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この想いを君に捧ぐ

先ほど、訃報が入ってきた。私の元職の上司だった人だ。

大手とんかつチェーン店の元商品部長。新卒で入社した私と同期で課長として中途入社し、瞬く間に執行役員にまで上り詰めた有能な人だった。
当時若手の有望株として処遇されていた私は、入社6年目に営業部から商品開発リーダーとして異動の辞令がおりた。その時の上長が彼だった。地方の現場から自らの腕一本で叩き上げてきた私は、出店ラッシュの中で無理矢理な商品開発を続けて不良在庫を抱えている現状に反旗を翻し、新商品を開発しないというボイコットをした。もちろん彼とはぶつかり合うことばかりで、見かねた当時の専務の計らいによって私は半年で営業部に戻されることになった。

それから数年経ち、私は営業部の地区マネージャーになっていた。新商品の説明会に彼は現れ、「こんな内容ならお前でも説明できるだろう」と言い放ちながらも店長たちにプレゼンをまっとうして、最後に「こいつは不器用で口下手な奴だけど、よろしくお願いします」と頭を下げていった。
周囲の評価では「口から先に生まれた奴」と思われていたので、話を聴いていた店長たちはポカーンとしていたが、その時私は「この人は私のことをわかっているのだな」と感じ、それまでのわだかまりが一気に消え失せた。

そもそも、我々は性格が似すぎてたのだ。一本気で仕事熱心で、曲がったことが大嫌いなこと。他人が信用出来ず、自分でなんでも決めないと気が済まないこと。自分が周囲に嫌われることですべてが治まるのなら、それで一切構わないと信じていたこと。今になって思い返せばそんなことは明らかに間違っているのだが、当時はそれでいいと確信していたこと。

それから互いに転職し、私が新天地で何かするごとにFacebookのメッセンジャーで励ましの言葉をいただいた。そして、コロナ禍でなんとか新店舗を立ち上げた際には実際にご来店いただいた。

最後にやり取りをしたのは今月の頭、私は長野に移住した報告をした時だった。いろんな感情が錯綜して一言では言い表せないが、ひとまず「ご冥福をお祈りします」

とっとと死んでんじゃねえよ、クソジジイ!

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