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風の歌を聴け


 本日2本目の記事です。こんにちは、たなきんです。仕事が休みなので、もう1本いっとくかな、と思いまして。それというのも、あるゲームのことを思い出したのです。1997年7月18日にワープからセガサターン(!!)用に発売されたゲームソフト”風のリグレット”。飯野賢治という天才が作ったそのゲームには、驚くべき特徴があります。それは画面に映るものが何もないという衝撃の内容で、音と声だけで構成されているのです。しかもCD4枚組(昔はCD-ROMやったんですよん)、トータル3時間半という一切の弱気を見せないスタイルですよ。惚れるわ。しかし、天才は夭折するという神のルールでもあるのか(小説家の坂口安吾やフィッシュマンズ佐藤伸治然り)、2013年に急逝しています。

『今の異端が、未来のスタンダードになる』

野々村博司は、小学生の頃、夏休みが終わったら転校するという隣の席の女の子と駆け落ちの約束をするのだが、待ち合わせの時計台に、その女の子は現れなかった。そして女の子はそのまま転校してしまっていた。
月日は経ち、あの時の初恋の女の子、桜井泉水と偶然再会し、付き合う事になる。大学生になった博司は彼女に起こされ、彼女の会社の人事部長を紹介してもらうはずだったのだが2人で面接に向かう途中、彼女は突然地下鉄を降りてどこかへ失踪してしまう…。〈Wikipediaより〉

 「あの風が、ぼくらを変えた。」

 僕がこのゲームをプレイしたのは確か、中学二年生の頃です。テレビがリビングにしかなく、なんだか親の前でプレイするのが憚られたので、親が寝静まったあとにこっそりやっていたのを覚えています。恋愛っていうものに過度に期待し、想像を膨らませていた時期だったので、なおさら恥ずかしかったんでしょうね。あ、言い忘れました。これ、恋愛のストーリーです。岩井俊二とか好きだったんで、僕には、すごいツボでしたね。打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか的な。奥菜恵、好きだったな。

 じつは”台風”というキーワードが、重要なんです。台風はいつも前触れみたいな張り詰めた空気を孕んでいて、そのほかにも強風が吹き荒れる本番と、それが過ぎ去った後の空虚、および復元という要素があり、その性質はストーリーに類似しています。台風は二度、訪れます。一度目は主人公が幼いころ、ヒロインと待ち合わせするとき。二度目は失踪したヒロインを探しに行くとき。青と黄色の時計台。ライカという名前の小鳥。ほら、これだけで、なんか好きになりそうでしょ?真相はネタバレになるので書きませんが、みなさんの耳でたしかめてほしいです。でも【ひとつだけ】言えるのは、リグレットって後悔っていう意味合いだけじゃないと思うんですよね。語義的にはそうなんでしょうけど。過去があるから、いまがあるというか。誰しも、過去に違う選択をしていたら、おそらく目の前の大事な人には会えていないわけで。

「うっかりしてたよ。10年遅刻した。」

 

 主人公がヒロインに時計台で言うセリフです。ゲームのすべてを表している象徴的な言葉ですが、いま聞いても胸にぐっとくるんです。あと、菅野美穂がミステリアスだけど脆い女の子を名演していて、これはツンデレのはしりなのではと思ったり思わなかったり。

 ビールでも飲みながら、平成最後の夏の、お供にどうぞ。


生活費にあてます。