見出し画像

三日月ファストパス 【毎週ショートショートnote】

「三日月ファストパスの代わりに貴方の真実の愛を見させて頂きますね」

「三日月って物事の始まりだからプロポーズをする日には持って来いでね。勿論、見せてあげるよ」

「ほほー。では御連れ様が到着次第、月へ参りましょう」

僕は、行列の後ろで待つ彼女に「三日月ファストパスを買ったから並ばなくていいよ」っと伝えると先頭まで行き、月まで伸びるエスカレーターに乗った。

数分で三日月に着くなり子供の様に燥ぐ彼女が「うわ。綺麗」っと言ったので「月が綺麗ですね」っと僕が言うと、漱石好きの彼女の顔が赤く染まった。そして僕は婚約指輪を彼女に渡すと彼女は僕に抱きついた。

しかし、数日後彼女から「やっぱり考え直させて」っと連絡が来た。

僕が絶望の中にいると、そこへ案内人が尋ねて来た。

「領収書を渡しそびれたので、持参致しました。確かに貴方の真実の愛を見させて頂きましたよ」

「あー確かに見せてあげると言ったな」

僕は領収書を手に床に崩れ落ちた。

                 410文字

-tano-

この記事が参加している募集

忘れられない恋物語

読んで頂きありがとうございます🙇サポート頂いた金額に関しましては、お菓子おじさんの活動に使います!お菓子おじさんとは?と思われた方はnoteに説明ありますので、合わせて読んで頂けたらと思います🙇