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ナチュールワインはプレゼント用に買うな。

どうも、丹治です。

 先日、ご縁があってワインのインポーターの方とお話しする機会がありました。参加費用2000円で10種類のナチュールワインが試飲し放題、かつインポーターの方にワインに関する相談し放題というバグのような企画です。

 そこで得た経験等をこのノートに残せたらと思います。題名が痛烈かと思いますが、悪意はないです。

会場

エノテカオグラ(京王代田橋)
 ミシュラン取得しているお店のオーナーであり、youtuberの小倉さんを由来とするワインショップ。角打ち経営もしており、その時その時に開栓しているこだわりのワインをお手軽値段で堪能することができる。店内では高品質イタリアワインをメインに取り扱い、関連店舗に卸しているワインがちらほら。オンラインショップでは不定期で開催しているイベントのチケットが購入できます。

今回参加したイベントはこちら。

 イタリアワインのインポーターさんの話を聞きながらワインを試飲できる企画です。先述の通り堪能しました。後ほど資料を添付していきます。

 試飲会では3つのドメーヌに焦点を当てた企画でした。イタリア土着品種を飲めたり、ナチュールワインへの知識だったり、豆臭、テロワール、いろんなことを知れました。

 そもそもナチュールワインをご存知でしょうか。化学肥料や農薬などを極力使用せずに、できるだけ自然な製法で造られたワインのことです。近いところですとビオディナミなどもあります。近年はその特徴ゆえにワイン好きの他、健康を意識しているミーハーに受けています。ちなみに有名なCHムートンやオーパスワンはナチュールワインとは呼ばれておりません。

 有名どころではなくても、ナチュールワインという言葉には魅力を感じてしまいます。無添加ワインと普通のワインが同じ価格で売っていたら前者を購入するでしょう。そういうものです。

 ただ、ナチュールワインをいくつか飲んでいくとある一点が通常のワインと大きく異なることに気づきました。これは致命的なものになる可能性があり、それゆえにナチュールワインはプレゼントに向いていないと考えます。

 当日はめちゃくちゃ飲んでハシゴして29時まで飲んだので記憶がいくつか欠落していますが、以下では試飲会のことを書いていきます。

試飲会のアウトプット

今回試飲したワインたち

 資料を全部写真撮ったので、気になった部分は保存してズームしてみてください。今回のワインはピエモンテ、ロンバルディア、トスカーナのワインでした。イタリア北部の銘醸地です。

 ナチュールワインは前述の通り、出来るだけ自然に寄せた醸造方法でワインを作り上げることがよしとされています。それゆえ、長期熟成に耐えるための亜硫酸塩を添加しなかったり、おりを漉さずに瓶詰めしたりするなどが行われております。後者の影響としては、不透明なワインとなってしまうため、人によっては見栄えが悪いと嫌厭することがあります。

 イタリアワインは総じて都市に運ばれては大量消費、地産地消が主であったため、長期熟成という文化があまりなく、ことロンバルディアはミラノが近いため前者の傾向があります。

 ①のアミーコフリッツはアミーコ(或る)フリッツ(微発泡)を意味しており、フリッツアンテです。イタリアワインのラベルに表記されている絵は特に意味がない(ワインと関連がない)ことが多いらしく、謎の動物や落書きのような絵が描かれていたりしているそうです③とか特にそう。アルパカ関係ない。
 ①の面白かったところはコルクを使用せず王冠で販売しているところです。フリッツアンテはシャンパーニュと比較して瓶内の圧力が上昇しないため簡易的な王冠で問題とのことです。

 ②を試飲したとき、ワインで感じたことのない謎の香りを感じ取りました。硫黄臭です。説明文の後方にSO2の量表記がありますね。これです。①では全く気にならなかったのですが、10倍入っています。ワイングラスの中に大涌谷の白い大地が浮かび上がっていました。
 思わずウッとなってスワリング。直立状態では慣れていなかったため、液体はグラスを乗り越えシャツにつきました。周りの方はそんなこと気にせずに美味しい美味しいと口に運んでいました。マジでか。
 この後のワインほぼ全てでこの香りが邪魔をしてきました。

 ③、④、⑤とイタリアの土着品種をいろいろ試飲できることって日本だと全然ないだろうと思います。イタリアワインはフランスのように地方✖️品種から生まれる繊細で豊かな個性というわけではなく、味のベクトルが似ているところが面白いと思いました。神の雫では、イタリアワインのことを陽気、陽性、ぽかぽかという表現がなされているのがとても合点がいきました。

ピエモンテ州の勉強をすると必ず出てくるバルベーラをはじめとして、カナイオーロ、コルテーゼ、ティモラッソなど土着品種が目立ちます。⑤はオレンジワインであり、ジョージアワインのようなアンフォラや樽が効いていないシンプルなオレンジワインを飲むことができ、オレンジワインに対する苦手意識が解消されました。今後アンフォラ熟成は回避します。⑥は本日初めての赤ワイン、真紅のワインでももちろん硫黄臭さを感じるのですが、芳醇さゆえに少し落ち着いているようにも感じました。ネッビオーロとまではいかないもの濃厚で、それなのに癖がないワインでお肉と合わせたくなりました。硫黄臭が飛んだ(薄れた)ナチュールワインは果実感が鮮明でフレッシュ、新鮮な経験でした。


