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はじめてメカニカルキーボードを買った人

60%メカニカルキーボードと聞いて、真っ先に予想される用途といえば今どきはやはりゲームであろう。事実、この類のキーボードの商品名には大抵「ゲーミング」が冠される。そして、ゲーミングキーボードは「ゲーミング」キーボードであるからして、その名を冠している限り光るようなのだ。
新しいキーボードが欲しかった。
できればかちゃかちゃと音の鳴る打鍵感が欲しかった。

そこへ件のAmazonブラックフライデーがどーん!である。

小型で完全ワイヤレス対応のメカニカル、自分の求めるこれらの条件を満たすキーボードはゲーミング仕様の層が厚く、光らないものを探すとかえって選択肢が絞られて面倒なくらいであった。

結局、ずっと使ってみたかったテンキーレスの赤軸メカニカルキーボードを買ってみた。白筐体の63キーで、ミニマルなフローティングデザインと少しぽてっとしたフォントがかわいらしい。それでいて見た目のわりにずっしりと重く、タイピング中にずれる心配もない。Bluetoothによるワイヤレス接続にも対応しており、PCのUSBポートが晴れて自由になった。おおむね気に入っている。

それで、なぜ「ゲーミング〇〇」と名の付くモノたちは七色に光るのか、近頃はそればかり考えていた。

なぜだ、なぜ光る。
気になっているのは私だけではないようで、知恵袋で幾人もの先人たちが同様の質問を投げかけていた。が、いつも同じ答えが返ってきているようだった。

「かっこいいから」
それ以外に相応しい理由はないらしかった。

つまり「なぜゲーミング界隈は七色に光るのか」を理解するためにはまず、「七色に光る=かっこいい」を理解するという段階を経なければならないことがわかった。そこで躓いていては先へ進めない。

友人たちと考えてみた。
一人が「小さい頃集めていたゲーセンで無限に取れるよくわからない形をした宝石や、やたらとギラギラのめっきの施されたおもちゃと同じ匂いがする」と言っていた。幼少の折、無性に惹かれた「きらきら」や「ぴかぴか」には潜在的「かっこいい」が詰まっているのかもしれない。

しかし、大人になった私たちがあのときの宝箱を開けたところできっと同じワクワクを味わうことはできない。あの宝石やおもちゃを見ても、安直さが透けてみえ、かえってチープに見えてしまうこの現象に名前はついているのだろうか。

ところで私は今、驚いている。
白いキーキャップにクリアで印字された文字が水色の光によってぼんやり照らされているのを見ていたら、ちょっといいなと思えてきてしまったではないか。自分のチョロさを思い知る。

赤・青・緑・ピンク・黄・水色・薄ピンクと「本当に」七色で光ることと、その七色が左から右に流れたり押す度色が変わったりすることにはまだ慣れないが、このキーボードの打鍵感に慣れる頃にはそれすらも克服し、ある程度の順応を見せていることだろう。

私が「ゲーミング〇〇」の発光が何たるかを理解する日はそう遠くないのかもしれない。


これは2022年12月8日の記録。

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