駄文毎夜240401「四月馬鹿」
「そっか、今日エイプリルフールか」
どおりでSNSに蔓延る嘘がいつもよりわかりやすい。
──私もなにか嘘をついてみるか
「まるで普段は嘘をついてないみたいな口ぶりだね」
私が振り返るとそこには微笑む“妖怪”がいた。
正しくは、いつの間にか現れいつの間にかいなくなり、人の心の中をのぞき込む彼女を私が勝手に妖怪と呼んでいるだけだけなのだけれど、眼鏡をいつもかけていること以外、名前も年齢も経歴も知らないので最近は本当に妖怪なのかもしれないと思っている。
「嘘をつくな、まだ口にはしてない。心の中で呟いただけだ」
「一緒さ、口で呟くのも、心で呟くのも、SNSで呟くのも、どれも等しく君が言葉にしている」
この妖怪はまた当たり前のことをそれっぽく言いやがる。
何故か彼女が吐く言葉はそれらしく聞こえてしまうのが厄介だ。
「褒め言葉として受け取っておくよ。それよりもいいのかい?エイプリルフールで嘘をついてもいいのは午前中だけらしいよ」
スマートフォンの時計は11時52分を指していた。
「いや、いいや馬鹿らしくなってきた」
「まぁ、エイプリル“フール”って言うくらいだしね」
上手いこと言ったつもりか妖怪め。
「まぁ、満足したし私は立ち去ることにするよ」
彼女は立ち上がって少し歩いた先で振り返った。
「あと一応言っておくと、私は正真正銘“人間”だよ」
太陽の位置が今日最も高いところに登ろうとしていた。
活動の糧にします。次はもっといい記事を