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キネマ旬報の読者評で一次選考通過まで行って掲載されなかった「雪道」評。


私、今年既に2回掲載されてるので載らないだろうなと思ったんですが、惜しかったです。一年に3回も掲載されたら割と快挙(?)だったかもしれません。

この映画、恐らくキネ旬の読者にさえ全然知られてないと思ったんで説明が必要かと思ったんですが、それが余計だったというか説明のしかたが単純だったかもしれません。

コピーしておいたので、以下載せます。

「雪道」

題材が題材なだけに、きちんと宣伝をしてある程度の規模で公開するのが難しかったのかもしれない。ごく小規模で公開された慰安婦を描いた韓国映画。これが今観ても学ぶことの多い映画だった。繊細なディテールを散りばめて、堂々と描いている。

主人公は3人。強制連行され共に慰安婦となるチョンブン(キム・ヒャンギ)とヨンエ(キム・セロン)、それと86歳のチョンブン(キム・ヨンオク)。戦時パートと現代パートが交差する物語構成になっているが、これがあまりにも優しい演出で紡がれていく。

1944年、おだやかな風景。その中の対照的な暮らしをする2人の少女。チョンブンは恋をしてるようだ。思いをよせる男性に本を渡される。「小公女」だ。小公女はお姫様を意味する。このおだやかなシーンを入れたのが重要だ。これから悲劇的な運命をたどる2人にもこんな時があったのだ。私には愛国心が全くと言って良いほど薄いのだが、ヨンエは日本と天皇に対する忠誠の教育
を熱心に受け、「皇国臣民」を目指している。しかし、日本の官憲が前述した男性たちを連行することで映画は一変する。二人の少女も連行されることになるが、ここでヨンエの忠誠心は粉々に打ち砕かれる。

「雪道」というタイトルが強い意味を持ってくる。実際慰安所に入れられた後で雪道でのシーンが重要な意味を持ってくる。

そして、実はチョンブンは「小公女」の本を隠し持っていた。何て健気なのだと涙した。この本が2人の少女の絆を深くする。

交差して描かれる現代パートも重要だ。果たしてチョンブンはお姫様になれたのか。彼女の過去は静かに後世に語り継がれていく。たとえ暴力的に歴史を曲げようとする力があっても、人の絆がそれを伝えていく。

チラシに「今も戦争と暴力に苦しむ方々のことを忘れません」とある。ウクライナで起きてるとされる性暴力に思いを馳せる。

以上です。


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