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『スプラトゥーン3』「2022冬 Chill Season」をプレイした人

僕はトーピードに、変わらぬ愛を叫びたい。


スプラトゥーン3の発売に合わせて、Nintendo Switch本体を買った。イカとカニが好きだからだ。それからちょうど3ヶ月、飽きる気配もなく夜な夜なバンカラ街に繰り出す日々が続いている。

さて12月より、新シーズン「2022冬 Chill Season」が始まった。

こつこつ449レベルまで上げたカタログもリセット、5冊目のカタログは没収され、代わりに内容の一新されたカタログが支給される。なるほど、季刊発行誌ということか。早速、「律儀に頭を下げると思いきやデスゲームの主催者だった」みたいなエモートをもらったりした。なんだそれ。

新シーズンに際して、新しいブキ10種と新マップ2つが追加された。ブキが変われば、ゲーム性も変わる。シーズン制というのはオンライン対戦ゲームにおいてマンネリ化を防ぐ最善の方法ということだ。

それが、このごく些細な、しかし大いなる悲劇を生んだのだ。これを今から言葉にしたいと思う。

まず、前シーズンの筆者の愛用ブキは「ドライブワイパー」であった。車のワイパーを模したブキで、サブ性能として魚型の醤油瓶を模した「トーピード」、そして時々足踏みポンプを模した形の「ウルトラハンコ」というスペシャルな技を繰り出せるというものである。

この「ドライブワイパー」というブキはとにかく健気で愛おしい。

車のワイパーをラケットのように持ち、無我夢中で右に左にぶん回す。その背中はさながら必死に鍛錬を積む剣士、健気じゃあないか。その太刀筋が3回相手に当たれば倒すことができるのだが、倒すに至るまでの速度(キル速)がまあ遅い。特にシューターと呼ばれる銃型のブキにこのキル速ではかないっこない。これでは長篠の戦いの武田軍よろしく、「銃に負ける剣」を地で行ってしまうことになる。

さらに「ウルトラハンコ」。突如プレイヤーの手に握られた巨大なハンコを凄まじい勢いで地面に打ち付けながら前線を押し上げる一発逆転の秘技と見せかけた生き急ぎハンコマン。ドンキーコングのハンマーのそれに近く、ハンコの下敷きになった敵プレイヤーは一発K.O.、否応なしに敵の位置を動かすことができるため、硬直していたゲームをかき乱すことができる。

一見強そうに見えるこのドンキーハンコであるが、ハンコ状態を解かれた後は「ただ敵陣で孤立するだけの人」と化し、敵の全てのヘイトを集め死を待つのみとなる。使用者は一瞬にして切なさと愛らしさを併せ持った「かわいそうかわいい」特攻隊長になることが確約される。

では、どう勝つか。
答えは一つ、「トーピード」である。

トーピードは追尾式爆弾だ。敵のいそうな場所に投げると勝手に敵を追尾し、爆発する。一度目の爆発から数秒後、はじめの爆発地点を取り囲むようにぐるりと一周ポンデリング型に爆発し、追い討ちをかける。狙われた敵は爆発する前に自身に迫ってくるトーピードを撃ち落とすか、その場からすぐさま立ち去らなくてはならない。これがすごくいい。

爆発一つ一つのダメージはさほど大きくはないが、ここでダメージを与えられると、その後味方が倒しやすくなる(良きアシスト)になるし、インクの海に隠れ虎視眈々をこちらの命を狙ってくる潜伏イカの位置をある程度の精度で割り出すことも容易い。さらに、なぜかドライブワイパーとソイチューバーにしか搭載されていないという稀少価値すら与えられていた。

「トーピード投げときゃなんとかなる」
ドライブワイパーの活路はここにあったのだ。

しかし新シーズン突入にあたり、環境は変わった。トーピードを搭載したブキは4つに増えた。うち一つが「もみじシューター」である。既に塗りブキとしての評価を確立した「わかばシューター」と同じメイン性能を誇り、スペシャルはホップソナー(これも強力)、そしてサブにトーピード。隙がない。ずるい。

悔しいが、もみじシューターはとにかく使いやすい。
メインのインク効率が良いのか、ドライブワイパーのようにトーピードを使う度に深刻なインク不足に苦しむこともなければ、スペシャルで敵のヘイトを買う心配もない。その使い良さに新シーズン開始直後のフィールドは、もみじシューター使用者によるトーピードで溢れた。

トーピードが珍しさで勝てる時代は過ぎ去った。
ブームは一時的なものだったかもしれない。しかし、その一瞬のフィーバーで多くのプレイヤーの目は慣れてしまった。いとも容易く避けられてしまうどころか、トーピードが着弾する前に撃ち落とされることも珍しくなくなった。

ああ、愛しきドライブワイパーよ。
私はこの先、環境に悶え苦しみブキジプシーと化してしまうかもしれない。
トーピードへの思いの余り、もみじシューターに浮気するなんてこともあるかもしれない。

それでも私は、あの健気なワイパー剣士の背中をいつまでも忘れない。


これは2022年12月6日の記録。

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