったり。その地域のお客さんのお財布感覚にあった価格設定だったり。奇跡のマッチングだってこともあります。

 このように1店だったらこの2階建がうまくいくことは多々あります。もちろん簡単ではありませんけれど。ではチェーン店の場合はどうなんでしょうか。チェーン点は2階部分は個人店に対して比較的コストをかけられるのでうまくいきそうに思えます。


各店「同じ美味しさ」の難しさ

 ある有名な飲食店がありました。グルメサイトや雑誌の人気投票でも常に上位。店には常に行列ができていました。僕も好きで、何度か並んで食べたことがありますが、たしかにとてもおいしい。並ぶ価値あるなーと、並ぶのが大嫌いな僕でも思いました。

 そんな店が、ついにチェーン化にふみきったのか、あちこちであの店と同じ看板の新店を見かけるようになりました。もともとの店は郊外の行きにくい場所にありましたので、喜び勇んで新しいその店に入って、定番の看板メニューを注文したところ、なぜかおいしく感じられませんでした。同じメニューで、似た味なのですが、あのおいしさとは全くちがうぼやけた味。僕はその後、その店に行っていません。

 チェーン店の難しさは、この第一段階の1階部分にあると思います。おいしさを各店で実現するためには、材料と工程の管理が大事ですが、じゃあ冷凍食品やレトルト食品化して均一化を図ればいいのでは?となりそうですが、それもそう簡単ではありません。同じ味ということも大事ですが、それ以上に「同じおいしさ」が重要なのです。よく見ると、マクドナルドも店できちんとビーフパティを焼いているし、ポテトを揚げています。レンチンではないのです。様々なファーストフードのメガチェーンでも各店で調理工程を経てお客様に提供しています。これは「同じおいしさ」を提供するために他なりません。じゃあ、マニュアルの徹底で美味しさレベルは管理できるのか? もちろんそれはすごく大事です。でも僕はそれだけでは「各店まちがいない美味しさ」を提供することを実現できないと思うのです。


現場が納得する

 最初に答えを言いますと、経営者から現場のスタッフのひとりひとりレベルまでが、その店の「うり」つまりお客様がその店に求めていることを理解していることが大事だと思います。ミッション・ビジョン・バリューをアルバイトさんに至るまで一言一句違わず浸透させよということではなく、そもそもそのMVVの成立からして、現場、地域に腹落ちするレベルの納得性と共感性が必要であり、たとえ経営層がそれを決めたとしても、現場に伝えることをおろそかにしてはならないのでしょう。

 成功しているチェーンは、すべてがきちんとその店の「このおいしさをお客が求めている」という要因を把握して提供していると感じます。各店が心を砕いているのは、日々のファンづくりに他なりません。ファンを納得させられる味を、すべての店が追求しています。メジャーなファーストフード店こそしかり、です。

 一階部分の「おいしさ」の話ばかりしてきましたが、2階部分の「人をひきつけるしくみ」についても同じです。本部がつくった戦略は、地域と密着した現場の支援に確実になるものでなければなりませんし、現場の店長もアルバイトさんも共感できる戦略である必要があります。

 長くつづくチェーンの、どこで食べても同じようにおいしい、は、僕は不断の努力の結果である奇跡の産物だと思います。

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