ドイツ人カップルに学んだ、ワークショップの在り方と役割について
こんにちは。NTTデータのデザイナー集団「Tangity」で、サービスデザインを担当しているAyakaです。昨年の11月より、Tangity Tokyoに参加しました!
参加直前まで、フィンランドにあるAalto Universityの修士課程Collaborative and Industrial Designに所属し、ありがたいことに沢山の良き仲間・教授に囲まれ、学ぶことの面白さ・大変さを改めて体感させて頂きました。Collaborative and Industrial Designと書くと、モノ(だけ)を作ることにフォーカスするように聞こえますが、ここでのIndustrial Designは広範囲を捉え、デザインという非常に流動的で不確かなものによって、どのように社会・文化・概念が形成され、私たちがどう関わっているのか(関わっていくのか)を様々な視点で学ぶ課程と考えて頂ければと思います。
ドイツ人カップルとの出会い
難しい話はさておき。今回は私のフィンランドでの実体験に基づいた、あるワークショップへの気づきのお話をさせてください。
サービスデザインにおけるワークショップという場の在り方や役割を改めて考えるきっかけになった友人・Marie(仮名)との会話です。
ドイツ出身・ほぼ全てのクラスをオール5で卒業するほど優秀な彼女は、私の勉強のサポートや壁打ち相手にもなってくれ、愛のある厳しいコメントの仕方や視点は今でも参考にしています。
当時からMarieにはお付き合いを始めて数年になる、同じドイツ出身の彼氏がいました。彼はSE(システムエンジニア)でイギリス在住のため遠距離恋愛中。同じヨーロッパ圏とは言え、イギリスはEUではないことから渡英するのに制限があるなど、様々な苦労があること、またどんな風に出会ったのか、どんな未来をお互いが望んでいるのか等、オープンにシェアしてくれていました。
海外において<お付き合い>という概念が、非常に様々なバリエーションを含むことになるので、、理解戸惑うこともあるのが正直なところですが、、Maryたちは意見の相違もなく、お互いにサポートし合う、遠距離恋愛という障壁を乗り越えている、とても素敵なカップルでした。
カップルで実践するサービスデザイン
こっそり教えてくれたその秘訣は、サービスデザインを使ったワークショップ開催だというのです。サービスデザインのプロセスでは、あらゆる場面でワークショップを開催しますが、カップルの関係改善に使用しているとは!この発言にあまりに食いついた私を面白がっていましたが、開催するきっかけになったのは以下の悩み(Problem Statement)からだったそう。
課題1: 出会った当初から、お互いとてもシャイで言いたいことが言えない課題2: 相手を気遣うあまり、言いたいことを言えない
課題3: そもそも言うタイミング・方法がわからない
課題4: このままだとフラストレーションがたまる一方で、長期におけるリレーションシップ構築に無理が生じることは分かりきっている
このような課題に対処するため、Maryは彼にワークショップの定期開催を提案しました。当初彼は、その効果に疑心暗鬼だったようですが、彼らはオンラインホワイトボードのMiroを使い、時間配分などを決め、1ヶ月に1度自分たちの関係性を振り返ることをし続けたのだそうです。
しかも批判的に、です。
ワークショップで爆発させるお互いの想い
毎回テーマによってワークショップの内容は異なりますが、大体の枠組みでまずはお互いの想いをミロボードに投げます。
今月の自分たちの関係性・コミュニケーションはどう評価できるか(現状把握・テーマ設定)
お互いに気になったこと・もっとこうしてほしかったこと・反省点はあるか(現状把握)
どうすればもっと良くなるのかの提案と実現可能性(改善方法の洗い出し)
課題案の実装に向けて(合意形成)
今後について話し合っておきたいこと(次回への課題)
ここでのワークショップを行う利点は相手に直接想いが届くのではなく、ミロボードがクッション的役割を担っているため、心理的にもお互い正直に言い合える環境になっているのではないかと思います。
可視化した相互関係の共有
こんな使い方、面白いですねー。確かにサービスデザインのワークショップに当てはまるじゃないか。目の前に可視化した問題やお互いの思いを画面上で共有し、解決策を練る。この話を聞いて、そもそもワークショップという場がどのような場であり、役割を持っているのかを改めて考えてみました(仮説も含みますので悪しからず)。
参加者が能動的であり主体的な場(共創)
立場関係がある場合、その立場は一旦客観化される場(全体的)
お互い合意の上で批判的に自由な発言が出来、かつ求められる場(創造性)
関係構築において客観的であり、安全な場(多様性)
おもしろいなぁと思ったのは、彼らは参加者であると同時に、客観的な立場で場を調整するファシリテーターの役割も担っているということです。
こうしたワークショップを定期的に続けることにより、シャイだった彼らは思ったことを言いたい時に言えるようになり、今では必要だと感じた時のみ開催しているそうです。
この間はMaryも就職し、今後2人の拠点をドイツかイギリスのどちらか二択に迫られたので、ワークショプを用いてそれぞれの拠点が自分たちにどのようなリスクとベネフィットがあり、未来に向けてどう調整するのが現実的であるのかを相談した結果、拠点はイギリスになったそうです。
目標に向かう一体感と価値観の共有
個人的にはMaryっぽいカップルの在り方だなぁとゲラゲラ笑ってしまいましたが、私はこの話を聞いて、デザインの実践で見過ごしてしまいがちな人間関係の構築・構築された関係がどのような価値を産むのだろうか、という文脈で大いに役立っている点があることを改めて気付かされました。
なぜなら、ワークショップという場をクッションとして使いながら、お互いの関係性と考えの可視化と共有をとことん行うことを通じ、決めたことへの2人の連帯感も強くなったのではないかと感じました。
ワークショップを重ねる度に、ちょっと仲間感・一体感みたいなものが生まれ、その感覚がプロジェクト達成やその先の価値を産むことへの結束感を強くする。こうした結束感が割とプロジェクトの鍵だったりするのかもしれません。
おわりに
今回は個人的な経験から改めて実感した、サービスデザインにおけるワークショップの役割をご紹介させていただきました。
こんな見方や使い方もできるんだ!というよもやま話として、参考にしていただけたらと思います。
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