 ここはトスカーナでも山間の場所を拓いた場所で作っているため、同じカニオーロでも味わいが違うとのこと。カステルは城という意味なので、フランス風にいうならばシャトーテルビアーノ。アンチェストラーレは田舎式のスパークリングワイン。そのためオリが瓶底に沈殿している。⑧は美味しかったけど忘れた。店員さん結構推してた。⑨〜⑩は説明文の通りだったこと以外あんまり覚えてない。

⑪は生産本数の都合上、日本に90本しか割当がないとのこと。700円の有料試飲になりました。イタリアのピノノワールって全然効かないので結構珍しくて試飲を敢行。なかなか美味しかったです。新世界らしさはなくどちらかと言えば旧世界。かといってブルゴーニュのここ!とは浮かばない面白い一本。この後角打ちでバルバレスコ飲みました。

硫黄臭の正体

 ワインの勉強をしている方は聞いたことある方はいるかと思います。「ビオ臭」というものです。還元臭(擦ったマッチ、玉ねぎ、腐った卵、排水溝など硫黄を彷彿させる香り)、馬小屋臭、揮発酸(お酢や除光液)、ネズミ臭や豆臭などの香りが挙げられます。

 これは酸化防止剤を添加しない、濾過を行わないなど自然なワイン醸造を行っているために生じるとのことです。この醸造方法では「何も足さない、何も引かない」という思想があるゆえに、オフフレーバーと判定される匂いでも受け入れられる傾向があるようです。

 具体的にメカニズムを話します。果汁に含まれる糖分が酵母によって醗酵してアルコールと二酸化炭素を放出します。二酸化炭素は空気より重い(44>29)ので、ワインの液中、および液面すぐ上に留まり少しずつ発散していきます。

 この状態のワインは酸化が促進しにくい傾向があります。二酸化炭素が液面を覆い蓋の役割をするため酸素と触れません。この状態で瓶詰めされたワインは1週間経っても味にほとんど変化しないこともあります。そのため、無添加ワインが酸化防止剤添加ワインよりも開栓後長く飲めるなんてこともザラにあります。

 余談ですが、ここのお店の角打ちで開栓2週間経った白ワインをいただきました。2週間と聞いて最初は飲みたくないな、、、と思ったのですが、実際口に運んだところ、酸化特有の嫌な感じが全くなく、品種と製法特有の味わいを感じ、驚きました。 

 通常のワイン醸造では、濾過を行い、そのタイミングで液中の炭酸ガスも抜けていくので、酸化がしやすい状態となってしまいます。そのため、酸化防止剤を添加することでワインの品質を長期的に確保しています。

 ここから本題です。ナチュールワインでは濾過をほとんどしないため、酵母はそのまま瓶詰めされます。酵母も生き物のため、生命活動のために窒素を必要とします。しかし、瓶内には窒素単体はほとんどありません。そこで酵母はワインにもともと含まれている含硫アミノ酸(アミノ酸自体の一般的な分子式はR-CH(NH2)COOH )を分解して窒素(N)を作り出そうとしますが副産物として硫黄(S)が放出されます。硫黄自体は無臭なのですが、液内の分子と結合し硫化水素(H2S)なり,二酸化硫黄(SO2)が生じます。この状態になると腐卵臭を感じられるようになります。
※瓶詰め前でも硫黄の発生は少なからずあります。

ナチュールワインはプレゼント用に買うな。

 ワインの製法によって長所短所はあります。これについては以下の表を参考いただければと思います。

https://aoyamawinebase.co.jp/blog/2022/08/16/%E3%83%93%E3%82%AA%E8%87%AD%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%81%EF%BC%9F%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%81%E3%83%93%E3%82%AA%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%80%81/


 ここで初めてタイトルに触れようと思います。今までの内容で薄々勘づいた方はいるかと思いますが、ナチュールワインには自然に即したヘルシーなワインという印象があります。ただ一方で、知見のない方がビオ臭に当たってしまった場合、「美味しくない」「腐っている」「飲めたものではない」のような悪い感想を持ってしまう可能性があります

 「新鮮だから還元香が強いからスワリングして飛ばしてね」など伝えることで対策ができるかもと思うかもしれませんが、ワインに知見のない人はそんな面倒なことせずにさっと飲みたいと思っています。

 もちろん、ビオ臭がないナチュールワインも探せばありますが、正直開栓するまでわからないのがワインです。正直、そこまでリスクを負ってまでナチュールワインをプレゼントに採用しなくてもいいのかなと思います。

 ナチュールワインは既存のワインと比較してラベルがおしゃれなものが多く、そういう意味でプレゼント用としては適している面もあります。「A-YUKI!」のように個性的な名前も多く、ユウキさんに対してプレゼントする、というのは良いと思います。ただ、コインの表裏のように長所短所は必ず存在するので、そこも考えつつナチュールワインをプレゼントとしてセレクトできるのなら選択肢になるかなと思います。

以上。


 

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